
ウィーナー過程は確率過程の一種であり、レヴィ過程の代表例である。連続時間マルチンゲールの研究から生じ、様々な確率過程の基礎となる確率過程である。確率解析、拡散過程、ポテンシャル論においても重要な役割を果たす。
ウィーナー過程は応用数学、物理学、計算機科学、経済学などにもしばしば現れる(⇒#応用)。
ウィーナー過程Wt は次の条件
によって特徴付けられる。ここで、N(μ, σ2) は期待値μ,分散σ2 の正規分布を表す。また独立増分とは、「0 ≤s ≤t ≤s′ ≤t′ であるならば、Wt −Ws とWt′ −Ws′ とが独立な確率変数となる」ことを意味する。
レヴィ条件(Lévy characterization) からウィーナー過程を特徴づけられる。この場合、ウィーナー過程は、ほとんど確実に連続なマルチンゲールでW0 = 0 かつ二次変分[Wt,Wt] がt になるものとして特徴づけられる。
また、係数が標準正規分布N(0, 1) に従う独立な確率変数であるような正弦級数で表されるスペクトル表現を持つ確率過程としてウィーナー過程を特徴付ける方法もある。このような表現はカルーネン-レーヴェの定理(英語版)を用いることで得られる。
平均 0, 分散 1 の独立同分布な離散時間連鎖のスケーリングの極限は、ウィーナー過程に確率収束する(ドンスカーの定理(英語版))。酔歩と同様にウィーナー過程は、一次元または二次元において再帰的(recurrent) (つまり、出発点の半径任意の近傍に確率 1 で無限回戻ってくる)となるが、三次元以上では過渡的である。酔歩と異なる点は、それがスケール不変であることである。つまりいかなる非零定数α ≠ 0 についても
はウィーナー過程となる。ウィーナー測度はウィーナー過程によって誘導される、g(0) = 0 を満たす連続関数g たちの成す関数空間上の確率分布である。ウィーナー測度に基づいて定義される積分をウィーナー積分と呼ぶことがある。
時刻t における確率密度関数は
期待値は
でそれぞれ与えられる[1]。
ウィーナー過程は様々な分野で応用される。以下はその一例である:
こういった応用は量子力学における経路積分の厳密な定式化(ウィーナー積分として表されるシュレーディンガー方程式の解であるファインマン-カッツの公式によるもの)や宇宙論における永久インフレーションの研究の基礎を形成している。
以下のように定義される確率過程
はドリフト項μ と無限小分散σ2 を持つウィーナー過程と呼ばれる。
ウィーナー過程に、条件W0 =W1 = 0 が与えられることによって定まる条件付確率分布をブラウン橋(英語版)と呼ぶ。
と表され、株価のように決して負の値をとることのない確率過程のモデルとして用いられる。