ドイツ南部においては、郷土料理としていくつかの内臓料理が出される。バイエルンでは横隔膜を用いた料理や、ミルツヴルスト(Milzwurst)と呼ばれる細かくした脾臓のソーセージ、乳房を使った料理が食されている。シュヴァーベンは、フライドポテトともに出される酸味のある牛の胃の料理(牛の胃の煮込み)であるザウレクッテルン(Saure Kutteln)で有名である。ヘルツグーラッシュ(Herzgulasch)は、心臓を使ったグーラッシュ(肉のシチュー)の一種である。肝臓はいろいろな料理で使われており、クネーデル(スープに入れる団子)やシュペッツレ(刻んで塩茹でにしたもの)、レバーソーセージに用いられる。メインディッシュとしては、スライスしたリンゴとタマネギの輪切りと肝臓をいっしょにして料理したレーバー・ベルリーナー・アールト(Leber Berliner Art, 肝臓のベルリン風)がベルリンの有名料理としてあげられる。ヘルムート・コールが好んだザウマーゲン(Saumagen)はブタの胃袋に具材を詰めてゆでた郷土料理で、彼が連邦首相として在任していた間に、さまざまな政治的な理由で来訪した者たちにとっては試練となっていた。マルククレースヒェン(Markklößchen)は、骨髄から作られた小さな団子で、結婚式のスープとしてドイツの一部の地域で出される。バイエルンでは、肺のシチューが出される。細切りにした腎臓を浸け焼きにしたザウレニーレン(Saure Nieren)も各地で見られる。シュラハトプラッテ(Schlachtplatte)やケッセルフライシュ(Kesselfleisch)では、内蔵やばら肉、頭部や臀部の皮など、様々な部位の肉がゆでられるか煮込まれる。
カーン風もつ煮
フランスのマルセイユでは、子羊の足や胃が「pieds et paquets」という名前で、伝統的な食品となっている。フランスでは、腸のソーセージが珍味とされている。トリプーはヒツジの胃に内臓や野菜を詰めて煮た物である。アンドゥイユ(Andouille)は胃袋を具にした冷製ソーセージ、アンドゥイエット(Andouillette)は胃袋を具にした温製のソーセージである。カーン風もつ煮は、ウシの胃袋を煮込むカーン地方に伝わる料理である。
ルーマニアには、イースターに出される、drobと呼ばれるハギスに似た料理がある。ルーマニアの農民は、「Caltabos」と呼ばれる、豚の内臓から作る伝統的なソーセージの一種を作る。一般的な料理であるチョルバ・デ・ブルタ (Ciorba de Burta) は、シュケンベ・チョルバ(トルコのイシュケンベ)と似ている。
イタリアでは、内臓の消費がかなり広まっている。最も大衆的なものは、脳のフライかシチュー、ハチノス(第2胃)の煮込み(トリッパ)、ランプレドット(牛の第四胃、パセリとチリソースで味付けしたフィレンツェの煮込みスープ)、肝臓(強火でタマネギと炒める、もしくは焼く)、腎臓、心臓やその血管、頭や目、ブタの精巣、鶏の内臓である。「パイヤータ」(「Pajata」)は、ローマの伝統的な料理である。パイヤータは、離乳していない牛(すなわち母乳だけで育った牛)の腸を指す。子牛は、授乳後すぐに殺される。腸はきれいだが、牛乳が中に残っている。調理時には、熱と胃内の酵素のレンネットによって牛乳を固め、厚く、クリーミーでチーズのようなソースを作る。パイヤータとトマトは、リガトーニ(管状のショートパスタ)の一般的なソースとして使われる。シチリアでは、脾臓とカチョカヴァッロチーズを挟んだ、「Pani Ca Meusa」と呼ばれるサンドウィッチの一種が楽しまれている。ニューヨークのブルックリンでも一般的に食べられ、ヴァステッダの名前で通っている。トリッパ・アッラ・ロマーナ(Trippa Alla Romana)はローマ風トリッパの煮込みで、白ワインとトマトで煮た物である。
ポルトガルでは、伝統的に全動物の内臓が多くの料理に使われている。足(Chipse)や、胃、豚の耳は、豆のスープで煮込まれる。ポルトのもつ煮は有名でトリパス・ア・モーダ・ド・ポルト(Tripas à moda do Porto)と呼ばれる。フラキ(Flaki)は香草マジョラムと煮込んだスープである。牛の脳 (Mioleira) は、クロイツフェルト・ヤコブ病の発生以来、消費が減少している。豚の血は、小麦粉と調味料を入れた非常に特異な形の黒色のプディング (farinhato) を作るのに使われる。