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ひまわり8号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ひまわり8・9号のイラスト画像(気象庁提供)
ひまわり8号 (Himawari-8)
所属気象庁 (JMA)
主製造業者三菱電機
日本の旗日本
国際標識番号2014-060A
カタログ番号40267
状態待機運用中[1]
目的気象観測
設計寿命衛星本体(バス)15年以上
ミッション8年以上(運用7年+並行観測1年)
打上げ機H-IIAロケット25号機
打上げ日時2014年10月7日 14:16:00
軌道投入日2014年10月16日 19:00:00
物理的特長
衛星バスDS2000
最大寸法全幅約8m(太陽電池パネルを含む)
質量打ち上げ時約3,500kg、ドライ約1,300kg
発生電力約2.6kW(静止軌道初期)[2]
姿勢制御方式三軸制御
軌道要素
軌道静止軌道
静止経度東経140.7度
近点高度 (hp)35,781km[3]
遠点高度 (ha)35,791km[3]
軌道傾斜角 (i)0度
軌道周期 (P)約24時間(23時間56分4秒)
搭載機器
放射計AHI (Advanced Himawari Imager[4])
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ひまわり8号は、気象庁 (JMA) が開発三菱電機が製造し、三菱重工業[5]宇宙航空研究開発機構 (JAXA)[6] が打ち上げた[注 1]静止気象衛星である。これまでのひまわりに比べて観測バンド数が大幅に増えたため『静止地球環境観測衛星』とも呼ばれる[8]。運用時期以外はすべてひまわり9号と同じ。

打ち上げ

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H-IIAロケット25号機によって日本時間2014年平成26年)10月7日14時16分00秒に種子島宇宙センターから打ち上げられ、14時43分57秒に衛星の分離に成功[9]、同月16日19時00分に静止軌道への投入が確認された[10]

目的

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→「ひまわり9号 § 目的」も参照

日本及び東アジア・西太平洋域内の各国における天気予報台風集中豪雨気候変動などの監視・予測、船舶航空機の運航の安全確保、地球環境の監視を目的としている[11]

運用計画

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→「ひまわり9号 § 運用計画」も参照

運輸多目的衛星ひまわり7号 (MTSAT-2) の後継衛星として、軌道上で機能の確認試験を実施した後、2015年(平成27年)夏の運用開始が予定された[12]。同設計のひまわり9号と合わせ、衛星製作費用約340億円、打上げ費用約210億円を見込んでいる[12]

衛星本体の機能確認試験、地上側を含むシステム全体の連続運用試験等の準備が順次進められ、2015年5月27日、気象庁より同年7月7日(七夕)11時(JST)から正式運用を開始することが発表され[13]、予定通り2015年7月7日11時(JST)から正式運用が開始された[14][15]。2022年6月23日に、同年12月13日にひまわり9号と交代する予定であることが発表された[16]。2022年12月13日にひまわり9号と交代した[17]

2024年11月11日、ひまわり9号がセンサ温度異常で正常に画像配信できない障害を受けて、バックアップとして待機運用状態から起動させる措置をとった[18]。また、2025年(令和7年)10月12日にも、ひまわり9号に通信障害が発生して待機運用中のひまわり8号に切り替えられた[19]

運用

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ひまわり8号から経費節減のため衛星の管制(制御)業務を民間事業者に委託するPFI方式が導入され、管制業務は特別目的会社の気象衛星ひまわり運用事業(HOPE)が行っている[20][21]

イメージャーによる観測

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ひまわり8号で撮影された赤外線画像平成31年2月28日。以前のひまわり7号と比べて格段に解像度、リアルタイム性がアップされた。出典:https://www.jma.go.jp/jp/gms150jp/

可視赤外放射計 (AHI: Advanced Himawari Imager) は、可視域3バンド、近赤外域3バンド、赤外域10バンドの計16バンドのセンサーを持ち、ひまわり6号・7号の可視1バンド、赤外4バンドの計5バンドを大きく上回る。可視域の3バンド(赤:0.64µm、緑:0.51 µm、青:0.47 µm)を合成することで「カラー画像」が作成可能で、(雲と区別できるため)黄砂噴煙などの監視にも有用とされている[4]

静止衛星から見える範囲の観測に従来は約30分を要したが、ひまわり8号では10分毎の観測が可能となる。これと並行して、特定の領域を高頻度に観測することができ、日本周辺なら2.5分毎の観測が可能である。水平分解能も従来に比べて2倍に向上させている[11]。一方、データ量はひまわり7号比で50倍となった。AHIのセンサーは、アメリカ合衆国のボーイングが開発に関わった、次期米国気象衛星(GOES-R(16))用のABI(Advanced Baseline Imager)を一部日本向けに改良したものである[22][23]

これらの観測機能の大幅な強化によって、台風集中豪雨をもたらす等の移動・発達を詳細に把握でき、また火山灰エアロゾルの分布も高精度に把握することができるようになるとしている[11]

2014年12月18日、静止気象衛星としては世界初となる[24][25]カラー画像の撮影と送信に成功した[26][27][28]。2015年4月16日、気象庁は前年12月の初公開以降の試験運用中に撮影した画像及び動画を公開した[29]。台風、積乱雲桜島の噴煙などが、ひまわり7号と比べて詳細に記録されており、性能が格段に向上されたことが確認できる[29]

ひまわり8号の観測バンド[30][31]
波長帯番号略称中心波長
(µm)
赤道域
水平解像度 (km)
ひまわり7号
相当チャンネル
想定用途
可視1V10.470631-植生、エアロゾル、カラー画像(青)
2V20.510001-植生、エアロゾル、カラー画像(緑)
3VS0.639140.5VIS植生、下層雲・霧、カラー画像(赤)
近赤外4N10.856701-植生、エアロゾル
5N21.61012-雲相判別
6N32.25682-雲粒有効半径
赤外7I43.88532IR4下層雲・霧、自然火災
8WV6.24292IR3上層水蒸気量
9W26.94102-上中層水蒸気量
10W37.34672-中層水蒸気量
11MI8.59262-雲相判別、SO2
12O39.63722-オゾン全量
13IR10.40732IR1雲画像、雲頂情報
14L211.23952-雲画像、海面水温
15I212.38062IR2雲画像、海面水温
16CO13.28072-雲頂高度

画像配信

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以前ひまわり6号が行っていた、高速情報伝送 (HRIT) 及び低速情報伝送(LRIT)の受信局(MDUS及びSDUS)向けの衛星画像直接配信サービスは、2015年12月に終了し、衛星画像を通信衛星から配信するサービス(HimawariCast)を2015年1月から開始した。通信衛星は、サービス開始時はJCSAT-2A(JCSAT-8)を使用し、2016年7月からはJCSAT-2B(JCSAT-14)を使用している[32]

通信系

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従来、送受信のための地上設備は埼玉県鳩山町にある気象衛星通信所1か所のみだったが、非常時の代替施設となる副局を、台風などによる悪天候に見舞われにくい北海道江別市に初めて設置した[33][34][21]。また、衛星運用指示回数はこれまで原則1日1回だったが2.5分間隔で最大1日576回と即応性が強化された[33]

衛星の諸元

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→「ひまわり9号 § 衛星の諸元」も参照

気象庁[11]より公表されている情報を総合すると、次のような諸元の衛星となる。

要素詳細
主製造業者三菱電機
衛星バスDS2000
姿勢制御3軸姿勢制御(スタートラッカー)
寿命本体 15年
観測 8年
衛星質量打ち上げ時 3.5t
末期 1.3t
観測センサAHI (Advanced Himawari Imager) 16チャンネル
宇宙環境観測 (SEDA)
観測頻度全球観測 10分
日本付近 2.5分
機動観測域 2.5分
静止位置東経140度付近
画像配信商用通信衛星による配信

太陽自動回避機能

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春分期と秋分期の真夜中ごろには太陽・地球・ひまわり8号の順で一直線上に並ぶことになるが、この状態で地球を観測すると可視赤外放射計に直射光が当たってしまうため、センサを保護する目的で自動的に一部の観測をスキップする『太陽自動回避機能』を備えている[35]。スキップされた観測地点の画像は欠損したまま配信される[36]。太陽光に比べ微弱ではあるが、月光の影響で画像品質が低下することもある[37]

また春分期と秋分期近くには可視赤外放射計に入射した太陽光が内部で反射・散乱し観測画像に帯状の光が映る『太陽迷光』が発生することがある[35][38]

その他

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金星大気の観測

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ひまわり8号・9号の観測画像を使って、まれに地球の背景の宇宙空間に写り込む金星の大気の温度変動を明らかにする研究が行われた。2015年7月から2025年2月の間の全観測画像のうち金星は437回撮像されており、これらをバンド8から16の赤外領域のバンドについて分析することで、金星大気の異なる高度での大気温度を長期的に観測したことになり、10年にわたる大気の時間的変動が明らかとなった。これまで金星を10年にわたって継続的に観測した探査計画はなく、未解明の金星大気の長期変動への理解に貢献すると考えられている[39]。また、深宇宙探査機に搭載された赤外センサの較正にも試み、金星探査機あかつき水星探査機べピ・コロンボとの間で中間赤外線カメラ同士の定量比較が行われた[39]

脚注

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注釈

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  1. ^H-IIAロケット13号機以降は、打ち上げ事業は三菱重工業に移管され、JAXAは打ち上げ安全監理業務(地上安全確保業務、飛行安全確保業務、カウントダウン時の総合指揮業務等)を担当している[7]

出典

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  1. ^2022年12月13日から気象衛星がバトンタッチ ひまわり8号から9号に―気象庁”. jiji.com. 2022年12月13日閲覧。
  2. ^ひまわり8・9号”. 三菱電機 (2014年10月7日). 2014年10月7日閲覧。
  3. ^ab次期静止気象衛星「ひまわり8号」 HIMAWARI 8 - 軌道”. Heavens-Above (2015年1月22日). 2024年3月16日閲覧。
  4. ^ab放射計(AHI)”. 気象衛星センター. 2014年10月7日閲覧。
  5. ^H-IIAロケット25号機による静止気象衛星「ひまわり8号」(Himawari-8)の打上げ結果について』(プレスリリース)三菱重工業、2014年10月7日http://www.mhi.co.jp/notice/notice_20141007.html2014年10月8日閲覧 
  6. ^H-IIAロケット25号機による静止気象衛星「ひまわり8号」(Himawari-8)の打上げ結果について』(プレスリリース)宇宙航空研究開発機構、2014年10月7日https://www.jaxa.jp/press/2014/10/20141007_h2af25_j.html2014年10月8日閲覧 
  7. ^H-IIAロケットとは”. 宇宙航空研究開発機構. 2014年10月8日閲覧。
  8. ^静止地球環境観測衛星「ひまわり8 号及び9 号」の紹介』(プレスリリース)気象衛星センター技術報告、2013年2月https://www.data.jma.go.jp/mscweb/technotes/msctechrep58-3.pdf2015年8月2日閲覧 
  9. ^H-IIAロケット25号機による「ひまわり8号」の打上げ結果について”. 気象庁 (2014年10月7日). 2014年10月7日閲覧。
  10. ^「ひまわり8号」の静止化の完了について』(プレスリリース)気象庁、2014年10月17日https://www.jma.go.jp/jma/press/1410/17a/20141017_himawari8_enters_geostationary_orbit.html2014年11月10日閲覧 
  11. ^abcd新しい気象衛星 -ひまわり8号・9号-” (PDF). 気象庁 (2014年3月). 2016年5月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月7日閲覧。
  12. ^ab平成26年度気象庁関係予算決定概要』(PDF)(プレスリリース)気象庁、2013年12月24日https://www.jma.go.jp/jma/press/1312/24a/26kettei.pdf2014年10月9日閲覧 
  13. ^静止気象衛星「ひまわり8号」の運用開始日について』(プレスリリース)気象庁、2015年5月27日https://www.jma.go.jp/jma/press/1505/27a/20150527_himawari8_operation_schedule_press.html2015年6月1日閲覧 
  14. ^ひまわり8号、運用開始 実力は世界最高”. 日本経済新聞 (2015年7月7日). 2020年7月7日閲覧。
  15. ^新型気象衛星「ひまわり8号」、きょう7日から本運用を開始 観測性能が大幅アップ”. sorae.jp (2015年7月7日). 2018年5月21日閲覧。
  16. ^観測運用衛星の交代”. 気象衛星センター (2022年6月23日). 2022年7月14日閲覧。
  17. ^気象衛星がバトンタッチ ひまわり8号から9号に―気象庁”. jiji.com. 2022年12月13日閲覧。
  18. ^社会部, 時事通信 (2024年11月11日). “ひまわり9号、一時観測障害 搭載カメラ、高温で不具合―気象庁:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2024年11月25日閲覧。
  19. ^気象衛星「ひまわり9号」が観測障害 衛星画像更新に影響 - 日本経済新聞。2025年10月12日閲覧。
  20. ^赤石一英「ひまわり運用等事業について」(PDF)『測候時報』第79巻第1-2号、気象庁、2012年、1-14頁、ISSN 1342-5692 
  21. ^ab2015年予定の「ひまわり8号」運用開始に向けて 「ひまわり8号/9号」運用等事業 地上設備の現地工事完了のお知らせ』(PDF)(プレスリリース)宇宙技術開発、2013年10月7日http://www.sed.co.jp/images/sednews_20131007.pdf2014年10月7日閲覧 
  22. ^「ひまわり8号」プロジェクトマネージャーに聞く”. 三菱電機 (2014年9月16日). 2016年11月2日閲覧。
  23. ^ひまわり8号及び9号の地上システム 総合報告”. 気象衛星センター. 2017年3月3日閲覧。
  24. ^“ひまわり8号のカラー画像公開 静止気象衛星では世界初”. 朝日新聞デジタル. (2014年12月18日). http://www.asahi.com/articles/ASGDL5QNWGDLUTIL03D.html 2015年7月6日閲覧。 
  25. ^“ひまわり8号から初画像 気象衛星として世界初のカラー”. 産経ニュース. (2014年12月18日). オリジナルの2015年6月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150625094906/http://www.sankei.com/life/news/141218/lif1412180033-n1.html 2015年7月6日閲覧。 
  26. ^「ひまわり8号」による初画像について』(プレスリリース)気象庁、2014年12月19日https://www.jma.go.jp/jma/press/1412/18a/20141218_himawari8_first_images.html2014年12月23日閲覧 
  27. ^ひまわり8号による初画像”. 気象庁 (2014年12月19日). 2014年12月23日閲覧。
  28. ^“次期静止気象衛星「ひまわり8号」による初の画像の取得に成功”. Response.. (2014年12月19日). https://response.jp/article/2014/12/19/239979.html 2014年12月23日閲覧。 
  29. ^abひまわり8号のサンプル画像の公開について”. 気象庁 (2015年4月16日). 2015年4月16日閲覧。
  30. ^気象衛星センター | ひまわり8号・9号 | 放射計 (AHI)
  31. ^「ひまわり8号 気象衛星講座」ISBN 4490209312
  32. ^通信衛星による配信:HimawariCast”. 気象衛星センター (2014年9月3日). 2014年10月7日閲覧。
  33. ^ab“三菱電など、「ひまわり8号/9号」の地上設備の据え付け工事を完了”. 日刊工業新聞. (2013年10月8日). オリジナルの2014年10月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141011093011/http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0320131008bjao.html 2014年10月7日閲覧。 
  34. ^“気象衛星「ひまわり」、江別で管制 台風少ない道内に副局設置”. 北海道新聞. (2013年10月8日). オリジナルの2013年10月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131016043931/http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/496704.html 2014年10月7日閲覧。 
  35. ^ab春分期・秋分期の観測について(太陽自動回避及び太陽迷光)”. 気象衛星センター. 2015年9月3日閲覧。
  36. ^春分期・秋分期の太陽自動回避による画像欠損”. 気象衛星センター. 2015年9月3日閲覧。
  37. ^月の影響による画像品質低下”. 気象衛星センター. 2015年9月3日閲覧。
  38. ^春分期・秋分期の太陽迷光の画像への影響”. 気象衛星センター. 2015年9月3日閲覧。
  39. ^ab気象衛星ひまわり8号・9号は宇宙望遠鏡になりうる!? ~金星大気温度の長期変動の観測に成功~”. 宇宙科学研究所 研究情報ポータル あいさすGATE. 2025年8月30日閲覧。

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