『人間の土地』(にんげんのとち)は、1939年にフランスで出版されたアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによるエッセイ集。邦題は『人間の大地』(にんげんのだいち)など複数ある(#日本語訳の項目を参照)。
飛行士としての15年間の経験を基に巧みな筆致で語るエッセイで、極限状態での僚友との友情や、人間らしい生き方とは何か、が主題となっている。出版の同年にアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞した。
主に語られているのは1926年以降の郵便飛行士としての経験で、作者はラテコエール社での僚友アンリ・ギヨメに同書を捧げている。
フランス語の原題Terre des hommes は、著者が書き残した戯画等を考え合わせると、直訳すれば「人間達の地球」という意味であると思われる。東欧圏では「人びとの惑星」と訳すのが一般的である。アメリカ版の題はWind, Sand and Stars となっている。
フランス文学者の野崎歓は、「ドイツの哲学者(フリードリヒ・ニーチェ)からインスピレーションを得た事実は、『人間の大地』においてこそまぎれもなく表れているのではないか。特に「大地」の価値を謳いあげるくだりにそれが実感されるのだ」と書いている[1]。
※(各章のタイトルは、新潮文庫版より引用)
この作品で描かれる飛行士としての経験は、作者の他の作品にも大きな影響を与えている。
「定期航空」や「僚友」には、果敢に新航路を開発する僚友や、親友が消息不明になった経験、服務規程を徹底する支配人など、『夜間飛行』の原型になったと思われるエピソードが多数描かれている。
『星の王子さま』の主人公はサハラ砂漠の単独飛行中に不時着しているが、この元になったと思われる「砂漠のまん中で」は、リビア砂漠(サハラ砂漠の一部分。エジプトとリビアにまたがる)での遭難体験(1935年12月。墜落地点はカイロ西方200km)である。これとは別に1927年2月、サハラ西部に不時着し、2日後にギヨメに救出されるという体験もしている。
「砂漠で」のエピソードのうちいくつかは、『南方郵便機』にそのまま挿入されたものだと作者自身が『人間の土地』の中で語っている。