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ラテン語 (ラテンご、ラテン語:lingua Latina, Latinum 、英語:Latin )は、インド・ヨーロッパ語族 のイタリック語派 ラテン・ファリスク語群に属する古典言語 の一つである。漢字表記は拉丁語 ・羅甸語 で、拉語 ・羅語 と略される。ラテン語はもともとイタリア のローマ 周辺のテヴェレ川 下流域ラティウム に住むラテン人 によって話されていた。その後、共和制ローマ とローマ帝国 の拡大により、ヨーロッパ 全土で主要言語となった。また、ラテン語は英語 を含む多くの言語に影響を与えた。
共和制ローマ 後期までに、古ラテン語 は標準化 された古典ラテン語 へと発展した。これに対し、俗ラテン語 はローマ帝国 内で口語 、つまり民衆の話し言葉として使われた。ラテン語はしばしば死語 と言われるが、「言語の死 」は起こらなかった。6世紀から9世紀にかけて、異なる地域の方言ラテン語の自然な言語変化 により、ロマンス諸語 が生まれた。西ローマ帝国 の崩壊後も、ラテン語は19世紀初頭までヨーロッパ における国際コミュニケーション・科学・学問の共通言語 であり続けたが、19世紀 初頭以降、一般的な学術および政治的使用においては現代言語がラテン語にとってかわった。
中世ラテン語 以降は、ラテン語はもはや母語 としては話されず、中世 には西ヨーロッパ とカトリックヨーロッパ 全域で、9世紀からルネサンス まで実用言語および文語として使用され、その後ルネサンス・ラテン語 と呼ばれる古典化形式のラテン語が生まれた。これが近世 に発展した近世ラテン語の基礎となった。ラテン語は、少なくとも17世紀 後半に話し言葉が衰え始めるまでは、書き言葉と話し言葉の両方として教えられていた。しかし、現代ラテン語は一般的に、話し言葉ではなく書き言葉として学ばれることが多い。教会ラテン語 は、ローマ教皇庁 とカトリック教会 のローマ典礼 の言語として使われ続けている。
もともとラテン語は、イタリア半島 中部のラティウム 地方(ローマ を中心とした地域、現イタリア ・ラツィオ州 )においてラテン人 が用いた言語であったが、古代ローマ ・共和政ローマ ・ローマ帝国 で用いられ公用語 となったことにより、ローマ帝国の広大な版図(ヨーロッパ大陸の西部や南部、アフリカ大陸北部、アジアの一部)へ伝播した。
西ローマ帝国 滅亡後もラテン語はローマ文化圏の古典文学 を伝承する重要な役割を果たした。勢力を伸ばすキリスト教会を通してカトリック教会 の公用語としてヨーロッパ各地へ広まり、祭祀宗教用語 として使用されるようになると、中世 には、中世ラテン語として成長した。ルネサンス を迎えると、自然科学 ・人文科学 ・哲学 のための知識階級の言語となった。さらに、読み書き主体の文献言語や学術用語 として近世 のヨーロッパまで発展・存続した。現在もラテン語はバチカン の公用語であるものの、日常ではほとんど使われなくなったといえる。しかし、各種学会・医学 ・自然科学 ・数学 ・哲学 ・工業技術など各専門知識分野では、世界共通の学名 としてラテン語名を付けて公表する伝統があり、新発見をラテン語の学術論文として発表するなど、根強く用いられ続けている[ 注釈 2] 。他公用語が複数あるスイス では記述スペースが足りない場合ラテン語での表記を公的機関がすることを認めている。また、略号として午前・午後のa.m.(ante meridiem)・p.m.(post meridiem)や、ウイルス (virus)やデータ (data)など、日常的に用いられる語のなかにも語源がラテン語に由来するものがある。
ラテン語の使用・時代・地域・関係の深い言語[ 編集 ] イタリア・ローマ のコロッセウム 内部の石に刻まれたラテン語碑文 ラテン語が広まる過程でギリシア語 から多くの語彙を取り入れ、学問 ・思想 などの活動にも使用されるようになった。
ただしラテン語が支配的な地域はローマ帝国の西半分に限られ、東半分はギリシア語が優勢な地域となっていた。やがてローマ帝国が東西に分裂し、ゲルマン民族 の大移動によって西ローマ帝国 が滅び西ヨーロッパの社会が大きく変動するのに従い、ラテン語は各地で変容していき、やがて各地の日常言語はラテン語と呼べるものではなくなり、ラテン語の流れをくんだロマンス諸語 が各地に成立していった。元々ギリシア語が優勢だった東ローマ帝国 においても、7世紀に公用語はギリシア語 に転換された。
こうした中、今日の西ヨーロッパに相当する地域においてはローマ帝国滅亡後もローマ・カトリック教会 の公用語となり、長らく文語 の地位を保った。現在でもバチカン市国 の公用語はラテン語である。たとえば、典礼 は第2バチカン公会議 まで、ラテン語で行われていた。今日に至るまで数多くの作曲家が典礼文に曲をつけており、クラシック音楽 の中では主要な歌唱言語の1つである。ただし、実際の使用は公文書やミサ などに限られ、日常的に話されているわけではない。また、バチカンで使われるラテン語は、古典式とは異なる変則的なラテン語である。なお、多民族・多言語国家であるスイス ではラテン語の名称Confoederatio Helvetica (ヘルヴェティア 連邦)の頭字語 を自国名称の略 (CH) としている。また欧州会社 (Societas Europaea,SE )のように欧州共通の用語にラテン語が使用されている場合もある。
中世 においては公式文書や学術関係の書物の多くはラテン語(中世ラテン語 、教会ラテン語)で記され、この慣習は現在でも残っている。例えば、生物 の学名 はラテン語を使用する規則になっているほか、元素 の名前もラテン語がほとんどである。また法学 においても、多くのローマ法 の格言や法用語 が残っている。19世紀 までヨーロッパ各国の大学 では学位論文をラテン語で書くことに定められていた。
今日のロマンス諸語 (東ロマンス語:イタリア語 ・ルーマニア語 、西ロマンス語:フランス語 ・スペイン語 ・ポルトガル語 など)は、俗ラテン語 から派生した言語である。また、英語 ・ドイツ語 ・オランダ語 などのゲルマン語派 にも文法 や語彙の面で多大な影響を与えた。
現代医学 においても、解剖学 用語は基本的にラテン語である。これは、かつて誰もが自由に造語して使っていた解剖学語彙を、BNA(バーゼル解剖学用語)、PNA(パリ解剖学用語)などで統一した歴史的経緯が関連している。つまり、用語の統一にラテン語が用いられたのである。そのため、日本解剖学会により刊行されている『解剖学用語』も基本的にはラテン語である(ラテン語一言語主義)。ただし、臨床 の場面では、医師が患者に自国語で病状説明をするのが当然であるため、各国ともラテン語の他に自国語の解剖学専門用語が存在する(ラテン語・自国語の二言語主義)。近年では、医学系の学会や学術誌の最高峰が英語圏に集中するようになったため、英語 の解剖学用語の重要性が上がった。日本では、ラテン語・英語・日本語 の三言語併記の解剖学書が主流となった(ラテン語・英語・自国語の三言語主義)。
「ウイルス (virus )」など、日本語 でも一部の語彙で用いられる(ただし、元の母音の長短の区別はほとんど意識されない[ 注釈 3] )。なお、森鷗外 の小説 『ヰタ・セクスアリス 』は、ラテン語のvita sexualis (性的生活)のことである。
ラテン語が属するイタリック語派 は、インド・ヨーロッパ語族 内ではケントゥム語派 に分類され、インド・ヨーロッパ祖語 の*k および*g はラテン語でもK ,G として保たれた。イタリック語派の話者がイタリア半島 に現れたのは紀元前2千年紀 後半と見られており、ラテン語の話者がラティウム地方 (現在のイタリア 、ラツィオ州)で定住を開始したのは紀元前8世紀 だった。現在発見されているラテン語の最も古い碑文 は紀元前7世紀 に作られたものである。この時期から紀元前2世紀 頃までのラテン語は、のちの時代のラテン語と区別され古ラテン語 と呼ばれる。この時代のラテン語は、語彙 などの面で隣接していたエトルリア語 などの影響を受けた。
古ラテン語では以下の21文字のアルファベット が使われた。下段には現在の字形を記している。これは、西方ギリシア文字 ・初期のエトルリア文字 ・古イタリア文字 のアルファベットをほぼ踏襲した:
「𐌂」(Γ の異字体)は元来は[ɡ] の音を表す文字だったが、[k] も表した。I は[i] と[j] 、V は[u] と[w] の音価を持った。[kʷ] の発音はQ V と表記した。五つの母音字(A, E, I, O, V)は長短両方を表したが、表記上の区別はなかった。Z の文字は使われなかった[ 注釈 4] 。
紀元前3世紀 になると、C は[k] の音の大多数を表すことが一般化した(ただしK の使用も少数の語に残った)。
また[ɡ] の音を表す新たな文字G が作られ、Z の文字を廃した位置へ置いた。
古ラテン語は、古典ラテン語 に残る主格 、呼格 、属格 (所有格)、与格 (間接目的格)、対格 (直接目的格)、奪格 に加え、場所 を表す所格 (処格、地格、位格、依格、於格などともいう)があった。名詞の曲用では、第二変化名詞の単数与格および複数主格が-oī だった。古典ラテン語における第二変化名詞単数の語尾-us, -um はこの時代それぞれ-os, -om だった。また、複数属格の語尾は-ōsum (第二曲用)であり、これはのちに-ōrum となった。このように、古ラテン語時代の末期には母音間の s が r になる「ロタシズム 」という変化が起きた。
短母音、長母音、二重母音(AE, AU, EI, EU, OE, UI)[ 注釈 5] を持っていた。子音、半母音、子音連続、同一子音連続(二重子音)を持っていた。
紀元前1世紀 以降、数世紀にわたって用いられたラテン語は古典ラテン語 (古典期ラテン語 )と呼ばれる。のちの中世 、また現代において人々が学ぶ「ラテン語」は、通常この古典ラテン語のことをいう。この古典ラテン語は書き言葉 であり、多くの文献が残されているが、人々が日常話していた言葉は俗ラテン語 (口語ラテン語 )と呼ばれる。この俗ラテン語が現代のロマンス諸語 へと変化していった。
古ラテン語と同様に、scriptio continua (スクリプティオー・コンティーヌア、続け書き)といって、単語同士を分かち書き にする習慣 がなかった(碑文 などでは、小さな中黒 のようなもので単語 を区切った例もある)。アルファベット もキケロ (前106 –43 )の時代まではX までの21文字だった。また、大文字 のみを用いた。
紀元の初めにギリシア語 起源の外来語 を表記するためにY とZ [ 注釈 6] が追加され、アルファベット は以下の 23 文字となった:
Y を含めた6つの母音字は長短両方を表したが、引き続き表記上の区別はされなかった。
引き続きC が[k] の音に常用され、K の使用は固有名詞 および KALENDAE 等に限定された。C は[k] 、G は[ɡ] と発音した[ 注釈 7] 。
古典ラテン語のアクセント は、現代ロマンス諸語に見られるような強勢アクセント ではなく、現代日本語 のようなピッチアクセント (高低アクセント)であったとされる(強勢アクセントとする説も存在する)。文法面では、古ラテン語 の所格 は一部の地名などを除いて消滅し、六つの格 (主格 、呼格 、属格 、与格 、対格 、奪格 )が使用された。また以前の時代の語尾 -os, -om は、古典期には-us, -um となった。
現在古典ラテン語と呼ばれるものはこの時期の書き言葉 である。
発音の変化が生じ、BS, BT が[ps] ,[pt] へ変化した(綴りは変わらない)。同じ子音が連続する二重子音 は、長子音 化した[ 注釈 8] 。
この時代の話し言葉 (俗ラテン語 )では、文末の-s は後ろに母音 が続かない限り発音されない場合があった。またau は日常では[ɔː] と読まれた。このように古典期には、話し言葉と古風な特徴を残した書き言葉の乖離が起きていた。
紀元前1世紀 頃。
1世紀 頃。
古典期 が終わると、人々が話すラテン語は古典語からの変化を次第に顕著に見せるようになっていった。この時代に大衆に用いられたラテン語は俗ラテン語 (口語ラテン語 )と呼ばれる。2世紀 、あるいは3世紀 頃から俗ラテン語的な特徴が見られるようになっていたが、時代が下るにつれ変化は大きくなり、地方ごとの分化も明らかになっていった。
古典ラテン語にはY を除けば5母音があり、長短を区別すれば10の母音があったが、俗ラテン語になるとこれらは以下の7母音になった。
[a] [ɛ] [e] [i] [ɔ] [o] [u] 古典期の長母音 [eː] は[e] に、[oː] は[o] に変化した。また短母音 [e] と[o] は、俗ラテン語ではそれぞれ[ɛ] と[ɔ] になった。古典期のV は、子音 としては[w] と発音されたが、俗ラテン語の時代には[v] に変化していた。さらにアクセント はピッチアクセント から現代ロマンス諸語 と同様の強勢アクセント に置き換えられていった。古典期の[k] と[ɡ] も変化を起こした。これらは前舌母音 ([i] や[e] )の前では軟音化して口蓋音化(硬口蓋音化)し、それぞれ[tʃ] 、[dʒ] の音になった。
俗ラテン語では動詞 などの屈折にも変化が起きた。動詞の未来時制では、古典期の -bo に代わり habere(持つ)の活用形を語幹末に付した形式が用いられ始めた。指示詞 ille は形が変化し、次第に冠詞 として用いられるようになっていった。名詞 の曲用では格変化 が単純化され、主格 と対格 は同一(特に女性名詞 )になり、属格 と与格 も統合された。単純化した名詞の格 に代わって前置詞 が発達していった。例えば属格 に代わり de が、与格 に代わり a が用いられ始めた。
イタリア やイベリア半島 ではやがて名詞 の格変化 は消滅し、フランス でも12世紀 頃には使われなくなり、ダキア で使用されたのちのルーマニア語 を除いて格変化はなくなった。このような文法的特徴のみならず、音韻面や語彙でも地方ごとの違いを大きくしていった俗ラテン語は、やがてロマンス諸語 と呼ばれる語派を形成した。
かつてのローマ帝国の版図で用いられたラテン語は一般大衆には使われなくなり、それぞれの地域でラテン語から変化した俗ラテン語 がそれに置き換えられた。一方で古典ラテン語 は、旧ローマ帝国領内のみならず西ヨーロッパ全域において近代諸語が文語 として確立するまでは、学術上の共通語として使用された。カトリック教会でも同じく、古典ラテン語の伝統の下にあるラテン語が教会ラテン語と呼ばれて使用されたが、こちらはその後もなお使用され続けた。
1951年 に発行されたジョージ6世 のファージング硬貨 。肖像の周りの「GEORGIVS VID:G :BR :OMN:REXFIDEI DEF : 」は、ラテン語で「ジョージ6世、神の恩寵ある全ブリタニアの王 にして信仰の擁護者 」の意味。サラマンカ大学 の記念銘。 「本学は、日本帝国の皇太子同妃両殿下なる明仁 と美智子 を喜びをもって迎えたり。1985年 2月28日 」 と刻まれている。ラテン語がヨーロッパで教養と格式を保持している例。ヨーロッパではラテン語は長い間教会においても学問の世界においても標準的な言語として用いられてきたが、ルネサンス と共に古典古代 の文化の見直しが行われ、古典期の文法・語彙を模範としたラテン語を用いようとする運動が人文主義者 の間で強まった。これにより中世よりもむしろ「正しい」ラテン語が教育・記述されるようになる。共通化が進んだラテン語は、近代においても広く欧州知識人の公用語 として用いられた。
この近代ラテン語で著述した主な思想家としてはトマス・モア (『ユートピア 』)、エラスムス のような人文主義者だけでなく、デカルト 、スピノザ などの近代哲学の巨人も挙げられる。有名なデカルトの「我思う、ゆえに我あり 」という言葉の初出は『方法序説 』フランス語版であるが、後にラテン語訳されたCogito, ergo sum. (コーギトー、エルゴー・スム)の方が広く知られている。自然科学ではニュートン のプリンキピア がある。ただしフランスの啓蒙思想家、ドイツのカント 以降は母語で著述するのが主流になった。
学問的世界においては、ラテン語はなお権威ある言葉であり世界的に高い地位を有する言語である。現在でも学術用語にラテン語が使用されるのには、学術用の語彙 が整備されており、かつ死語であるために文法などの面で変化が起きない(現実には中世・近世を通して多少の変化はあったが)という面、あるいは1つの近代語の立場に偏らずに中立的でいられるという面も見逃すことはできない。無論これは他の古典語でも同じであるが、ラテン語が選択されたのは近現代におけるそうした学問が、良し悪しは別として、欧州中心のものであったことが反映している。現在も活用されている場面として、たとえば生物 の学名 はラテン語もしくはギリシア語 単語をラテン語風の綴りに変えたものがつけられるのが通例である。
また、現在においてもラテン語の知識は一定の教養と格式を表すものであり、国(例アメリカ合衆国 、スペイン 、スイス 、カナダ およびカナダの各州など)や団体(アメリカ海兵隊 、イギリス海兵隊 など)のモットーにラテン語を使用する例や、1985年にサラマンカ大学 が日本の皇太子夫妻の来学の記念の碑文を、スペイン語 ではなくラテン語で刻んだことや、イギリス のエリザベス2世 が1992年 を評してAnnus Horribilis (アナス・ホリビリス 、ひどい年)とラテン語(ただし発音は英語風)を使ったこともその現れといえる。日本でも高校野球の初代優勝旗にはVICTORIBUS PALMAE (ウィクトーリブス・パルマエ、「勝利者に栄冠を」)と刺繍されていた。だが、ラテン語が今日の欧州で重視されているとまでいうことはできない。欧州諸国では第二次世界大戦 前までは中等教育 課程でラテン語必修の場合が多かったが、現在では日本での「古典」「古文」ないし「漢文」に相当する科目として存在する程度である。
日常会話という観点からみると、現代ではラテン語での会話そのものがほとんど存在しないため、死語 に近い言語の1つであるともいえるが、ラテン語は今でも欧米の知識人層の一部には根強い人気がある。近年はインターネット の利用の拡大に伴ってラテン語に関心のある個人が連携を強めており、ラテン語版ウィキペディア も存在する(ラテン語 :Vicipaedia )ほか、ラテン語による新聞やSNS、メーリングリスト、ブログも存在する。さらに、フィンランド の国営放送は定期的にラテン語でのニュース番組を放送している。
ウルビ・エト・オルビを行うベネディクト16世 現在、ラテン語を公用語として採用している国はバチカン市国 のみである。これは、現在でもラテン語がカトリック教会 の正式な公用語に採用されているためであるが、そのバチカン市国でもラテン語が用いられるのは回勅などの公文書、コンクラーヴェ の宣誓、「ウルビ・エト・オルビ 」などの典礼文などに限られ、2013年の教皇ベネディクト16世の退位 に際しては、退位の意思表明と理由は、教皇本人が作成したラテン語の文章の朗読で行われた。日常生活ではイタリア語 が用いられる(バチカンはローマ 市内にある)。
ヨーロッパの各地で長期にわたって用いられていたため、国や地域、時代によって発音は異なるが、現代には大きく分けて古典式 、イタリア式 、ドイツ式 の3つがある。イタリア式には、現代イタリア語の原則にのっとって発音するものと、それをもとにした教会式 (ローマ式)の2つがある。後者は、フランスのソレム修道院で提唱された発音法であり、ピウス10世 が推奨したことで広まった。
日本の大学で学ぶ発音は、原則として古典式である。一方、ラテン語の楽曲の歌唱においてはイタリア式、ドイツ式が主流である。どのように異なるか、いくつか例を示す(実際には、地域や人によって発音の揺れがある)。
古典式発音 イタリア式発音 ドイツ式発音 ae (æ) [ai] [e] [ɛ] oe (œ) [ɔi] [e] [ø] ,[œ] c [k] a, o, u の前では[k] 、ae, e, i の前では[tʃ] a, o, u の前では[k] 、e, i の前では[ts] gn [gn] [ɲ] [gn] s [s] [s] 、母音間で[z] [ 注釈 9] [s] [ 注釈 10] sc [sk] a, o, u の前では[sk] 、e, i の前では[ʃ] a, o, u の前では[sk] 、e, i の前では[sts] z [z] [dz] [ts] 三ヶ尻正『ミサ曲・ラテン語・教会音楽ハンドブック—ミサとは・歴史・発音・名曲選』(ショパン、2001年)を元に作成 。cとgnを後にWikipediaドイツ語版などを基に追記。
上の3つの方式に加えて、文章 レベルのラテン語まではいかないが単語 およびフレーズ レベルでは英語式 が広まっている。もともと英語でetc. (その他 )がエトセトラ(et cetera 、英語ではe、i、yの前のcはsと発音)、Et tu Brute (ブルータス、お前もか )がエト・テュー・ブルータと発音されるなどの延長で[ 3] 、英語が国際語 になった現在特に科学 用語に英語式発音が多い。例えば天文学 関係では星座 名は英語 文章内でもラテン語を使い、恒星 名もギリシャ文字 名にラテン語星座名の属格 (所有格 )を添えるので、ラテン語が英語式に発音される。
日本語では古典式、英語式、またはドイツ式の音をカタカナ表記するのが慣習となっている。ただし、古典式によっていると思われる場合でも、母音の長短の別を表記しない場合がほとんどである。
その一方、宗教音楽の題名を表記する際は、イタリア式に近い表記が多い。例えば、Agnus Dei のAgnus は、古典式とドイツ式では「アグヌス」と発音するが、イタリア式では「アニュス」(厳密には、gn は[ɲ] という鼻音)となる。Magnificat も「マグニフィカト」ではなく、「マニフィカト 」と表記される傾向が強い。
前述の通り、アクセントは時代により高低アクセントから強弱アクセントへ移行したが、単語のどの位置に強勢が置かれるかについては一定の法則を持つ。
その法則は以下の通りである。
後ろから2番目の音節が閉音節 である場合、および、長母音 もしくは二重母音 を含む音節である場合、強勢は後ろから2番目の音節に置かれる。 上記以外の場合、後ろから3番目の音節に置かれる。但し、2音節しか持たない単語の場合は後ろから2番目の音節に置かれる。 1.の例:puel la 少女(閉音節)。mercā tor 商人(長母音)。
2.の例:īn sula 島。do minus 主人。
ラテン語は、他のすべての古インド・ヨーロッパ語族 と同様に、強い屈折 を持ち、それゆえに語順が柔軟である。従って、古典ラテン語はインド・ヨーロッパ祖語 の形態を保存した古風な言語と言える。名詞には最大で7種類の格変化が、動詞には4種類の活用がある。ラテン語は前置詞 を使用し、通常は修飾する名詞 の後に形容詞 ・属格を置く。ラテン語はまた、pro脱落言語 及び動詞枠付け言語 でもある。
ラテン語は強い屈折を持つ言語であるため、語順を柔軟に変えることができる。 構文は一般的にSOV型であるが、詩歌においてはこれ以外の語順も普通に見られる。通常の散文においては主語、間接目的語、直接目的語、修飾語・句、動詞という語順になる傾向があった。従属動詞を含む他の成分、例えば不定詞 などは、動詞の前に置かれた[ 4] 。
名詞は、3つの性 (男性・女性・中性)、2つの数 (単数・複数)、7つの格 (主格・属格・与格・対格・奪格・呼格・地格)を持ち、これらにより語形を変化させる。その曲用 の類型は、大別して第1–5変化に分けられる[ 5] 。形容詞は被修飾名詞に従って性数格を一致させる[ 6] 。また、ラテン語は冠詞、類別詞を持たない。
動詞は、3つの法 (直説法・接続法・命令法)と6つの時制 (現在・未完了過去・未来・完了・過去完了・未来完了)、2つの態 (能動態・受動態)、2つの数 (単数・複数)、3つの人称 (一人称・二人称・三人称)に応じて活用 する。他に、準動詞 として不定詞 、分詞 、動名詞 、動形容詞 がある。これらはすべて、動詞の4基本形に基いて作られる[ 7] 。
挨拶 ラテン語 意味 salve (単数)/salvete (複数)こんにちは vale(単数)/valete(複数) さようなら bonum diem 今日は bonum vesperum こんばんは bonam noctem お休みなさい quomodo vales?, ut vales? 御機嫌いかが? bene valeo はい、元気です。 optime valeo, gratias tibi/ago とても良いです。有難う。 male valeo いいえ、元気です。 gratias tibi/ago, gratias tibi ago ありがとう accipe sis, en tibi どういたしまして excusatum (雄)/excusatam (雌) me habe すみません ignosce mihi ごめんなさい quod nomen tibi est? お名前は何ですか? mihi nomen est... 私の名前は。。。 ita はい non いいえ quaeso どうぞ
食べ物 ラテン語 意味 aqua , aquae (f.)水 botulus, botuli (m.) ソーセージ butyrum, butyri (n.) バター caseus, casei (m.) チーズ cervisia, cervisiae (f.) ビール citreum, citrei (n.) レモン lactuca, lactucae (f.) レタス oryza, oryzae (f.) 米 panis, panis (m.) パン perna, pernae (f.) ハム piscis , piscis (m.)魚 placenta, placentae (f.) ケーキ uva , uvae (f.)葡萄 vinum , vini (n.)ワイン
「誤るのが人間である」古代ローマ の格言の一つ。 月の海 はヨハネス・ケプラー 以来、ラテン語で命名されている(例、Mare Fecunditatis:豊饒の海 )。古典ラテン語の慣用表現は、現代の西洋諸語においても使われることが少なくなく、そのうち一部は日本語にも入っている。ラテン語起源の英語などの単語が日本語でも使われる例は、もちろん数多くある。
ラテン語由来の商号や固有名詞としては、例えば以下のようなものがある。
^ [la] ,[la] ^ 特に植物学 の論文においては2011年12月までラテン語で記述することが正式発表の要件であった[ 2] →国際藻類・菌類・植物命名規約 。 ^ 一例を挙げれば「cogito ergo sum 」の発音により忠実なカナ表記は「コーギトー・エルゴー・スム」であるが、三省堂刊大辞林には「コギトエルゴスム」の項目に掲載されている。 ^ ラテン語は元来Z の発音を持たず、ギリシア語由来語の[z] は[s] と発音し、S で表記した。 ^ AE, OE の発音は[aɪ] ,[ɔɪ] 。 ^ 文字Z がラテン語表記に再登場した。 ^ 現代のロマンス諸語 とは違い、[s] や[tʃ] 、[ʒ] 、[dʒ] などのように発音されることはなかった。 ^ 日本語でいう促音 の発音。 ^ 教会式ではKyrie eleis on (主よ憐れみ給え、もともとギリシャ語)は s[s] 。 ^ 母音間、あるいは単に s + 母音 の場合に[z] と発音することもある。 ^ かつて日産ディーゼル(現・UDトラックス) が製造・販売していた大型トラックのレゾナ の綴りもRESONAであるが、こちらは英語 のresonance が名称の由来である(ただしresonance自体はラテン語のresono(resonaの原型)に由来する)。 ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Imperial Latin” . Glottolog 2.7 . Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. https://glottolog.org/resource/languoid/id/impe1234 ^ 仲田崇志 、永益英敏 、大橋広好 「第4回「第18回国際植物学会議(メルボルン)で変更された発表の要件:電子発表の意味するところ(Changes to publication requirements made at the XVIII International Botanical Congress in Melbourne: What does e-publication mean for you. Knapp, S., McNeill, J. & Turland, N.J. Taxon 60: 1498-1501, 2011)」 の紹介と日本語訳 」(PDF)『日本微生物資源学会誌』第27巻第2号、日本微生物資源学会、2011年12月、2021年3月7日閲覧 。 ^ Merriam-Webster's Collegiate Dictionary , Tenth Edition (1999) "Foreign Words and Phrases"^ 松平 & 国原 1992 , pp. 31.^ 松平 & 国原 1992 , pp. 21–22.^ 松平 & 国原 1992 , pp. 33.^ 松平 & 国原 1992 , pp. 16–17.導入書 入門書 文法書 辞典 ラテン語史 その他 ヨーロッパにおけるロマンス諸語 ウィキブックスに
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