この項目では、野外で生活することについて説明しています。その他の用法については「キャンプ (曖昧さ回避) 」をご覧ください。
近代的なキャンプを始めた人物として名が挙げられることがあるThomas Hiram Holding (1844 – 1930)がキャンプをしている様子。ロープと二本の棒と布で組む素朴なテントと調理道具を持参。 枝 や薪 を焚火台 (英語版 ) で燃やし、燃え上がる火 で調理を行う人々。夜 空の下でのキャンピング(カリフォルニア州デスヴァレー国立公園 、2012年)キャンプ あるいはキャンピング [ 1] (英 :camping [ 注 1] )とは、野外で一時的な生活 をすること[ 2] 。野営 、露営 、宿営 ともいう。
キャンピング(キャンプ)は、野外での一時的な生活 を指している。ラテン語 の「campus」(カンプス)、フランス語 の「champ 」(シャン)は「野 」を意味し、英語の camp や camping も同系統の語である。
現在ではキャンピングと言うと、テント や即席の小屋 状建築物での滞在を指すことが多いが、実際には特に限定はなく、岩窟 などの自然地形 を利用して生活することや、簡単なツェルト などでの一時的なビバーク 、積雪期に雪洞 を掘りそこで過ごすなど、広義には、野外、屋外で一時的に生活 すること全般を指す[ 2] 。
キャンプは特に自然 の中で活動するからこそ大きな効能がもたらされると考えられている。都市 から離れた大自然の中での生活 は、都市での日常行動 を打ち破る創造的行動が要求され、また自然と接する内に、その美しさや厳しさを知ることもできる[ 2] 。またキャンプの一連の活動の中で登山 、釣り 、水泳 などの活動をする内に、身体を鍛えることもできる[ 2] 。
人類学 などでは、もともと人類はその歴史のほとんどを狩猟採集生活 をし、移動して過ごしてきた、とされている。同じく狩猟採集生活をしていた北米の先住民 (インディアン)たちのうち、平原 で移動生活を行う者たちはティピー を張り、その中で生活をしていた。北欧の地には古代からサーミ人 がおり、(ティピーに似た)テントで生活していた。ローマ帝国軍 の軍人・兵士たちは遠方の戦地に向かい、数か月から数年の間、そこで滞在しつつ様々な軍事行動 を行った。彼らは木の棒を立て、そこに布(や皮 )を張るテントを使用していたらしいことが遺物 などによって判っている。ユーラシア大陸 の東側ではモンゴル人 がゲル を用いて遊牧生活を送っていた。ゲルは移動式でありながらかなり大掛かりで、本格的な住居としてきわめて快適な住環境をもたらす。こうして自然の中で自在に移動しつつ生活することができた。
旧石器時代 の人類の生活の場、毛皮のテントを屋外で再現したもの
今から二千年ほど前、
ローマ帝国 の軍隊(
ローマ軍 )が敵地に遠征した際に行っていたキャンピング(を現代人が再現したもの)
米国の開拓者たちは
幌馬車 に生活道具を積み込んでいた。
以上は、近代キャンプが生まれる前に行われていた野外生活である。
近代化 が進むにつれ、都市部の人工的な環境で生活する人口の割合が増えていった。
19世紀 後半になると、野外で生活することに教育 的な意味を認め、一定のプログラムのもとで集団生活が行われるようになった[ 2] 。かつて人類の大半が経験していた野外での生活を、近代産業社会の中で再体験するものとして現代流のキャンプは誕生した[ 2] 。1861年 に米国コネティカット州 のガナリー においてフレデリック・ウィリアム・ガン (英語版 ) が子供たちを集めて学校キャンプを行ったことが、現代流のキャンプの始まりである、と言われている[ 2] 。1881年にはニューヨーク、ブルックリンYMCA でもキャンプが行われるようになり、これがF.ダドリーに継承されて非常に盛んになった。1896年 にはヨーロッパはドイツ帝国 のベルリン からワンダーフォーゲル運動 (渡り鳥運動)によってキャンプ活動は普及した[ 2] 。
千葉工業大学 創造工学部の八馬 智[ 3] の研究室メンバーが、墨古沢遺跡 (千葉県 印旛郡 酒々井町 )の史跡 指定地内で2024年(令和6年)に設置した旧石器時代の復元テント(防風対策のため骨組みのみ)[ 4] 。遊動生活を送る日本列島 の旧石器時代人は、多くの場合このような簡易な住まいでのキャンプ生活をしていたと考えられている。日本列島 で人類の活動が初めて確認される後期旧石器時代 は狩猟採集社会 であり、人々は食料となる動物を求めて一定の場所に留まらず、短期間に移動を繰り返す「遊動生活」をしていたと考えられている。そのため、日々の寝泊まりは、迅速な設営と撤収が可能なテント状の住まいによるキャンプが主体であったと考えられている[ 5] 。
その次の縄文時代 に入ると、人々は一定の場所に竪穴建物 や掘立柱建物 を建てて長期的な集落 を営む定住 生活が主体となり、これ以降はキャンプを日常の生活基盤とすることは少なくなっていった。
江戸時代 には、旅人は大きな油紙 を持参し、山中でやむなく日没を迎えてしまった場合には樹木の下などでそれにくるまって雨露をしのいだ とも言われている。
明治時代 は西洋 諸国の諸制度を取り入れる一環として多くの西洋スポーツ が輸入された。キャンプもそのひとつとして紹介され、教育活動として推進されるようになった[ 2] 。1894年 (明治27年)に刊行された志賀重昂 による『日本風景論 』中、「登山 の氣風を興作すべし」として「山中に露宿する方法及び注意、山中の茵褥、露宿の際の着衣」を図解し、実践する者が急増した。1907年 (明治40年)に、学習院 の院長になった乃木希典 は夏期に行われていた遊泳演習 にキャンプを取り入れ、3週間にわたり160人の学生とキャンプ生活を行った。1922年 (大正11年)には、YMCAが日光 の中禅寺湖 畔で中等学生 のための組織キャンプを行った[ 2] 。第二次世界大戦 が終結すると、学校キャンプが盛んになった。民間団体や行政組織によるキャンプ推進も盛んに行われ、1965年 (昭和 40年)には日本キャンプ協会 が設立されキャンプに関する啓蒙活動を行うようになった[ 2] 。
昭和の軍隊 における露営については、『学校教練必携. 術科之部 前篇』pp297-311にて[ 6]
キャンプは窮屈な都市生活から離れ、開放的な気分になりやすい。キャンプの中で個人的に楽しんだり、自己を磨いたりすることはそれはそれでよいのだが、その前に、次のような基本的なマナーが強調されなければならない、と徳久球雄は指摘した[ 2] 。
大自然の中で生活をすることで、人類の生活を本当に支えている巨大な仕組みに徐々に気付くにつれ、やがて人間は謙虚な思いを抱くようになるものであるが、こうした謙虚な思いをキャンプのマナーの基本に据えるべきだと徳久は指摘した[ 2] 。
組織キャンプ / 個人キャンプ・家族キャンプ[ 編集 ] ジャンボリー (=国際的に行われるボーイスカウトのキャンプ大会)の参加者たち。世界大百科事典では、キャンプには組織的なキャンプと、個人的・家庭的なキャンプがある、としている[ 2] 。
一定の目標のもとに意図的に組織された集団が、一定のプログラムのもとに野外で協同生活するものである[ 2] 。学校 が教育活動の一環として行っているキャンプ(学校キャンプ)、ボーイスカウト などが行うキャンプ(団体キャンプ)、YMCA やYWCA などのような組織が宗教的行事を盛り込んで行うキャンプ(宗教キャンプ)、学者の集団などが調査のために行うキャンプ(調査キャンプ)、スポーツ団体が行うキャンプなどもある(「スポーツ合宿」などとも)。小さいものでは数人から、大規模では数百から数千人で行われているものもある[ 2] 。年齢層は多岐にわたる。青少年を対象としている場合は、困難などを乗り越えることによって、一人一人の人間的な成長を助ける場するための活動と捉えられている。
個人あるいは家族・親類・友人・知人などが少人数集まって野外でキャンプを行うものである[ 2] 。
登山に伴う個人的なキャンプ生活が、個人キャンプのひとつの起源だとも考えられる[ 2] 。20世紀後半になると、野外生活を行う部分がそれ自体で独立してリクリエーション 」と認識されるようになり、欧米で急速にキャンプ場 の建設が進み家族でキャンプを楽しむことが普及した[ 2] 。
近年では、ただ独りで行うキャンプは特にSolo campingソロキャンプ と呼ぶようになっている。
日本の北岳 の北岳山荘の前にて。2007年 登山 やツーリング中の野外の生活。素早い設営・撤収が重視され、道具の総重量や点数などがかなり制限される。小型化・軽量化されたテントやコンロ (ストーブ )類などを使うことが多い。
都会の人工的な環境に囲まれた日常生活から離れて、大自然の中で過ごすあり方を実感することに魅力を見出した登山家やツーリングの実行者の間で行なわれていた。一般人には馴染みの薄いものであったが、やがてその魅力が次第に知られ、広く行なわれるようになった。
上述のようないきさつで、リクリエーション としてのキャンプが増えた。自然の中でゆったりと生活を送り、心の保養を行う。特に決まった形式はない。
現代人の多くは、本格的な野外生活の知識がなく、様々な設備(整地されたテント張り場、人工的な水道、コンクリート製のシンクや炊事場、人工的なトイレ 等々)があらかじめ用意してあるキャンプ場 で行うことが多い。商用電源 などが用意され、なかには調理器具やテントの貸し出しも行っているものもあり、必要な道具に関する知識もない初心者や女性でもとりあえず利用できるようになっている[ 注 2] 。キャンプがこれほどまでに大衆化したのには、人工的なキャンプ場の数が増えたことが貢献している。
キャンプは、様々な楽しみ方をされており、各人各様で千差万別である。
デイキャンプ 日中だけ行うキャンプ。例えば野外で日中に炊飯 ・調理 を協同で行う、河原でバーベキュー などを行う、など。 ツーリングキャンプ キャンプツーリングともいう。オートバイ や自転車 やカヌー でツーリング を行う途次、キャンプを行う。またはキャンプを楽しむことを目的のひとつとしたツーリング。積載量が限られるため、小型軽量のコッヘル 、小型テントやタープ などが使われる。 オートキャンプ 狭義では自動車でキャンプ場の中まで乗り入れ、車のすぐ横にテントやタープなどを張るキャンプ。オートキャンプ場は各テントサイトに駐車スペースがついて1区画になっている。あるいは車内で寝泊まりする、いわゆるキャンピングカー ・キャンピングトレーラー でのキャンプ。日本では1990年代 に大ブーム[ 7] になり、家族一緒のキャンプ(いわゆるファミリーキャンプ)が人気になった。 広義では交通手段として車を使うだけのキャンプも指す。 グランピング 「glamping グランピング」とは、glamorousとcampingの合成語で、大自然を楽しみながら高級ホテル並のサービスが受けられる施設類を指す(別名:luxury camping〈豪華キャンピング〉)。元々は英国人がアフリカでハンティングを楽しむ際、宿泊場所がなかったので家の家具をそのまま持ってきたのが始まりである。2015年頃から日本にも上陸してきた。参加者は通常のキャンプと違いテントを設営することも料理を作ることもなくテント泊を楽しめるので、キャンプ道具を持っていない層や手軽にキャンプを楽しみたい層からは人気だが、共同作業がキャンプ本来の楽しみと考えている層からは疑問視されることもある。テントはあらかじめ特定のキャンプ場に設置してある場合が多い。短い期間で開催地を変えつつ設置・開催されるものもある[ 注 3] 。テントの中にベッド、洗面所、ヒーターなどがついている[ 注 4] 。 キャンプ場の例(スコットランド ) 大混雑しているキャンプ場(スペイン北部、1994年) もともとキャンプ場 に分類があったわけではないが、「オートキャンプ場」が登場してから、それを意識した分類がされるようになった。
一般のキャンプ場 現在「オートキャンプ場」とあえて謳っていないところは、テント脇までの自動車の乗り入れはできないことが一般的である。通常はテントを張る場所から離れた場外に駐車場が設置されている。バイクについては、キャンプ場ごとに細かい規則は異なる。自転車ならばテント脇まで乗り入れができる場合もある。自動車という人工的で騒音や排気ガスを出す機械から離れられるメリットがある。 オートキャンプ場 自動車をテントサイト(テントのすぐ脇)まで乗り入れられる。テントを張る場所まで荷物を運搬するという大きな手間がほぼ省ける。 大人のキャンプ場 米国などで "Adult" と看板に表示してあるもの(すなわち、子供染みた行動を取る者を入れないキャンプ場)。マナー違反を行なうキャンパーを入れないようにした、静かに過ごせることを前面に打ち出しているもの。 道具一式。登山のキャンプで一般的な軽量・コンパクトな道具の例。左上のオレンジ色のものは、登山で使える軽量でコンパクトに折りたためるマットレス。その右下は寝袋。 キャンプのタイプによってキャンプ用具は異なってくる。
対比のために、登山のキャンプとオートキャンプでの道具一式を挙げてみる。
自力で荷物を運び挙げる登山でのキャンプ装備 (小型できわめて軽量な)テント (コンパクトで、かつ寒い場所で使える羽毛 わた などの)寝袋 (シュラフ)、キャンプ用小型マットレス(ウレタン製やエアー注入式) 小型の懐中電灯 (あるいはヘッドランプ) 小型・軽量のコッヘル (コッフェル)、小型・軽量(折りたたみ式)カトラリー 、(超)小型ポータブルストーブ (=〈超〉小型コンロ)、水筒(小型ポリタンク ) 山用のキャンプ道具は、ひとつひとつが かなり軽量でコンパクトな作りになっており、また、登山経験者は道具の総点数も極力減らす。低地のキャンプに参加する場合は、山用の道具をそのまま流用することが多い。山用のキャンプ道具は登山用品店(専門店)などで販売されている。
平地の(オート)キャンプ場などでのキャンプ装備 オートキャンプでは道具ひとつひとつが大きめ。大きなテーブルやチェアを用意する人が多い。数も多くなりがち。 平地のキャンプ場用の道具類は総じて、日常の住宅内での道具のように大きくて重い。背負って長時間持ち運ぶのは困難で、低地用の道具を登山のキャンプに流用することは基本的にはできない。低地用のキャンプ道具はホームセンター などさまざまな店舗で販売されている。また直火のできないキャンプ場では焚き火台を持ち込むケースが一般的。
共通の道具 乗り物 ^ 野外生活という行為は英語ではcampingと表現する。名詞のcamp[1] は、1番目の意味としては、軍隊 や人々のグループがテントやそれに類したものを使い泊まる場所 (place )を指している(つまりcampの1番めの意味は「キャンピングをする場所」という意味になる)。2番目の意味が、そうした場所に設置されているテントやシェルターの群である。(1. a place where an army or other group of persons or an individual is lodged in a tent or tents or other temporary means of shelter.(出典:Dictionary.com ) ^ 近傍にコンビニエンスストア やスーパー があることも多い。 ^ Circus Outdoorなど ^ 使われるテントの種類はグランピング事業者ごとにさまざまで、ユルト 、ベルテント、ティピー 、ウィグワム 、ログハウス 、キャンピングカー 、キャンピングトレーラー 、ジプシーキャラバンなどがある。テントとは別にキャビン なども用意されていてマッサージサービスを受けられるところまである。食べ物や飲み物もオーダーでき、シェフが常駐して好きな食べ物を注文できるグランピング事業者もある。電気や水道も使え、食器や家具もついている。 堤隆「遊動生活」『ビジュアル版・旧石器時代ガイドブック』新泉社〈シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊第2巻〉、2009年8月25日、68-71頁。ISBN 9784787709301 。 ウィキメディア・コモンズには、
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