この項目では、文字としてのアルファベット全般について説明しています。
アルファベット (英 :alphabet )は、表音文字 のうちの音素文字 の一種で、学術的には一つ一つの文字 が原則としてひとつの子音 もしくは母音 という音素 を表すものを指す[ 注 1] 。
起源は、古代ギリシア人 が子音 字に加えて母音 字[ 注 2] を持つギリシア文字 を作ったことが始まりである[ 注 3] 。これはフェニキア文字 (子音字のみのアブジャド に属する)を用いて作られた。
その後、古代イタリア地域諸言語 (ラテン語 や非インド・ヨーロッパ語族 を含む)、および多くのインド・ヨーロッパ語族 (インド・イラン語派 を除く)はアルファベットを採用した。
以上は学術的な定義であるが、「アルファベット」という語はそれ以外の意味で用いられることもある。以下に列挙する。
音素文字 もしくは表音文字 を指してアルファベットと呼ぶことがある。例えば、英語の「alphabet 」の用例として、日本語 の仮名 を「Japanese alphabet 」と呼ぶことがある[ 注 4] [ 1] 。日常語において「アルファベット」という単語は主にヨーロッパ系の言語 の文字を指す。 日本 においては「アルファベット」の語は、世界でもっとも広く通用している代表的なアルファベットであるラテン文字 (ローマ字)の代名詞としても定着しているが、(歴史的経緯により)「ローマ字 」の語を日本語 のラテン文字化 に限定する用法も一般的である[ 2] [ 3] [ 4] 。アルファベットを伝統的な配列で文字一覧として並べたものをいうこともある。 文字一覧はどの言語習得においても初期に学ぶことであるから、「学習 の初歩」を意味することもある[ 注 5] 。 文字体系 の類型としては、アルファベットはアブギダ やアブジャド とともに音素文字 に属する[ 注 6] 。ただし欧米 では、これら3つをまとめて「アルファベット」と呼ぶことがある。
アルファベットは、原則として、音声言語 の音素 のうち子音 と母音 とを異なる字母 で表記する。 アブジャドは、子音だけを表記し、母音は原則的に表記しない。 アブギダは、子音の字母を書くと特定の母音が伴った音節を表し、それ以外の母音が伴った音節を表す場合などは補助的な記号を付加することで表記する。 アルファベットのほとんどは、セム諸語 のための文字として中東 で誕生したアブジャドから発展したと考えられている。アブギダもアブジャドから発展したと考えられている(かつては音節文字 とアルファベットの中間段階と考えられたこともあった)。
フェニキア のアブジャド の末裔である4種の代表的な音素文字 の比較。左からラテン文字 、ギリシア文字 、元になったフェニキア文字 、ヘブライ文字 、アラビア文字 。アルファベットの起源はアブジャド である。ギリシャ人 はアルファベットを、セム文字系統のフェニキア文字 (アブジャド に属する)から作った。
アブジャド は、紀元前1700年 - 紀元前1500年頃に地中海 東部の沿岸地域で発達したと考えられている。これは北セム文字と呼ばれ、楔形文字 とヒエログリフ を組み合わせてできたものであるが、クレタ文字 やヒッタイト文字 のような類縁関係にある文字から採られたものもあるようだ。北セム文字には子音をあらわす文字しかなく、単語の中の母音は補って読まなければならなかった。紀元前1000年頃に北セム文字が、南セム文字 、カナン文字 、アラム文字 、ギリシア文字 の4つの系統に分かれたと考える学者は多い。ただし、南セム文字だけは北セム文字とは独立に発達か、両者が共通の祖先から発達したのだという説もある。南セム文字は、アラビア半島 でかつて用いられていた諸言語や、現代のエチオピア の諸言語の文字の起源である。
ギリシャ人 はアルファベットを作り、フェニキア文字 が子音字22文字だったものを、24文字(方言によってはこれより多いものもある)に増やし、母音を表す文字と子音を表す文字を区別するようにした。紀元前500年頃からは、ギリシャ文字 は左から右に書かれる規則が成立した。ギリシャ文字は、地中海地域全体に広まり、エトルリア文字 、オスク文字 、ウンブリア文字 、ラテン文字 などのもととなった。中でもラテン文字は、ローマ帝国 の言語であるラテン語 を記すための文字だったため、西ヨーロッパ で話されているすべての言語のアルファベットの基礎となった。
どんなアルファベットでも、異なる言語を話す民族によって使われていれば、それぞれ改変が加えられるものである。アルファベットの数や文字の形も異なり、文字の上下に記号をつけて、その文字が本来あらわす音とは違った音を表すこともある。例えば、「c」の下に小さな筆記体の「z」をつけた「セディーユ 」という文字は、フランス語 、ポルトガル語 、トルコ語 などではごく一般的に使われるが、英語では外来語を除いてほとんど使用されない。また、セディーユは、フランス語とポルトガル語では/s/ の音をあらわすが、トルコ語では/tʃ/ の音を表し、古いスペイン語 では/ts/ の音を表していた。
アルファベットは、1つの文字が1つの音を表すようにしようとして発展してきたものではあるが、現代アルファベットを用いる言語の中で、このような原則が厳密に守られているものはあまりない。その大きな理由は、話し言葉が時代の変遷に応じて大きく変化する傾向があるのに対して、つづり字は人工的な改変・再編がない限り滅多に変化しないからである。この傾向は大母音推移 という現象を経た英語において特に顕著である。例えば、英語で「騎士」を意味する単語のつづりが「knight 」であるにもかかわらず発音が/nait/ なのは、古い英語では「k」も「gh」も発音されていたが、現代の英語ではそれが黙字 として発音されなくなったからである。
つづり字と発音の間の違いの大きな言語では、歴史の節目でつづり字改革運動が起こることがあり、英語においては「colour 」→「color 」、「gaol 」→「jail 」等、アメリカ英語 の一部の単語にその例を見ることができる。
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主に: 各アルファベットについての簡単な説明 (2021年9月 )
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