ビタミンC (L-アスコルビン酸) は、抗壊血病因子として発見された水溶性ビタミンです (1) 。ほとんどの動物は、ブドウ糖をもとにしてビタミンCを体内で合成することができますが、ヒトやモルモット等では生合成に必要な酵素が欠損しているため、体内でビタミンCを合成することができません。そのため、野菜や果物など食品からビタミンCを摂取する必要があります。
ビタミンCは、皮膚や腱 (けん) 、軟骨などを構成するたんぱく質であるコラーゲンをつくるために必須で、欠乏するとコラーゲン合成ができず血管がもろくなり、出血しやすくなります。また、重要な抗酸化物質としても働いている他、消化管では鉄の吸収を高めます (1) (2) 。
ビタミンCが不足すると、倦怠感、疲労感、気力低下の症状が出てきます (3) 。欠乏に至ると壊血病となり、歯肉出血や皮下出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などの症状を引き起こします (4) 。
ビタミンC不足は、とくに①アルコール依存症者、②野菜や果物の摂取が少ない人、たとえば食生活に極端な偏りがある人や1人暮らしの人、ビタミンC必要性の高い高齢者など、③薬物依存症者に多く見られます (5) (6) (7) 。また喫煙者や受動喫煙者は、非喫煙者よりもビタミンCの必要性が高くなります (5) 。ただし、ビタミンCを1日あたり10 mg程度摂取していれば、欠乏症は発症しません (5) 。また、1,000 mg/日以上の摂取は意味がないことが示されています。
*ビタミンCを多く含む食品はこちらをご覧ください。
通常の食品を摂取している人で、過剰摂取による健康障害があらわれたという報告は見当たりません。健康な人がビタミンCを過剰に摂取しても、消化管からの吸収率、体内における再利用、腎臓からの未変化体の排泄により体内のビタミンCレベルは一定に維持されることから、ビタミンCは広い摂取範囲で安全と考えられています (5) 。この一方で、サプリメントなどによる過剰摂取によって、吐き気、下痢、腹痛などが生じることがあります。また、腎機能が低下している人では、尿路結石ができやすくなるため注意が必要です (5) 。
2019 (令和元) 年の国民健康・栄養調査では、通常の食品から男性で平均 91 mg/日、女性で平均 96 mg/日摂取しています (8) 。
ビタミンCの摂取の基準は、欠乏症である壊血病予防のための最小量ではなく、心臓血管系の疾病予防および有効な抗酸化作用を示す量として示されています。また、ビタミンCは通常の食事から十分な量を摂取することを基本とし、通常の食品以外の食品から1日1,000 mg以上摂取することは推奨されていません (5) 。
なお、喫煙者は非喫煙者に比べてビタミンCの必要性が高く、同様のことは受動喫煙者でも認められており、該当者は、同年代の推奨量よりも多く摂取する必要があると考えられます (5) 。ただし、喫煙者は、ビタミンCを多く摂取するという考え方よりも、まず禁煙を考えることが適切です (5) 。
各年齢別のビタミンCの食事摂取基準は以下の通りです (5) 。
| 性別 | 男性 | 女性 | ||
| 年齢等 | 推奨量 (RDA) | 目安量 (AI) | 推奨量 (RDA) | 目安量 (AI) |
| 0~5 (月) | – | 40 | – | 40 |
| 6~11 (月) | – | 40 | – | 40 |
| 1~2 (歳) | 40 | – | 40 | – |
| 3~5 (歳) | 50 | – | 50 | – |
| 6~7 (歳) | 60 | – | 60 | – |
| 8~9 (歳) | 70 | – | 70 | – |
| 10~11 (歳) | 85 | – | 85 | – |
| 12~14 (歳) | 100 | – | 100 | – |
| 15~17 (歳) | 100 | – | 100 | – |
| 18~29 (歳) | 100 | – | 100 | – |
| 30~49 (歳) | 100 | – | 100 | – |
| 50~64 (歳) | 100 | – | 100 | – |
| 65~74 (歳) | 100 | – | 100 | – |
| 75以上 (歳) | 100 | – | 100 | – |
| 妊婦 (付加量) | +10 | – | ||
| 授乳婦 (付加量) | +45 | – | ||
※1 L-アスコルビン酸 (分子量=176.12) の重量で示した。
推奨量 (RDA,recommended dietary allowance)
ある性・年齢階級に属する人々のほとんど (97~98%) が1日の必要量を充たすと推定される1日の摂取量。
目安量 (AI,adequate intake)
ある性・年齢階級に属する人々が、ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量。
(特定の集団において不足状態を示す人がほとんど観察されない量)
食品中のビタミンC含有量は、季節、輸送方法、お店においてある時間、貯蔵方法、調理方法によって変化します (2) 。また、調理時の洗浄や加熱でビタミンCの効力は失われるため、調理損失の著しいビタミンとして知られています(9) 。
主な食品のビタミンC含有量は以下の通りです (10) 。
| 食品名 | 1食あたり の重量(g) | ビタミンC(mg) | |
| 1食あたり | 100gあたり | ||
| 赤ピーマン (油炒め) | 60 | 108 | 180 |
| キウイフルーツ | 100 | 71 | 71 |
| ブロッコリー (電子レンジ) | 50 | 70 | 140 |
| いちご | 80 | 50 | 62 |
| 青ピーマン (油炒め) | 60 | 47 | 79 |
| 菜の花 (ゆで) | 80 | 44 | 55 |
| ネーブルオレンジ | 65 | 39 | 60 |
| にがうり (油炒め) | 50 | 38 | 75 |
| みかん | 100 | 33 | 33 |
| 西洋かぼちゃ (ゆで) | 100 | 32 | 32 |
| さつまいも (蒸し) | 100 | 29 | 29 |
| ブロッコリー (ゆで) | 50 | 28 | 55 |
| カリフラワー (ゆで) | 50 | 27 | 53 |
| じゃがいも (蒸し) | 100 | 11 | 11 |
| レモン | 10 | 10 | 100 |
「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用
| 食品名 | 1食あたり の重量(g) | ビタミンC(mg) | |
| 1食あたり | 100gあたり | ||
| からしめんたいこ | 25 | 19 | 76 |
| 牛レバー | 40 | 12 | 30 |
| ボンレスハム | 20 | 10 | 49 |
| 豚レバー | 40 | 8 | 20 |
| ロースハム | 20 | 5 | 25 |
「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用
ビタミンCは基準値を満たした場合に栄養機能食品として表示することができます。
栄養機能食品の表示に関する基準の詳細については下記の資料をご参照ください。
食品表示基準における栄養機能食品とは
(1) ビタミンの辞典:朝倉書店
(2) ロス 医療栄養科学大事典:西村書店
(3) 医学大辞典 第19版:南山堂
(4) 生化学辞典 第4版:東京化学同人
(5) 日本人の食事摂取基準2020年版
(6) 最新栄養学 第10版:建帛社
(7) (2020228409) 日本公衛誌. 2020;67(3);171-82.
(8) 令和元年国民健康・栄養調査報告
(9) (2017145997) ビタミン. 2017;91(2);87-112.
(10) 日本食品標準成分表2020年版 (八訂)
