2025年6月、高崎に行ってきた。群馬県は2度目、高崎は初めて。目的は移住連の「移住者と連帯する全国フォーラム2025 in 北関東」だった。コロナ禍以来5年ぶりの開催らしい。私は初参加。移住連会員じゃなくても、移民支援の仕事をしているわけじゃなくても参加していいという開かれたフォーラムだ。
1日目は群馬の森でフィールドワーク、2日目と3日目は講演と分科会という濃い3日間だった。
群馬の森は県立公園。美術館もあり、名前の通り「森」で虫もたくさんいる(蚊に刺された)。ここには強制労働で連れてこられた朝鮮人を追悼する碑があったが、ヘイト団体の抗議を受け市が撤去してしまった。追悼碑を建てる活動を始め、現在も追悼碑の記憶の継承と撤去問題に取り組み続ける団体の方が案内してくれた。最近はアプリもでき、インストールして追悼碑があった場所を写すと画面上に追悼碑が表示されるようになっている。追悼碑の話を聞くと、とても丁寧に作られたものだったことがわかる。切れ目から見ると朝鮮の方角に目を向けられるようになっていたり、座る場所があったり工夫が凝らされていたという。私は昔、碑を見ても特に何も思わず、あまり意義を理解して
いなかったのだが、消され、風化されてしまう歴史を残すとても大事なものだと気づいた。それが一団体の差別的な意見で撤去されてしまったのは暴力だと思う。

群馬の森は、戦時中は火薬工場があった場所だそうだ。


そういえば以前、茨城の親戚の家に行った時、「ここら辺も朝鮮人労働者が動員されてできた道だ」と教えられた。そういう場所が沢山あるのだと思う。何も知らずにその土地の上に立ち、○○人は出て行けなんて言う。その酷さ。
講演会では安田浩一さんの、クルド人へのヘイトスピーチ問題の話が印象的だった。もともと荻上チキSessionで聞いていたが、安田さんの話は怒りが真っすぐ伝わってくる。「「クルド人問題」ではなく「クルド人問題問題」だ」と言っていたのが忘れられない。これはクルド人が「問題」なのではなく、クルド人を「問題」にする日本の差別主義者の問題なのだ。講演内で引用されたクルド人ヘイトのツイートは見ているだけで胸が悪くなった。クルド人、特に10代が日々これを目にしているかと思うとやりきれない。移民というと言語の問題がフォーカスされるけれど、私はメンタルヘルスもだいぶ気にかかっている。
その後の分科会の、インフルエンサーによるヘイト扇動の話もショッキングだった。もともと憎悪感情のある人が影響力を利用してヘイト投稿をしているのかと思っていたが、どうも話題に乗っかって有名になろうとしているように見える。ターゲットは誰でも良いのかもしれない。次の矛先をどこに向けるのかと思うとそれも恐ろしい。
最近、仁藤夢乃さんの本を読んでいて感じた「声を上げるマイノリティへのバッシング」は外国人差別でも同じだと思った。吉田秋生の『吉祥天女』に「こうあるべきと思っていた相手が反撃すると嫌がるんだな」という趣旨の台詞があるが、本当にあらゆることにおいて当てはまる。本で対抗していきたいと思うけれど、なにせインフルエンサーのスピードがあまりに速い。時間をかけ作るのが本や新聞の良さでもあるけれど(本の種類や媒体によりスピードに違いがあるとはいえ)、追いつけていない。それに、差別反対より叩く方が「ウケる」(バズる)のだろうか、と思うと無力感を抱きそうになる。今読んでいる『ゴーイング・メインストリーム』もインセルや排外主義者がいかにネットを駆使して繋がり、具体的なヘイト行動を起こしているか書かれていて暗澹たる気持ちになるが、日本も酷い状況だ......。
差別の話を聞いていると、自分のことに目が向く。私は昔、インターネットに書かなかったとはいえ割と差別的な考え方をしていたし、日本は素晴らしいところというナショナリズムに酔っている時期があった。正直、差別的な言動もしていたと思う。とても恥ずかしい。なんだかんだ言って、自分が一番差別的なのでは.....と感じる。その償いとしても行動していくのが一番なんだと思う。
「口先だけの応援なんていりません。行動で示してください」
(「ももちゃんによる2019年度、教職員向けの講演会でのスピーチ」仁藤夢乃『当たり前の日常を手に入れるために』影書房、2023年、p.262)
仁藤夢乃さんの本にあった、Colaboとつながった女性によるスピーチで特にぐさっと胸に刺さった部分。当事者だけに負担をかけるのをやめなければいけない。マジョリティ側の問題だから。
高崎を見て回る時間はそんなになかったが、シネマテーク高崎に2回も行き、本屋ブーケで本を買った。


高崎は、道で歌い踊る若者など元気な人が多い印象だった。高崎に限らないと思うが、キャットコールをしてくる酔っ払いが最悪で、夜はちょっと怖かった。女性や移民はこうして「気をつけて」歩かなきゃいけないかと思うと腹立たしい。
色々思いが身体を駆け巡って落ち着かない。
言及した本などのリスト
移住連
https://migrants.jp/index.html
群馬の森朝鮮人追悼碑
https://note.com/commons2023/n/n227ff04988b9
『当たり前の日常を手に入れるために』
http://www.kageshobo.com/main/books/atarimaenonitijoul.html
『ゴーイング・メインストリーム』
https://sayusha.com/books/-/isbn9784865284164
本屋ブーケ
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