1月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4035
ナイス数:26
ジェンダー史10講 (岩波新書 新赤版 2010)の感想
近代科学や労働形態と相補的な形で、男女の優劣や分離が進行していった。女性は未熟で、家庭に押し込められる存在とみなされてしまったのだ。中世以前が男女平等だったということではないにせよ、上からの制度化が、男性側の勝手な基準の形成を生んだ。やや教科書的というか、10講という体裁と若干相性が悪い気もする。 小括が少ないのは淡々と事実を述べよう、学術的であろうという態度なのだろうが、ビジョンの乏しさや読みづらさにもなっている。
読了日:01月02日 著者:姫岡 とし子
インドの宗教とキリスト教 (講談社学術文庫 2842)の感想
講演をまとめたもので、何か大きな結論に向かうような構成ではなく、内容の濃さは均質に近い。キリスト者向けを意識しており、近代的なプロテスタンティズムとインドの宗教を比較している。社会や実生活への宗教の役割ではなく、信仰としての、それもそれぞれにおける理想や究極の目標といえるものを意識して書かれている。インドの献身の宗教とキリスト教とで、救済や精神の深い体験といった部分では広範に類似する。しかし、世界は神の一部か神が世界を創ったかや、現世での(他者への)善行の重要性といった部分で差がある。
読了日:01月03日 著者:ルードルフ・オットー
負債論 貨幣と暴力の5000年の感想
金貸しの悪辣と借りは返さねばならないという相矛盾するモラルの形成と、信用創造と商品という貨幣の二つの役割を背骨に、人類学の知見などから、「名誉・モラル・奴隷制・商業・軍事・暴力」と貨幣(仮想通貨・鋳貨・税・賠償・国債)を結び付け、論じている。平行して存在した慣習や文化と、帝国や商人や新大陸への冒険家の論理が合わさることで、現代のような経済的な観点が支配する、閉じた価値観が生成されたという。 それを打破し、全てに値札をつけるわけでは無い、異なる世界観を想像させてくれる人文学的な知がつまった本。
読了日:01月04日 著者:デヴィッド・グレーバー
ナショナリズムと政治意識 「右」「左」の思い込みを解く (光文社新書 1314)の感想
ほぼ国際比較・概観。経済的な左右と、社会文化的な左右という2軸で考えるように示唆。そうすればナショナリスト=保守とはならない。また、大規模な政変を経験した国家では、ナショナリズムと「左右」の相関が日本人とは逆転した様子となる。 アメリカは強烈な対立構造もあってか、このテーマにおいて極端な例となっている場合が多く、そんなアメリカから学術用語や相関関係を引用しがちな現状な日本は、それらを相対化するべきだと指摘。 著者は言葉の含意も世代や地域で変化することを考慮していたが、「権威主義」が特にあてはまると思う。
読了日:01月07日 著者:中井 遼
スピン流は科学を書き換える (インターナショナル新書)の感想
電場と磁場はコインの裏と表のようなものである。電荷をもつ物質の中で最も豊富で自由である、電子自体の自転のスピン角運動量と、(原子核に対しての)軌道角運動量とスピン角運動量が織りなすスピン軌道相互作用の二つが主に話題となっている。これまでは大きさもエネルギーも減衰までの距離も小さすぎて測定しづらかったが、その実態と重要性が徐々に明かされているという。観測と客観性に、実生活ではおよそ感じないような不確かさがある量子力学に踏み込んでいるが、極力数式ではなく図解やイメージで解説されている。それでも6章は難しかった
読了日:01月08日 著者:齊藤 英治
科学革命の構造 新版の感想
コペルニクスやニュートンやアインシュタインはパラダイムシフトの例としては有名だが、典型例ではない(少なくともクーンにとっては)ことがはっきり示されていて認識が変わった。数的規模で言えば、最小で数十人程度しか関わらないような、単元ごとの科学コミュニティにおける「模範例」こそがパラダイムである。また前提の共有や共役不可能性という概念だけでなく、実験や計器や単位の決定、データとして何を記録するかといった、実際の活動の変化もパラダイムシフトの構成要素なのだと知れた。そのような「自然観」は理論形成とも密接である。
読了日:01月15日 著者:
Harry Potter and the Philosopher's Stoneの感想
多読に。Im so excited. This book has a lot of fun, heroic and magic.
読了日:01月15日 著者:J. K. Rowling
文庫 経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策 (草思社文庫 ス 4-1)の感想
社会保障・公衆衛生の重要性を伝える。不況時に削減されがちな社会保障に関する予算は、むしろ景気を刺激する力が強く(金融などよりもよほど費用対効果が良い)、国家にとって最も大切な資源であるヒトを保護する。医療に関する長期的にみた負担は、予防に資源と資金を投入したほうが小さくなる。 緊縮の名のもとに社会保障が削られ、市場原理に任せた方がいいとされるのは、データに基づいておらず、イデオロギーが優先された結果でしかないという。
読了日:01月20日 著者:デヴィッド・スタックラー,サンジェイ・バス
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策の感想
様々なバイアスが存在すること、スキーマ(思考の枠組みや前提)は人によって異なること、そしてそれらがあまり意識されていないことを強調する。「メタ認知」という単語を用いて、話し相手などの関わる相手の意図を汲み取ることを推奨。 為になったのは理由もセットで説明しないと説得力が無いという所と、忖度やルールは目的や終着点を忘れて遵守するべきではないというくだり。 軽く読めるので、これから読書習慣を始めようという人の一冊目としても適していそう。
読了日:01月25日 著者:今井 むつみ
呼吸の科学 いのちを支える驚きのメカニズム (ブルーバックス 2184)の感想
具体的な数値が豊富で、定量的な観点を大切にしていることが伝わって来たし、そのおかげで想像しやすくなっている部分もあった。解剖学的な見地からの説明も多く、運動と呼吸の関係を中心に据えた「呼吸の科学」。
読了日:01月26日 著者:石田 浩司
科学で宗教が解明できるか: 進化生物学・認知科学に基づく宗教理論の誕生の感想
進化生物学への知識の正確さがそこらの勉強不足の哲学者とは隔絶したものであることが短い記述からも伺えて、それだけでも信用足る本に思えた。主に北米の宗教学を横断し、研究手法や学問への向き合い方を整理した内容であり、認知科学などと特定の宗教を掛け合わせた具体的で実地的な研究に関しては参考書籍・論文に譲っている。宗教と科学は敵対するとは限らず、強い反宗教はイデオロギー的であり、また神学に偏った宗教学も権威主義的で政治的になるという。中庸か使い分けを示唆するとも言える。著者の立場が明確な方が読みやすいのではと思った
読了日:01月29日 著者:藤井 修平
写真論――距離・他者・歴史 (中公選書 123)の感想
写真に関する緻密で社会科学的な議論ではなく、10章からなる散文。各章は特定の人物とその人物の写真にまつわるエピソードを軸に、著者の写真観で彩られた文章で構成される。登場する人々はその時その場所を観察し、感応しているが、その相似のように、本書全体で、著者は写真家と社会(構造)や写真に関するメタファーを観察し、詳述している。 写真撮影だけでなく著者に寄り添って読む必要があるが、写真を通じた世界観が自分の中で整理されるとともに、何かランク付けのようなものが行われた。
読了日:01月31日 著者:港 千尋
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