GOURMET
2024.06.30
ミカミ リミテッド 50|見城徹が断言!「こんな鮨店は、世の中のどこにもない」
戦う男は、常に孤独だ。その道を突き進み、頂を極めれば他者からの憧憬や尊敬を集めることもあるが、そこに胡坐(あぐら)をかくことは決してない。戦う人生に必要なのは、他者への想像力と自分自身を静観する目を持ち、圧倒的努力を重ねること、と言う見城徹が「こんな鮨店は、世の中のどこにもない」と断言するのが、大阪・北堀江の会員制鮨店『mikami limited 50』だ。【特集 ゲーテイスト2024】

見城徹が驚愕した会員制の鮨
初めて店を訪れた日の感想は見城の755でも熱く語られているが、店主・三上雅博氏の命を賭した圧巻の仕事に、畏怖にも似た感情を抱いたという。
「真っ暗闇の中で10メートル先の針の穴に糸を通すような命を削った緻密な計算と想像力の鮨」
その濃密な余韻は、翌日も消えるどころかいっさい薄れることなく、見城の心に刻まれた。「編集者になる運命のもとに生まれてきた」と見城がその熱狂人生を語るように、三上氏もまた「自分は鮨職人になるために生まれてきた」と言う。
寝ても覚めても鮨のことが頭から離れることはなく、身を削りながら仕事と向き合う日々。
「自分の都合で仕事をしない」というポリシーを持ち、常に魚を生かし、お客の心を感動で震わせるために何が必要かを考えている。日によって何種ものシャリを使い分け、魚は一定の温度を保つために水道水に当てることは絶対にしない。夜を徹した仕込みも室内を冷房で極限まで冷やし、自分は夏場でもダウンを着て作業をする。見城に「狂気の鮨」と言わしめるゆえんは、徹底的な自己犠牲の仕事のうえに成り立っている。

「鮨でそんな大げさなと言われたとしても、三上の握りには他の追随を許さないクレイジーさがある。僕はもともとイカが好きではなくて、ウチのなら食べていただけますから、となんの根拠もなく言われることも苦手。けれど、三上の握りは自分が知るイカという概念を軽々と超えてきた。
『やま幸』の鮪は1貫で赤身、中トロ、大トロのあらゆる部位を味わえるように重ねて握っていて、水分を抜く量を見極めて木の葉の形状に見立てたサヨリのかんぬきには、思わず言葉を失った。この狂気を目の当たりにして、自分は生きて帰ることができるのかとさえ思った。映画『ザ・メニュー』を思い出したよ」と見城。




握り手と食べ手のすさまじい“血闘”。それは肉体から、心から、血が吹きだすような思いのもとに熱狂的に仕事と向き合ってきた者同士でしか持ち得ない魂がぶつかり合った瞬間だった。
「食材と時間と手間をかけすぎているから三上の鮨には値段のつけようがない。だから、その魂の仕事を支えたいと願う人たちによって会員制というシステムで営業している。とてもありがたいことに、三上が『見城さんは名誉会員です』と言ってくれて涙が出そうになったよ。死と官能を如実に味わわせてくれる稀代の職人と日本の食の未来に天光が射すと、僕は心の底から信じています」
mikami limited 50|大阪・北堀江
芸術を超えた職人の仕事に耽溺する極上の鮨店
大阪の鮨店でその頭角を現した三上雅博氏。その類まれなる才能に惚れこんだ会員の思いにこたえるよう、日々技を磨き続ける。鮪に始まり、鮪で終わるコースはまさに圧巻のひと言。
1貫目は毎日継ぎ足し、火入れしながら使っている醤油で漬けにした鮪の各部位を重ね、鮪のためだけに炊いたシャリで提供。脂の甘味と旨味が口の中でグラデーションのように溶ける感覚に陶然とする。“世界の三上”を確信する握りを味わうには、会員と同伴できる奇跡を願うのみ。

ミカミ リミテッド 50
住所・TEL:非公開
料金: ¥50,000~
この記事はGOETHE 2024年7月号「総力特集:恍惚レストラン ゲーテイスト2024」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら
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2024年7月号掲載
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TEXT=小寺慶子
PHOTOGRAPH=福森クニヒロ

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