前回に続いて今回もスーパーヘビー級の内容となり、感想の組み立ても悩ましかったのですが、先にざっくり総評に触れておくと、部分部分良いところはあったのですが、全体としてはさすがに台詞に頼りすぎた印象が強く、折り返し地点でここまでの作品の主題を総ざらえしたいが為に、
できればもう少し刈り込んで、“ここ”というポイントの鋭さをこそ重視して欲しかったなと……そこはそこで存在するのですが、それ以外にも手を伸ばしすぎて頭でっかちになり、研ぎ澄まされた日本刀の代わりに、のっぺりした極厚の鉄板が出てきたような気持ち。
確かにそれで殴れるけど、“ここ”という切れ味には欠け、香村さんは基本的には、“ここ”に向けて真っ直ぐに線を引くのが得意なタイプなのですが、今回に関してはその線が、あっちにもこっちにもとバラバラに伸びてしまった感触の強い、前半戦のラストでありました(でまあ、散らばった線がどれもこれもマッキー極太レベル)。
OP無しの変則構成となり、ひとまず、はぴぱれに撤収したショウマと絆斗だが、塩谷殺しの真相と、ショウマを苦しめ続けている己の不甲斐なさに打ちのめされる絆斗、画面手前で呆然と座り込みながら、こぼれる涙を止めようともしないメンタル状態の表現がえぐい……!
ショウマが幸果に連絡を取っている間に絆斗は姿を消してしまい、自責の念にかられ呆然と街を彷徨う内にチンピラにからまれてゴミ捨て場チャレンジの実績を解除すると、かつて師匠と過ごした事務所を訪れ……ポケットサイズの師匠プレート、やっぱり持ってたぁぁぁぁぁぁぁ!!
絶望の底にある絆斗は、これまでの己の歩み、そして自分自身の存在さえ否定して壁に頭を打ち付け続け、とにかく絆斗の精神状態の描き方が容赦ないですが、それを止めようとしたショウマを突き飛ばす。
「おまえグラニュートのくせに弱った俺なんかに、負けてんじゃねえよ!! おまえがそんな弱ってんの、全部俺のせいじゃねぇか!!」
「……絆斗……」
「……俺なんかほっとけよ……! ……おまえは全っ然悪くないのに、理不尽にキレておまえ避けるような奴なんだよ! もうほっといてくれよ……」
自暴自棄に慟哭する絆斗だが、伸ばしたショウマの手が届いた事で窓からはうっすらと明るい光が射し込み……その頃、デンテ洞穴は幸果社長によって美しく整理整頓されていた。
・住む部屋があなたを映す鏡
・「いつか使う」は使わない
・今踏んだのはあなたの怠惰
なにやら本筋と関係ないところで深い精神ダメージを受けましたが、
・拾う愚行より、捨てる英断
・床の面積=幸せの面積
・部屋の掃除は心の掃除
です!!
「ハンティは長らくショウマを支えてくれておったからのう……後はまあ、ストマックの者としての、お詫びじゃ」
デンテは恐らく絆斗用のドライバーを徹夜で作り上げており、どの程度まで釣り合うのかさておいて、デンテの姿勢と処遇は、この後、ショウマと絆斗のやり取りに繋がっていく事に。
絆斗を陽光の下に連れ出したショウマは、屋台で買ったチョコフラッペを差し出し、はぴぱれ流のやり方で「アイスは心も体も元気にしてくれる」と前向きに接するが、
「多分フラッペはアイスじゃねぇ」
……実際のところ、なんなのでしょう。
なんとなく見た目の想像はつくけど落ち着いて考えると食べた(飲んだ)事が無い気がしてきたチョコフラッペについての謎が浮上する中、吐き出すものは吐き出したが、まだやさぐれ気味というかショウマとの距離を測りかねている絆斗に対し、隣に腰掛けるショウマ、近い、近いな……(笑)
微妙に座る位置をずらしつつも、心遣いはわかるので離れきれない絆斗も、いい味を出していると共に、
「今度からそうするね」
「……そうしろ」
と「今度」を受け入れる姿勢は、徐々に雪解けの構え。
チョコフラッペを口にして相好を崩すショウマの姿に、絆斗の表情も少し和らぐと、ショウマは言葉を選びながら絆斗を説得。
「……絆斗のせいじゃないよ。…………絆斗は被害者でしかない。ただ利用されただけ」
「……でも……利用されるってのも……」
「うん。自分のせいってどうしても思うの。わかるよ。……どんなに違うって言われても……心から離れない。……後悔してる。……あの時……俺があんなことしなかったらって。だからこそ、悲しいこと繰り返さないように…………前に進むしかないって思う。……そうするしか……償えないって思うから」
作品の主題として「犯罪(被害)」があり、その直接の被害者、また騙されて利用されてしまった者の立場に寄り添い、自責の念に押し潰されそうになる事に理解を示すと同時に、人は誰しも正しい事ばかりを選び続けられないから、後悔があればこそ立ち上がって前に進むしかないと説いて、例え間違ってしまっても「本当にそれが駄目だと思ったらやり直せる筈」が、繰り返されてきた「どうする?」の問いかけ・コメルの行動(と推測されているもの)・デンテの現在の在り方、と繋げられて作品の太い軸を示すのですが、あまりにも懇切丁寧に台詞にしてしまった感。
重要な部分である事はわかりますし、ショウマと絆斗がじっくり言葉をかわす事そのものにも意味を持たせてはいるのですが、それを考慮しても台詞の質量が重すぎて、物語という翼を押し潰してしまった印象になります。
個人的にはもう少し、一瞬の切れ味による飛躍が描かれる方が、好み。
「…………そうだな」
絆斗はショウマの横に並んで前を向き始め、一様に近しい人の死を背負っている今作ライダーですが、死者は何も語らないからこそ生きている者が自分で立ち上がって進むしかない、というのは一貫しているところで、それについて先行しているショウマが、闇の底から絆斗を引き上げた構造であり。
一方、両手を手袋で覆った酸賀は自らの体の状態を分析しており、酸賀にとっても自らの変身は、かなり捨て身であった事を窺わせます。
「ご主人様、これは?」
「ん……最高に強い生物を作る研究。何があっても死なない、誰よりも強く長く生きる命……」
カチコミに来たラキアにビターガヴをけしかけた酸賀は、研究データをメモリに移して場を離脱し、詰め込みすぎの弊害として今回、“場面移動における時間の経過”をスムーズにする為の繋ぎの場面不足も気になったところで、シーン変わるといきなりショウマと絆斗に遭遇しているのは、ままあるとはいえ場面転換のリズムを整えられませんでした。
「君には俺の技術が必要。わかってるでしょ? ほら、行こ?」
「断る。……確かにあんたには助けられた。でも、もう目の前の誘惑には負けねぇ。たとえどんなに強くなれるとしても、金輪際、二度と! あんたには、絶対頼らねぇ!」
絆斗の拒絶を受けた酸賀、杖を投げ捨て眼鏡を外すフォームチェンジ。
「ここで諦めるわけにはいかないんだよなぁ……。何人もの実験台を経て、絆斗くん、やーっと君に、出会えたんだから。――へーんしん」
酸賀がベイクドすると、ショウマは胃もたれの悪化覚悟でケーキング。酸賀の標的にして戦闘力を持たない絆斗を逃がす為にキャンディバイクを召喚し、絆斗、多分、劇中初バイク。
幸い、「俺は……免許持ってないんで……自転車じゃないと駄目なんだよ……もう俺なんかほっといてくれよ……!」とならずに済んだ絆斗は、デンテ洞穴に駆け込むと、完成直後のニエルブドライバー@海賊版と幸果の用意していたグミの袋を手に戦場へと舞い戻る(ここも移動が急すぎてリズムの悪いところ)が、格好良く変身……出来なかった。
ドライバーのコピーと改良には成功したデンテだが、人工プリン眷属は再現できず、ドライバーを一晩で作り上げるだけでも充分以上ではありますが、何から何まで作ってしまう万能博士ポジションにせずに穴を作ったのは、都合の良さを多少はやわらげるクッションになって良かったところ。
「もういいって絆斗くん、俺と行こ? ね?」
個体に合わせた調整なども考えると、ここまで出来上がった素材を逃したくはないのでしょうが、もはや絆斗への執着そのものが異常な気配を帯びる酸賀ヴはケーキングを地面に転がして、変身の解けたショウマは気絶。
「絆斗くんは、最強生物を作るいしづえとなるの!」
「…………なにが……最強、生物だぁぁぁ!! そんなもんの為にぃぃ! うぁぁぁ!!」
絆斗は生身のまま繰り返し酸賀ヴに立ち向かっていき……塩谷事務所の時もでしたが、絆斗が最大限に絶叫すると台詞が非常に聞き取りづらく、ここは感情重視で絶叫している事さえ伝われば良いという意図だったのかもですが、語り偏重のエピソード内容としては、台詞を聞き取りたくなる、ので、ちょっと噛み合わせが悪かったなと。
「そういうのやめよう絆斗くん。みっともないから」
酸賀ヴは軽々と絆斗を殴り倒して力を誇示し、前回今回と、実験素材を丁重に扱いつつも蹂躙する、ボスキャラムーヴが光ります。
「……そんなもんの為にっ! ……師匠の命をぉ! ゴミみたいに! 奪いやがってぇぇ……! ……ニエルブの野郎と、手ぇ組んで! 勝手にショウマの偽物作って! 人間犠牲にして! 俺は! 許さねぇ!!」
何度たたき伏せられても食らいつく絆斗が必死の頭突きを放つのは、ステゴロ勝負最後の切り札感があって良かったですが、一発食らった後、二発目を当然のようにあっさりを受け止める酸賀ヴの「はい」がまた大変良かったです(笑)
「……泣いて、後悔してる場合じゃねぇ……俺は……おまえにぃ! これ以上やべぇ真似させるわけには、いかねぇんだよぉ!!」
ショウマの言葉を受け止め、前に進む事で償うと決めた絆斗は命を振り絞るように咆哮し、私的な復讐を最大の動力源としていた絆斗――ただし、「人命」を優先し続ける事で一線を踏み越えずにいたのはしっかりと描写――が、心ならずも己が手を貸していた災禍の拡大を食い止める為にこそ立つ事で、これまでよりもオープンな姿勢に心理的なギアチェンジを見せるのは鮮やかだっただけに、絶叫はもう少しクリアーにしても良かったかな、とは。
……まあこれはIFでしかないので、台詞を鮮明に聞かせると、それはそれで物足りなかった可能性はありますが。
絆斗に迫る酸賀ヴパンチを、目を覚ましたショウマが体当たりで食い止めると、生身の二人は代わる代わる酸賀ヴへと組み付き、渾身のWパンチ。
「わかったわかった! ハイ、終了!」
酸賀ヴは当然揺らぎもせず、アッパーカットで綺麗に宙を舞ったショウマを絆斗が助けると、続けざまの酸賀ヴの蹴りはショウマがブロックし、抵抗は続けるも、為す術も無いかと思われた二人だがその時――ショウマのガヴから、チョコフラッペの眷属が誕生する。
「絆斗、これ使って!」
「…………ありがとな」
出会いと衝突は再び繋がる力となり、ストローぐるぐる回した眷属を絆斗はデンテドライバーにセット。
チョコフラッペ×デンテドライバーにより氷に包まれた絆斗の姿は、金色ベースに紅の入ったフラッペヴァレンへと変身し、流線型のアーマーなど、どこかF1マシン的ですが……背中に、ストロー生えてる(笑)
「じゃあ俺とどっちが強いか検証して、勝った方の技術で次のステップに進むってのはどう!」
「俺が勝って、終わらせんだよ」
土壇場でのヴァレン新生にむしろテンションの上がる酸賀ヴに強烈な右ストレートが炸裂する一方、酸賀の研究室の奥へと踏み込んだヴラムは、乳母車やベビーベッド、ぬいぐるみや子供用の遊具が並ぶ部屋で、ビターショウマの培養槽を発見。
「なんて光景だ……」
「やめろ! ここは、ご主人様の、大事な……」
「それを潰しに来たんだ」
プリンアローがコーラガヴごと培養槽を貫くとクローンショウマたちはまとめて消し飛び、溢れ出した培養液によってヴラムの足下に流されてきたのは、小さな、赤ん坊用の靴下。
部屋の遊具も含めて、培養途中のビターショウマ用のものとしていびつさを示しているのかなと思っていたのですが、よく考えてみるとビターショウマを取り出すのは恐らく、一定段階まで成長してからなわけで……。
「……なんだこれは」
靴下を拾って呟いたラキアが部屋を後にすると、カメラは床に転がる一葉の写真に向けられ、そこに映っていたのは、にこやかに赤ん坊を抱く酸賀の姿……て、えええ。
予想外の爆弾が炸裂し、「やめろ! ここは、ご主人様の、大事な……」の意味するところと捉え方が恐らく、コーラガヴとヴラム(そして視聴者)の間で違っているというのは、香村さんらしい仕掛け。
……クローンショウマに関しては、ここで全ての個体が滅びたとは限りませんが、役割としては使い切った感じでしょうか。生き残っていてもクローンのお約束として寿命が短いとかありそうですが、出しても更に話が重苦しくなるだけでしょうし、お役御免がキリがよさそう。
今回ラストの顛末を見ると、ニエルブが嫌がらせの手駒として出してくる可能性はあるかもですが。
「やあアカガヴ。今度のこいつには、右手にドリルと、鼻からスパゲティが飛び出す機能を付けてみたよ(眼鏡クイッ)」
「ニエルブ兄さん……いや、ニエルブ!!」
「どうする? 君が望むなら、次は鼻からラーメンにしてみるかい?(眼鏡クイッ)」
とんだ嫌がらせはさておき、フラッペヴァレンと酸賀ヴの死闘は続き、ヴァレンは手足の先に氷を纏っての攻撃で酸賀ヴを苦しめる。
「絆斗くぅん……強くなってくれて俺は嬉しいよ! テンション上がんないもんねぇ!」
図書館の書棚を遮蔽物にしながらの銃撃戦は今作らしい味付けで、高出力のチョコフラッペバスターが酸賀ヴに炸裂。
「ねえ絆斗くん、やっぱ君には人間を越えられる素質があるよ。俺と一緒に更なる高みへ行こう?」
「俺はそっちへは行かねぇ。強くなる為におまえみたいになるくらいなら、俺は、俺のまま! 弱い人間のまま強くなってやる!」
酸賀の有り様を否定するヴァレンですが、ヴァレンになっている時点で「もはや純粋な人間ではない」ので、目的の為に他の全てを踏み付けにする“精神的な怪物に堕ちる”=“そっち”というニュアンスはわかるものの、狙っていたであろう程の劇的さは感じられず。
「そんな事言わないでさぁ!!」
どこまでも我が道を貫き続ける酸賀ヴだが、フラッペヴァレン必殺の飛び蹴り・クリムゾンチョコフラッペが直撃し……絶対、背中のストローをビームサーベルみたいに使ってくれると信じていたのに……!!
「……絆斗くん、絆斗くんて……!」
必殺技の打ち合いに敗れながらも、ヴァレンの背に銃口を向け絆斗に執着し続ける酸賀ヴ――今回ラストまで見た後で、台詞起こしの為に見返していた際、酸賀の息子(?)の名前が出来過ぎな偶然で「はんと」だったら、凄く嫌だな……と思わされた場面――だが、全身が急速凍結。
「――じゃあな」
“人間同士”として語らっていた頃の記憶を振り切るように放たれた、振り向きざまの全力ヴァレンパンチを受けた酸賀ヴは宙を舞い、
自己改造済みなので半分人外とはいっても、実質的な人間殺しは思い切りましたが、今作の主題の一つとして、ショウマにもラキアにも既に同族殺しの十字架は背負わせているわけなので、ここで絆斗にも同じものを背負わせるのは、納得のいくバランス。
そして酸賀の悪行が前回だいぶどぎつく表現されたのと、決戦時の絆斗が“私”よりも“公”に寄った行動原理で動いているのは、酸賀の背景の補強と同時に、この決着におけるヴァレンの行為を視聴者に飲み込んでもらう為に必要だったのだな、と。
邪悪な人間をヒーローが私的に裁き、いわば“法治を越えるヒーロー”を描いてしまう事については避ける傾向が強く、結果として時に“その問題自体が存在しないかのように振る舞う”別の問題を生み出してしまう事もあったシリーズですが、“法治を踏み越える事で自覚的に十字架を背負うヒーロー”がガヴによる同族殺しの延長線上において描かれ、その十字架はまた、別の十字架と釣り合いを取る為のものでもある以上、絆斗の受難の日々はまだまだ続きそうな気配もありますが、いずれ絆斗も、もう少し幸せのサイクルが感じられる輪に入れると良いなと思うところです。
ただ、今の絆斗には、その重みを一緒に背負っていける友はあり、絆斗を背負ったショウマが土手の上(OP映像の場所?)を歩いて行く場面で流れ出す主題歌。
「あのさ……このままぬるっと行ってもいいんだけど……一応、改めて……」
「……ん?」
「……俺らの間には、色々ある。多分、これからも。でも……やっぱり俺、おまえの事、好きだわ。……これからもよろしくな」
「……うん、俺もよろしく」
ショウマのお腹が鳴ると、こんな事もあろうかとポケットに突っ込んでいたグミの袋を絆斗が取り出すのは今作らしい雪解けの表現となり、色々あったし今後も色々あるだろうけど、グラニュートとか人間とかと関係なく「人として好き」というのは、この数話、もつれにもつれてきた両者の関係の着地点として、気持ちよく収まりました。
またこれは、母親以外から愛情を向けられる事の極めて少なかったショウマにとっては“救いの言葉”でもあると思われ、此の世に「存在しなくていい」から、此の世に「存在していてもいい」へと、互いが補い合うのも、綺麗な着地。
……ただ最初に書いたように、全体としては一点の切れ味ではなく満遍なく鉄板で叩き続ける組み立てになってしまった事もあり、ヒーロー物としての爽快感は薄まってしまったなと。
まあ既に、グラニュート側の「人間性」もたっぷり描いているので爽快感は出にくい構造といえますが、《昭和ライダー》への意識濃いめの『仮面ライダー(令和)』を描いていった先で《平成ライダー》が視野に入ってくると、怪人の「人間性」に踏み込んだ『仮面ライダーファイズ』に、どうしてもぶつかっていく事になるのだろうかと思うところ(武部さんの思い入れもありそうで)。
そして、存在する事の罪、すなわち「原罪」との相対は『ファイズ』の主要なテーマであり、その上で「僕らの“家”はどこにあるのだろう?」が物語の一つの軸になっていたのですが(全て私解釈なので、話6割ぐらいで受け止めて下さい)、今回、「原罪」の要素が強調された事により、今作は『ファイズ』とがっつり組み合ってその先の光景を見ようとする意識もあるのかな、と気になってきました。
とはいえ、『ファイズ』のオルフェノク――人間としての死を乗り越えてしまった存在――と、今作のグラニュート――別世界の知的生命体――の位置づけは大きく違いますし、『ファイズ』との関連性を抜きにしても、その点は今作の落とし穴にならないか若干の心配はしているのですが、飛び越えていってほしいところ。
「んーーー! うま!」
ショウマがグミを頬張る一方……傷だらけで路地裏に座り込む酸賀、一応、まだ、生きてた。
「……やっぱり人間て生き物は……弱いねぇ」
研究室に流れていたメロディ(クラシックの子守歌の類?)を口ずさんでいた酸賀の言葉に、笑顔で赤ん坊を抱き、誰かに声をかける酸賀の過去が重ねられて、どうも酸賀には子供が居たが、幼少の内に死亡した事が原因で道を踏み外した……? らしき事が示唆されて、酸賀の目的が「最強の生物」というグラップラー脳がいまいちピントが合わない感じったのですが、「何があっても死なない、誰よりも強く長く生きる命」の方にこそ本願があったとするなら、納得度が高まります。
……つまり、(毎度お馴染みジニアス黒田を引用しようとして控える)。
ただそれは決して、酸賀の悪行の免罪符にはならないものとして仄めかしに留まり、酸賀の内奥に隠された秘密(を象徴する部屋)に関しては、その意味を理解できないラキアだけが目にしている、のがまた凶悪。
酸賀研造というのは恐らく、「グラニュートを倒したかった人」なのではなく「グラニュートという“目標”が出来てしまった人」だったのだろうな、というのは巧い落としどころとなりました。
「――本当に。……まあ、後は僕に任せてよ」
いつの間にか目を閉じた酸賀の傍らにはニエルブが姿を見せると、糸のように目を細めて、つづく。
まだまだ使える駒だとばかり思っていた酸賀が一気の退場(?)となったのは驚きでしたが、こちらもニエルブに再改造を受けた酸賀ニュートとして再登場させようと思えばさせられそうではあり……どう転がるかはわかりませんが、ひとまず酸賀の仕事は終わって、研究データは恐らくニエルブの手に移る事に。
メタ的には、ベイクマグナムを使う係が必要そうではありますが……酸賀イザーとして甦るも良し、甦らなくても良し、腹の底の見えない怪人物から人畜非道の狂人ぶりまでを同じテンションで見せつけてくれて、良い悪役でありました。
また、瀕死のところをニエルブがトドメを刺すような手ぬるさには走らず、あくまでも絆斗の手によって眠らせたのは、良かったところ。
個人的には、今作として相対する“悪”の本丸がストマック社に戻ってくれたのは安心したところで、一躍ラスボスダービーの筆頭に躍り出る事になったニエルブには、酸賀に負けない弾けぶりを期待したいです。
……あ、ランゴ兄さんは前回の一件で、周回遅れまで順位を落としました。ハイ。
割と長々と、ビターガヴ&酸賀編、といった作りになったのは玩具展開との絡みが大きそうでありましたが、最終的にニエルブドライバーがコピーされて、それに対応した新たなゴチゾウが強化ヴァレンを誕生させる、というドライバーの取り回し方は面白かったです。
次回――久方ぶりにストマック家に焦点が戻って、ジープ、まさかの形で再登場。
この先も魑魅魍魎が息を潜めていそうとはいえ、真っ暗なトンネルを一つ抜けた感はありますので、少し空気が変わる事は期待。
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