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サイエンス

運動をうつ病治療の「第1の選択肢」にすべきとの研究結果、うつ病には筋トレが最適とのエビデンスも


新しく行われた大規模な研究により、メンタルヘルスの治療法としては一見すると地味な「運動」が既存の治療法の1.5倍も効果的だということが示されました。

Effectiveness of physical activity interventions for improving depression, anxiety and distress: an overview of systematic reviews | British Journal of Sports Medicine
http://dx.doi.org/10.1136/bjsports-2022-106195


Huge New Study Shows Why Exercise Should Be The First Choice in Treating Depression : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/huge-new-study-shows-why-exercise-should-be-the-first-choice-in-treating-depression


身体活動がメンタルヘルスの改善に役立つことはよく知られています。しかし、エビデンスがあるにもかかわらず、身体活動が治療の第1の選択肢として広く採用されているとは言えません」と指摘するのは、南オーストラリア大学の臨床運動生理学者であるBen Singh氏です。

このような問題の背景には、運動やメンタルヘルスに関するこれまでの研究の多くが、運動の種類や強度、人口統計など、非常に多様なデータを扱ったものであるため、医療現場で患者の治療に当たる臨床医に運動の有効性が伝わりにくいことがあると考えられます。


そこでSingh氏らの研究チームは、さまざまな種類の運動が成人のうつ病、不安症、心理的な苦痛にどのような影響を与えるかを評価するために、「アンブレラ・レビュー」という手法を用いた研究を実施しました。アンブレラ・レビューとは、複数の研究を精査するシステマティック・レビューをさらに分析にかけるというもので、現代の医学で利用できる最高レベルのエビデンスのひとつとされています。

研究チームが12の医療系データベースを使用し、2022年1月1日までに発表された運動とメンタルヘルスの研究を検索したところ、合計12万8119人の被験者が参加した1039件の試験を含む97件のシステマティック・レビューが見つかりました。

そして、これらの研究をアンブレラ・レビューで分析した結果、運動はトークセラピーや薬物療法に比べて、うつ病や不安症、心理的な苦痛の症状を改善する効果が1.5倍も高いことが分かったとのこと。


また、ウォーキングなどの有酸素運動や、スクワットや腕立て伏せといったレジスタンス運動ピラティス、ヨガなど、あらゆる種類の身体活動や運動が有効性を示すことも確認されました。特に、ヨガのように呼吸や瞑想(めいそう)を取り入れたマインド・ボディエクササイズ(心身エクササイズ)は不安症の軽減に最も有益で、筋力トレーニングのようなレジスタンス運動はうつ病に最も効果的だったとのこと。

運動とその効果の傾向について、Singh氏は「強度の高い運動はうつ病と不安症を大きく改善する一方、長時間の運動は短時間や中時間の運動に比べて、効果が小さくなりました」と説明しています。


長時間の運動の方が効果が低いのは少し意外に感じられるかもしれませんが、研究チームは運動が長時間過ぎると患者の負担になってしまうため、運動のメリットが小さくなるのではないかと指摘しています。

今回の研究は、従来の投薬やセラピーを否定するものではなく、メンタルヘルスの問題を治療する上では運動が重要だということを改めて強調するものです。研究チームは論文の中で、「身体活動は一般集団、精神疾患と診断された人、慢性疾患を持つ人など、幅広い成人のグループにおいて、うつ病、不安障害、精神的な苦痛の症状の改善に有益であることが分かっています。従って、身体活動はこれらの症状のコントロールにおける主軸となるアプローチであるべきです」と結論付けました。

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