11月28日の債券市場で、新発2年物国債の流通利回りがマイナス0・005%と利付国債としては初めてのマイナス利回りとなった。これは何を意味するのだろうか。
日経新聞には、「財務省にとっては、金利を受け取って借金することができることになる」と書かれていたが、これは不正確である。財務省にとってのコストは、流通利回りではなく発行利回りだからだ。
具体的に見れば、前述のマイナス金利がついたその少し前、2年利付国債(第346回)が発行されている。発行額2・5兆円に対して11・9兆円の応募があり、競争入札の結果、発行利回りは0・012%だった。その後の取引で、2年物国債を購入したい金融機関が額面の100円以上の高値で購入した。結果として、償還まで保有すると購入価格と額面との差額がマイナス(償還損)になって、マイナスの流通利回りになった。
なぜ金融機関が額面以上の高値で購入したかといえば、2年物国債が金融機関にとって手軽な貯蓄手段だからだ。
2年という短い期間なので高齢者にも人気がある。今回の2年物国債について、発行額2・5兆円に対して、その4・7倍になる11・9兆円の入札があったと先ほど書いたが、その入札で入手できなかった金融機関は顧客用の2年物国債をどうしても入手したかった。そこで、入札後に、流通市場において高値で取り引きしたというわけだ。
ということは、そうした金融機関や投資家にとって、国の財政破綻は眼中にないはずである。1~2ヵ月前には、「消費増税を先延ばしにすると日本売りで大暴落が起きる」と言っていた人が、消費増税を煽っていた。彼らの予測は見事に外れたわけだ。
この期に及んで、まだ財政破綻がありうると言う人もいるが、それも「いつか起こるかも知れない」というレベルである。「いつか起こるかも」と言うのは簡単だ。隕石が地球に衝突して恐竜を絶滅させたという説もあるが、「将来に隕石が衝突して人類を絶滅させるかも知れない」という話も否定できないためだ。もっとも、金融市場では、いろいろと国家破綻を予測する数字もあるが、「今後100年以内に財政破綻が起こる」というものはない。
それでも、数年も経たない内に財政破綻すると言うのであれば、金融市場で確実に儲けられるので、是非実行したらいい。100年以内に財政破綻しないというのが金融市場の見方であるので、財政破綻論者の中で、それが間違っていると断言できるなら、金融市場を出し抜いて儲けることができる。財政破綻を言う人の中には、これまで10年以上も同じ主張をし続けている人もいる。その人の言うとおりにしていたら、国家の財政破綻ではなく、言うとおりにした人が破綻しているに違いない。
財政破綻を言う人たちは、実は自分で考えていない。財務省官僚から「レク」してもらったことを、さも自分の意見のように言っていたエセ・エリートだ。財政再建というちょっとカッコイイ話で、目先の増税をイヤだという庶民を見下して、しかも自分は増税なんかは大丈夫というミエを張れる。しかも、財政というわかりにくい分野で知ったかぶりができるので、知識人っぽく見えるというのもいい。
でも、今回の解散で、財務省のそうした「レク」の実態が明らかになった。官僚の走狗となったマスコミ、学者、エコノミストは格好悪い。
『週刊現代』2014年12月20日号より
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