国際政治学の古典に学ぶ現代世界の構図
「敵を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」
あまりにも有名な「孫氏の兵法」の言葉である。孫氏と言えば、紀元前500年の人物である。2500年の間に様々な事柄が変わったはずだ。だが、人間が人間と対峙するときに忘れてはならない事柄の本質を言い表している。
他方、この言葉が繰り返し強調されるのは、忘れられがちだからでもある。2022年2月のロシアの全面侵攻が国際法違反であることについては、国連総会で141カ国の賛同を得た広範な理解がある。プーチン大統領は、ICC(国際刑事裁判所)から訴追されており、多々の戦争犯罪の疑いのある行為に関与している。
PHOTO by Gettyimagesしかしだからといって、繰り返し「ウクライナは勝たなければならない」と力みさえすれば、必ず勝てるようになるわけではない。
また、ロシア関係者の言説を分析する者を見つけては、それを非難し、「お前は隠れ親露派だな!」と叫んでみたところで、戦況が好転するわけではない。
トランプ大統領が登場する可能性が高まっている。アメリカの政策は、大きく転換する。われわれ影響を受ける者も、あらためて敵を分析し、己を分析することが必要な時期になる。
もちろん深く的確に「敵を知り、己を知」るのは、簡単なことではない。助けになるのが、信頼できる分析の手法を示唆してくれる古典だ。そこでここでは国際政治学の古典を参照しながら、それを現代世界の情勢分析にどう活かすのか、について考えてみたい。