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2021/06/15

3年間のオンボーディングで培われた、リモートでも効果的な7+3のプラクティス

小林 達小林 達

現場主導で始まったHRMOSの開発組織のオンボーディングは、ほぼ毎月、地道に運用と改善を続けてきました。2018年に開始してから3年近くになりますが、エンジニアを対象に始まり他職種のメンバーを巻き込みながら、効率と効果の両面を少しずつ洗練させてきました。この記事では、私たちのオンボーディングを定義や効果を俯瞰しながら紹介し、その中で徐々に確立されてきたプラクティスをご紹介します。

変化の時代に不可欠なオンボーディング

オンボーディングとは採用や異動によって組織に加わった人材の早期戦力化のための施策であり、

組織に新しく加わった人材を1日も早く戦力化し、組織全体との調和を図ることを目的とした育成プログラムのことを指します。『機内』や『乗船』という意味を持つon-boardから派生して生まれた造語であり、直訳すると『飛行機や船に乗り込んでいる』という意味です。
BizHint

などと定義されており、以下のような効果が謳われています。

とはいえ、3年間のHRMOSでのオンボーディングの経験上、良質なオンボーディングを維持し続けるのには多大な労力と幅広い協力が必要 だと感じています。労力に見合う効果は実感できますが、それでもなお効果的に継続し続けるためには工夫が求められるかもしれません。

HRMOS におけるオンボーディング

オンボーディング構築前のHRMOSは、毎月右往左往しながら人を受けいれていました。異動や入社によって新しい仲間が加わるのは嬉しいことなのですが、同じような質問を毎回受けたり、記憶ベースで不完全に答えたり、受け入れる側は業務との両立に苦労していました。また、受け入れられる側にも遠慮や躓きが発生していました。それを楽をするために苦労をいとわない というエンジニアの性で形式化していったのがオンボーディングの始まりです。

人が活躍するまでのフェーズ

人が組織に加わったとき、How to Live(適応できる)How to Learn(情報を得られる)How to Work(成果をだせる)How to Influence(影響をあたえる) という過程を経ていくと言われています。 この Live や Learn 、Work の部分をオンボーディングプログラムが支援しています。

私たちのオンボーディングは、その主目的を「早期の戦力化」と「人・組織を知る」に設定しています。

オンボーディングの目的
オンボーディングの目的

前者はもちろんのこと、後者を満たすために多くの方に協力いただくような構成になっています。フルリモートに近い現在においては、後者の目的を満たすことの重要性が高まっています。私たちはこのオンボーディングがあったからこそ不安なくリモートに移行できました。

弊社では(キャリア入社者の場合)各月ごとに全職種対象の全社オリエンテーションが数日間ありますが、それを終えると、HRMOSのエンジニア職を対象とした私たちのオンボーディングが始まります。オンボーディングはカリキュラムを組んでおり、個人やチームの状況に合わせて個別に最適化しています。

現在では、キャリア入社者のみならず、研修直後に初めて配属される新卒入社者やエンジニアインターンシップでも、このオンボーディングプログラムは活用されています。

オンボーディングを成功させる7つのプラクティス

オンボーディングの運用自体は労力がかかります。コンテンツは常に最新化されなければ効果は半減します。事務局担当、講座の講師担当、ドキュメントの更新担当など、それぞれのメンバーの主体的な協力が欠かせません。それでも、私たちのこの取り組みが続いていることを振り返ると、継続して効果を出し続けるためのコツのようなものが浮かび上がってきました。以下、プラクティスとして7つにまとめてご紹介します。

7つのプラクティス
7つのプラクティス

P1. 既存メンバーを広く巻き込む

カリキュラムとして30程度のコンテンツを作成しています。それぞれは0.5〜2時間程度の講座ないしは自習コンテンツになっています。これらのコンテンツは技術的なものから業務的なものまで含み、組織をまたいだ十数人が講師や作成に関わっています。

カバレッジの拡大や労力の平準化から巻き込みを増やしていったのが当初の目的でしたが、結果としてオンボーディングを受ける人(以下、受講者と呼ぶ)からすると、どこで誰がどう働いていて、どのような知識を持っているかを知る機会になっています。実務だけでは関わり合う人は固定される傾向があることを考えると貴重な機会になっているといえます。

カリキュラムのイメージ
カリキュラムと受講者用テンプレート

P2. 事務局とメンターが重層的に支援する

関係者がそれなりに多いため、受講者と既存メンバーのコミュニケーションハブとなる事務局を設置しています。とはいえ、事務局担当は必ずしも配属されるチームのコンテキストを解像度高く把握していないこともあります。そのため、実務で近い位置にいる人(通常は同一チームの人)をメンターとして設定しています。事務局が俯瞰的にサポートする一方で、メンターは受講者と同じ目線に立ってサポートします。

これに関して以下のような数字もあります。

87%の企業は、オンボーディングプロセス中にメンターまたはバディを割り当てることが、新規採用者の習熟度を高める効果的な方法と答えている(Talent Pulse, HCI

P3. 柔軟に業務に編み込めるPUSH/PULL方式

受講者は通常、オンボーディングと並行して業務を開始していきます。OffJTとOJTが並行するとも言えます。柔軟に対応してもらえるよう受講者自らが日程を調整してもらうようにしています。これをPULL方式と呼んでいます。一方で、入社直後は勝手もわからないため初期の一部のコンテンツのみは事務局から予定をアレンジするようにしています。これをPUSH方式と呼んでいます。初期のPUSHと中盤以降のPULLを併用することで確実にかつ柔軟にオンボーディングをこなしていけるようにしています。

PUSH/PULL方式
PUSH/PULL方式

P4. 歴史・文化などを含め"土地勘“を身につける

製品やサービス、組織は変化します。たとえば、製品のピボット、組織の統合・分割・リネーム、ボツとなった製品名、個人のエピソードに由来するコードネームなど、痕跡は残っているもののコードやドキュメントを読んでもわからないものがあります。システム開発における、当初の決定の気軽さに対して後の変更の難しさの比の大きさは、想像に難くないでしょう。

歴史としてこの変遷を紹介することで、見知らぬ単語や状況に遭遇したときに勘を働かせられるように支援しています。昔からのメンバーですら薄れてしまう過去の記憶を残していくことは単なる懐古趣味ではなく、実質的な効果があるといえます。

実際の歴史

P5. 2次利用3次利用を見据えたコンテンツづくり

多くの場合において、オンボーディングのためのコンテンツは既存メンバーにも有用です。もちろんオンボーディングのためだけに焼き直すのは二度手間なのですが、それ以前に、まとまった時間が取れないなどの理由でそもそも作成する機会を逃していたりします。設計ガイドライン、環境構築のREADME、性能向上のTIPSなど、口頭伝承されがちであったり更新が滞りがちなものは多々ありますが、オンボーディングでの利用が意識されることで優先度が上がりやすくなります。”はじめに知っていればこうならなかった” 問題の事前回避につながっていますし、既存メンバーが目線を揃えたり役割を変えたりするときにも活用できています。コンテンツが拡充・更新され続ける良いサイクルへのモメンタムを作るための口実としても、オンボーディングは実に最適です。

1石N鳥のコンテンツ

P6. 事務局が中心となって振り返り、次に繋げる

多人数が関わるため毎回のオンボーディングで大小の非効率や不手際は発生するものですが、事務局が主体的に集約し次につなげていくことで少しずつ構成と運用が改善されてきました。当初は”前回の受講者が次の事務局になる”ルールだったのですが、単発的な動きに終わってしまうため半年の任期に変更しました。現在では事務局が、課題の集約、受講者と一緒の振り返り、次回への準備、を計画的に進めており経験学習のサイクルを回せるようになっています。

P7. 現場主導であるからこその鮮度

過去の受講者はその後、自発的にオンボーディングをサポートしています。受講者がオンボーディングの効果を実感してくれるからこそ、多少の労力を払ってでもコンテンツを作ってくれたり、講師を買って出てくれるというポジティブなサイクルが回っており、現在までオンボーディングが続いてきた最も大きな理由となっています。オンボーディングが現場に即し有用であり続けるには事務局は現場のメンバーであることが必要です。人事、組織開発、教育担当などの一部の誰かが提供してくれる当たり前を享受するのではなく、現場メンバー自らが作っていくことで生きたオンボーディングであり続けられているといえるでしょう。

リモートでオンボーディングを成功させるプラス3つのプラクティス

私たちは、2020年3月よりフルリモートに近い環境で仕事をしています(注:2021年6月現在)。フルリモートに移行後も多くの仲間が加わっています。移行前からあるオンボーディングはほぼそのまま活かせましたが、プラスの工夫を施しています。

プラス3つのプラクティス

P1+. 分単位のスケジューリングでウェルカム

入社や異動直後の印象は一般的に強く残るものですが、戸惑いもまた強く印象に残ってしまうかもしれません。物理的に配属されていた頃にはフロアまで人事が案内をしてくれ、その場にいるメンバーに紹介をし、その日はなんとなく身辺を整理し、翌日になってからオンボーディングを開始するような緩やかさがありました。しかし、リモートワークの今はほんの少しのつながりのない時間帯も不安を招いてしまいます。

そのため昨今では、会社全体の数日間のオリエンテーションの最中からコンタクトを開始し、配属のタイミングを見計らってオンボーディングのコンテンツをスケジュールしています。まさに分単位のスケジューリングでオンボーディングの予定を組みます

P2+. 論理世界こそ神は細部に宿る

文脈的な情報量が少なく情報の違いが顕著になりやすい論理世界だからこそ、与える情報・受けとる情報を網羅的にかつ丁寧に整えていくことが必要です。私たちは、既存メンバーから見える受講者、受講者から見える既存メンバーの両方向を丁寧に再点検しました。それによって、各種のアカウント発行、セキュリティグループ追加、などは前者の位置づけでより早期に順番だって行うように変更しました。後者について、受講者に気を配ってもらいたいところについてオンボーディングでの言及を追加しました。アバター統一、マイクやスピーカーの選び方、などです。

P3+. 論理的な居場所を醸成する

月ごと(同月入社が複数人の場合もあります)にSlackの専用チャネルを作り、ちょっとした質問や感想などのやりとりのために受講者が自由に使えるようにしています。そこでは受講者がオーナーであり、事務局や講師、その他のメンバーが居候です。日記のように使われたり、コンテンツの不備を指摘してもらったり、使われ方は様々です。そこは受講者の一時的な居場所であり既存メンバーが気軽に訪問できる場所です。なお、オンボーディングが終わればこの仮住まいは削除しますが、前回分だけ例外的に残し、次の受講者に使い方や雰囲気を知ってもらうようにしています。

オンボーディングのこれから

プレ・オンボーディングの充実

今回触れられなかったものにプレ・オンボーディングがあります。プレ・オンボーディングは入社前の方へのオンボーディングです。ご縁があり内定を承諾いただいた方からは、高い頻度で前職での残りの期間もしくは長い有給休暇の消化期間をどう過ごすのがよいかご相談をいただきます。現在は、学ぶ対象となる簡単な情報インデクスをお渡ししするものの「今のうちに、弊社に入ってからできない経験をしたり学んだりするようにしてください。入ってからのキャッチアップは心配無用です」とメッセージしています。それは本心ですが、一方でもう少し充実したプログラムがあってもよいのではないかとも考えています。

プレ・オンボーディング

物理的なオンボーディングキットの制作

リモートワークが普及した現在であるからこそ、物理的なモノの活用は効果的であるかもしれません。たとえば、弊社でも新卒入社用 Welcome Boxデザイナーキット が配布されていますが、エンジニアとしてもトライしたいことの一つです(遥か昔のことのように思えますがカンファレンス等でもらえるノベルティは楽しみのひとつでした)。

HRMOS Onboarding への結晶化

私たちがHR分野の製品開発に取り組んでいるからでもあるのですが、オンボーディングは開発対象としても興味深い領域です。オンボーディングは仕事のパフォーマンスにも組織へのエンゲージメントへもつながってくる重要なステップであると捉えています。オンボーディングのような取り組みが気になってきているリーダーやマネジメントの方、人の働き方や組織の動きに興味をもたれている方、ぜひ、一緒にその思いを製品に転写していきましょう!

2021年7月15日追記: オンボーディングの現在

弊社 HRMOS WorkTech研究所の調査~コロナ禍の状況下における、「企業の採用・オンボーディング」の課題を調査~採用のオンライン対応が進むなか、6割が入社者のオンボーディングに課題ありによれば、

コロナ禍の影響を大きく受けた1年を通じて、採用のオンライン化が進む一方、入社者のオンボーディングの課題はより明らかになりました。依然として入社者の早期の立ち上がりの課題感が強く、なかでも社内での人間関係の構築は、リモート環境下では特に難度の高い対応を迫られたのではないかと予想されます。オンボーディングは、採用活動を行っている採用担当者と、入社後のオンボーディングを担当する人事部門または受け入れ部門との連携が重要です。

とあります。この調査にもあるとおり、オンボーディングの充実はますます必要とされており、また、リモートを前提とした組み立てもごく当たり前となっていくのではないでしょうか。

この記事の公開によって、社内外に同様の取り組みが幾つもあることを知ることができました。全社、事業、部署、チーム、または職種横断などの重層的な連なりが求めれそうであり、また、入社だけではなく異動や現場の役割変更などでも類似の取り組みが必要とされそうです。専門性や流動性が高まっていく中で、オンボーディングは更なる発展の可能性があるテーマかもしれません。

小林 達
小林 達

HRMOSに最初からいる人。実家への旅路は8時間、好きな銘柄は御湖鶴、得意なショートカットキーは Cmd+Ctrl+Q です。実年齢は秘密です。

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2022/02/17
「HRMOS」エンジニア組織のオンボーディングを実際に受けてみた件
以前 オンボーディングプラクティスの紹介記事 を紹介しました。 しかし、その記事を読まれた方の中には「ちょっと内容が綺麗すぎない?本当?」と感じた方もいらっしゃるかと思います!そこで今回の記事では、新入社員が実際にオンボーディングを受けてみて、本当に効果的なプラクティスであったのかを実証・紹介しようと思います!
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