Gは、ラテン文字(アルファベット)の7番目の文字。小文字はg 。元来はギリシャ文字のΓ(ガンマ)に由来し、キリル文字のГに相当する。
紀元前3世紀頃のラテン語で、ギリシャ文字のΓ(ガンマ)に由来するCの字形に手を加えヒゲを付けて新たに作られた文字であり、無声/k/、有声/g/ の区別を付ける後者の文字として作られた。アルファベット順の位置は、古ラテン語までのΖ(ゼータ、今日のラテン文字のZ)の位置に置き換えた。
小文字gの2つの字形
筆記体
ジュッターリーン体大文字は、本来は、Cの右下の終端から真下にデセンダー(ベースラインの下)までステム(縦棒)を伸ばして左下へ払った字形である。なお、「I」から「J」を作ったのも同じ字形変化である。
近代にはステムは短くなり、ベースラインにも達しないようになった。また、Cの最後から下におろすのではなく、円弧の最後の部分と一体化することも多い。
ステムの上端にはセリフ(Iの上端などにある短く細い横棒)がある。サンセリフでは通常セリフは表さないが、Gに関してはステムのセリフを強調し、エジプシャン(セリフをステムと同じ太さで、つまり「I」を「エ」のように書くフォント)のように表現する。この場合、ステム自体は省略し、セリフの横棒だけを書くことも多い。
フラクトゥールでは
。
大文字の筆記体では、Cの右下の終端に、縦棒を下に付け、ベースラインの下にはみ出して左に回転し、しばしばそのまま右上に伸びて縦棒を突き抜ける形が取られることがある。
小文字では、ステムはcの最後から伸ばすのではなく、xハイト(小文字のxの高さ)から下に伸ばす。そのため、cのカウンター(線に囲まれた空白部分)は完全に閉じる。フラクトゥールの
もそうである。
小文字では、しばしば下に降りる縦線が左に大きく湾曲し、印刷書体に使われる。
- 拉・独・洪・尼・スラヴ語:ゲー[gɛː],[geː]
- 土:ゲ[ge]
- 仏:ジェ
- 葡:ジェー[ʒeː]
- 伊:ヂ
- 羅:ヂェ
- 英:gee(ヂー)[dʒiː]
- 蘭:ヘー[ɣeː]
- 西:ヘ[xe]
- エス:ゴー[ɡoː]
- 越:ゼー
- 日:ジー [d͡ʑiꜜː]
この文字が表す音素/g/ の音価は、有声軟口蓋破裂音[ɡ] ないし、その類似の軟口蓋音が主である。
[g] で発音するのを「固い (hard) g」、摩擦音や破擦音[d͡ʒ] で発音するのを「柔らかい (soft) g」と呼ぶ (固いGと柔らかいG(英語版))。
- IPAの[ɡ] は有声軟口蓋破裂音を表す。このときの文字は「
」のグリフの内、左の字体ではなく右の字体を使わなければならないため、Unicodeでは通常の小文字「g」とは別の文字コード(U+0261)を当てた文字「ɡ」を使う。またスモールキャピタル[ɢ](U+0262)は有声口蓋垂破裂音を表す。なお、「ɡ」と「ɢ」の右上に曲がりを付けた[ɠ](U+0260)は軟口蓋入破音を、[ʛ](U+029B)は口蓋垂入破音を表す。 - ロマンス語では、前舌母音であるe,i (,y) の直前で口蓋化し「柔らかい g」になる。
- フランス語、ポルトガル語では「柔らかい g」を有声後部歯茎摩擦音[ʒ](IPA) =[Z](X-SAMPA) で発音する。前舌母音の直前の[ɡ] は gu- と綴る。
- イタリア語、ルーマニア語、教会ラテン語では有声後部歯茎破擦音[d͡ʒ](IPA) =[dZ](X-SAMPA) で発音する。[ɡ] は gh- と綴る。
- スペイン語では無声軟口蓋摩擦音[x] で発音する。[ɡ] は gu- と綴る。
- 英語はロマンス語ではないが、古フランス語やラテン語からの借用語が多く、ロマンス語と同様に前舌母音の直前の g が口蓋化し、[d͡ʒ] と発音される(例: gentle[d͡ʒɛntl], genius[d͡ʒiːnɪəs])。英語における「前舌母音の直前」とは発音ではなく綴りが基準である(例: giant[d͡ʒaɪənt])。[ɡ] は gu- と綴る(例: guide[ɡaɪd])。ただし、古ノルド語からの借用語には例外もある(例: get[ɡɛt], give[ɡɪv])。
- ドイツ語では語末や無声子音の前で無声化し[k] となる。ただし、語尾の -ig の g は標準ドイツ語ならこの g を無声硬口蓋摩擦音[ç](IPA) =[C](X-SAMPA) で発音する。 (例:Tag, Dialog, (fünfund-)dreißig)
- スウェーデン語では「柔らかい g」は硬口蓋接近音[j]で発音する。また、語末の -rg/-lgも [-rj] 、 [-lj] となる。
- フランス語では、語末のgを黙字化する。ただし、母音で始まる単語が後続する場合、リエゾンして[ɡ]を発音する。
- スペイン語、ポルトガル語では、母音間で「固い g」が摩擦音化し、有声軟口蓋摩擦音[ɣ] になる。
- オランダ語では有声軟口蓋摩擦音[ɣ],有声硬口蓋摩擦音[ʝ] を表す。
- ベトナム語ではフランス語の綴りの影響を受けているため、母音字 i、ê、e の前では有声後部歯茎摩擦音[ʒ]を、他の母音の前では有声軟口蓋摩擦音[ɣ] を表す。
- 非ラテン文字圏の言語をローマ字表記する場合でも、一般的に[ɡ]やその近似音に使われる。eやi,yが後続する場合であってもgのままで、guとはしないことが多い。有声無声の区別が無いが有気無気の区別がある言語の場合、方式によっては無気音の方に割り当てられ、その場合無声で[k]と発音されることもある。
- チワン語でも音節頭では中国語と同様に無気無声軟口蓋破裂音[k] を表すが、音節末では中促調を持つ軟口蓋内破音[k̚] を表す。
- マレー語では音節頭では有声軟口蓋破裂音の[g] を表すが、音節末での実際の発音は軟口蓋内破音[k̚] である。
- 多くの言語で、ng と綴ると軟口蓋鼻音[ŋ] を表すが、/g/とは別の音素である例が多い。
| 大文字 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 小文字 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 備考 |
|---|
| G | U+0047 | 1-3-39 | G
G | g | U+0067 | 1-3-71 | g
g | |
| G | U+FF27 | 1-3-39 | G
G | g | U+FF47 | 1-3-71 | g
g | 全角 |
| Ⓖ | U+24BC | ‐ | Ⓖ
Ⓖ | ⓖ | U+24D6 | 1-12-37 | ⓖ
ⓖ | 丸囲み |
| 🄖︎ | U+1F116 | ‐ | 🄖
🄖 | ⒢ | U+24A2 | ‐ | ⒢
⒢ | 括弧付き |
| ᴳ | U+1D33 | ‐ | ᴳ
ᴳ | ᵍ | U+1D4D | ‐ | ᵍ
ᵍ | 上付き文字 |
| 𝐆 | U+1D406 | ‐ | 𝐆
𝐆 | 𝐠 | U+1D420 | ‐ | 𝐠
𝐠 | 太字 |
| 𝐺 | U+1D43A | ‐ | 𝐺
𝐺 | 𝑔 | U+1D454 | ‐ | 𝑔
𝑔 | イタリック体 |
| 𝑮 | U+1D46E | ‐ | 𝑮
𝑮 | 𝒈 | U+1D488 | ‐ | 𝒈
𝒈 | イタリック体太字 |
| 𝒢 | U+1D4A2 | ‐ | 𝒢
𝒢 | ℊ | U+210A | ‐ | ℊ
ℊ | 筆記体 |
| 𝓖 | U+1D4D6 | ‐ | 𝓖
𝓖 | 𝓰 | U+1D4F0 | ‐ | 𝓰
𝓰 | 筆記体太字 |
| 𝔊 | U+1D50A | ‐ | 𝔊
𝔊 | 𝔤 | U+1D524 | ‐ | 𝔤
𝔤 | フラクトゥール |
| 𝔾 | U+1D53E | ‐ | 𝔾
𝔾 | 𝕘 | U+1D558 | ‐ | 𝕘
𝕘 | 黒板太字 |
| 𝕲 | U+1D572 | ‐ | 𝕲
𝕲 | 𝖌 | U+1D58C | ‐ | 𝖌
𝖌 | フラクトゥール太字 |
| 𝖦 | U+1D5A6 | ‐ | 𝖦
𝖦 | 𝗀 | U+1D5C0 | ‐ | 𝗀
𝗀 | サンセリフ |
| 𝗚 | U+1D5DA | ‐ | 𝗚
𝗚 | 𝗴 | U+1D5F4 | ‐ | 𝗴
𝗴 | サンセリフ太字 |
| 𝘎 | U+1D60E | ‐ | 𝘎
𝘎 | 𝘨 | U+1D628 | ‐ | 𝘨
𝘨 | サンセリフイタリック |
| 𝙂 | U+1D642 | ‐ | 𝙂
𝙂 | 𝙜 | U+1D65C | ‐ | 𝙜
𝙜 | サンセリフイタリック太字 |
| 𝙶 | U+1D676 | ‐ | 𝙶
𝙶 | 𝚐 | U+1D690 | ‐ | 𝚐
𝚐 | 等幅フォント |
| 記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
|---|
| ɡ | U+0261 | ‐ | ɡ
ɡ | LATIN SMALL LETTER SCRIPT G |
| ɢ | U+0262 | ‐ | ɢ
ɢ | LATIN LETTER SMALL CAPITAL G |
| 🄶︎ | U+1F136 | ‐ | 🄶
🄶 | SQUARED LATIN CAPITAL LETTER G |
| 🅖︎ | U+1F156 | ‐ | 🅖
🅖 | NEGATIVE CIRCLED LATIN CAPITAL LETTER G |
| 🅶︎ | U+1F176 | ‐ | 🅶
🅶 | NEGATIVE SQUARED LATIN CAPITAL LETTER G |
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