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2023年4月15日 08:00
私はこれまで沢山のクリーチャー映画を観てきた。大抵はハズレか、そこそこレベルなのだが、たまにビックリするくらい大当たりの映画に遭遇することがある。今回紹介する「ザ・ヴォイド 変異世界」は、まさに大当たり枠だ。今回はこの作品について紹介したい。
保安官ダニエルが夜中1人でパトロールをしていると、怪我をした男と遭遇する。ダニエルは男を連れて、その場所から最も近い、人里離れた病院へと向かう。しかし、それが恐怖の始まりだった。いつの間にか病院の周りを全身白装束のカルト集団が包囲。さらに、院内では患者がおぞましい化け物に変貌する。外にも中にも安全地帯が無いという絶望的な状況の中、僅かに残された生存メンバーの過酷なサバイバルが始まる! 外には邪教! 中には異形! という地獄すぎるシチュエーションで送るホラー映画である。化け物付きの「要塞警察」みたいな超欲張り仕様だ。この設定だけでもご飯3杯くらいいけるが、その中身も非常に充実しており、満足度が高い。
本作の最大の魅力は、なんといってもクリーチャーである。この映画には様々な化け物が登場する。物語の中盤あたりで最初に現れるのは、クソデカい肉塊の前面に人体がくっついた、グロテスク極まりない化け物だ。見た目だけで多くの人のSAN値を削り切るインパクトがあるが、その攻撃方法もかなりエグい。何本ものぶっとい触手をウネウネと蠢かせて、捕まえた人間の目やら口やらに突っ込んでグチャグチャにして殺すのだ!その気色悪さと言ったら!このシーンを最初に観た時、とんでもない傑作が現れたと確信した。初手でいきなり並みの映画のラスボス級の激やばモンスターを繰り出すサービス精神旺盛さに、心の底から感激させられた。
第一回目の襲撃後にカルト集団との攻防や更なる乱入者とのひと悶着を挟んで、再び突入する後半の化け物大暴れフェーズ。脱出の糸口を探るため、病院の地下へと潜る一行を待ち受けるのは、何匹もの人体改造モンスターたち!
ある者は顔面に穴が開いている。ある者はプレデターも裸足で逃げ出すおぞましい顔。またある者はブリッジして全身バキバキになりながら襲い掛かってくる。登場人物の一人が思わず漏らす「ここは地獄だ……」というセリフの通り、凄まじい地獄絵図を見ることが出来る。映像が台詞負けしていない貴重な瞬間がここにある。あちらこちらから現れる異形の集。これがクライマックスか! というくらい追い込まれるのだが、なんとここから更にもう一押しが待ち受けている。終盤に出てくるアイツは、思わず拍手喝采するくらいグロテスクで格好いい。
もし未見の人がいたら、是非本編でその姿を見て、自分の目に焼き付けてほしい。とにかく全編が物凄いクリーチャー濃度でおなかいっぱい。もう一つ特筆すべき点は、この化け物たちはいずれもプラティカル・エフェクト(造形物)で描かれているということだ。そのため、実在感があるうえ、独特のヌメヌメ感や異常な生理的嫌悪感もしっかりと画面越しに伝わってくる。CGも良いけど、本作を観ると、やっぱり造形クリーチャーも廃れて欲しくないなと思う。
本作を手掛けたのは、「サイコ・ゴアマン」ですっかり日本でもお馴染みになったスティーブン・コスタンスキと、彼が所属する映像制作集団アストロン6の設立者の1人ジェレミー・ギレスピーだ。この映画自体もアストロン6製作となる。なので、造形物全開の映像に仕上がったというわけだ。そして、ここが肝心なのだが、この作品はただ「CGはクソ!プラティカル・エフェクトこそ至高!」みたいな変に偏った考えを持っているわけではなく、その世界観に最も適した質感を与えるための選択肢として、実物を選んでいるのが素晴らしいと思う。全くCGを使わないわけではなく、細部の処理はもちろん映像処理を施している。だがメインは造形物。この的確な使い分けが、一級の映像を生み出した。
コスタンスキ監督は、海外のインタビューでこう答えている。「プラティカル・エフェクトはどこまで行ってもエフェクト(効果)しかない。説得力があるように見せるには限度があるから、ただ使うだけではなく使い方を工夫する必要がある」と。造形物を見せることだけが目的になってしまうのは、ただの学祭の出し物と一緒だ。実在感を高めるための創意工夫にこそ、クリエイターのセンスと手腕が問われる(と、素人考えながら思う)。この作品はその点において抜かりなく、場面に応じた最適なエフェクトを使う事で、現実と見紛うかのようなおぞましい映像を作りだした。ここが本作の最大の魅力だと考える。だから何度見ても度肝を抜かれるし、また見返したくなってしまう。クリーチャー映画好きなら必見の作品だ。超おすすめです!
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