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2021年4月25日 17:00
ハーモニー・コリンがもう48歳!? 1990年代半ばに現れた早熟な天才。「KIDS」の脚本が19歳、監督デビュー作「GUMMO ガンモ」を世に送り出したのが22歳。常識破りで挑発的な創作活動は、いつも枠に押し込められることを拒絶しているように思えた。しかし、ぶっちゃけ48歳はまごうことなくオッサンである。
ジョナ・ヒルの監督作「mid90s」に出演した姿も「あれがコリン?」と目を疑うくらいただのオッサンだった。冷静に考えれば、いつまでも“怒れる若者”であり続けられるはずがない。無軌道で不道徳な女子大生のバカ騒ぎをフルスイングで肯定してみせた怪作「スプリング・ブレイカーズ」から9年(製作は7年後)、ようやく届いた新作は清々しいほど「オッサンの映画」になっていた!
とはいえ「ビーチ・バム」の主人公はただのオッサンとは違う。マシュー・マコノヒーが演じる、ムーンドッグというカリスマ詩人だ。ただし一世を風靡したのは昔話で、今では浴びるほど酒を飲み、老いも若きも頓着せずに女性たちを愛し、24時間ハイなその日暮らしを満喫している。上映時間95分、ほぼ全編が、ムーンドッグがちゃらんぽらんに遊んでいる場面だと言っていい。
なぜいい年のオッサンが働きもせずに遊んでいられるのか? それは大金持ちの妻がいてくれるから。しかし妻が亡くなり、莫大な遺産の相続条件として新作の詩集を書き上げなくてはならくなる……というのが一応存在しているプロット。一応、と書いたのは、エピソードを積み上げながらクライマックスになだれ込むという通常の語り口を、本作がほとんど放棄しているからだ。
普通の映画なら、主人公に試練を与え、それを乗り越えて成長する姿を物語にして提示する。しかしムーンドッグも監督のコリンも、そんな当たり前のストーリーテリングからひたすらに逃げまくる。浮世離れした天才詩人が繰り広げる、予測不可能な悪ふざけのオンパレード。その先に何があるのかと戸惑う観客に、「映画も人生も “楽しい”以外になにかいる?」と問いかけているようですらある。
光も闇も等価に呑み込む刹那的な問題提起は、現実の写し絵として機能する一種の逆説なのだが、そんな小理屈もムーンドッグからは「ダセえな」と笑い飛ばされるのがオチ。コリンは本作で映画表現の解体と再構築をやってのけたと思うのだが、力みを一切見せないスタンスが、もはや空恐ろしい怪作である。
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