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2018年10月14日 18:37
[映画.com ニュース] 「木枯し紋次郎」「新・極道の妻たち」で知られる84歳の巨匠・中島貞夫監督の約20年ぶりとなる長編劇映画「多十郎殉愛記」が10月14日、京都国際映画祭2018でワールドプレミア上映され、中島監督をはじめ主演の高良健吾、共演の木村了がよしもと祇園花月での舞台挨拶に立った。
幕末の京都を舞台に、親の借金から逃れるように長州を脱藩した浪人・清川多十郎(高良)、店の用心棒である多十郎に好意を寄せる居酒屋で働くおとよ(多部未華子)、多十郎を頼って上洛してきた腹違いの弟・数馬(木村)による物語を、迫力の殺陣を交えて描く。観客からの大きな拍手で迎えられた中島監督は、「皆さんの拍手を聞いているだけで涙がこぼれます」と感無量の面持ちを浮かべ、「京都から、もっともっと面白いちゃんばら映画が作れるはず。それが我々の務めで、老いた身に鞭打ちながらやってきた成果です」と晴れやかに語った。
高良も「大きな拍手を頂いて、感極まりそう。とても嬉しいです」といい、「監督の思い、キャストの思いが詰まったこの作品を、京都で最初にお披露目できた」と喜びを爆発させる。製作においては“若い世代に時代劇を伝える”というテーマもあっただけに、高良は「中島監督が残そうとしている、伝えようとしているもの。あの1カ月は本当に幸せでした。幸せな時間でしかなかった。幸せでしょうがなかった」と明かし、「“多十郎ロス”もありましたし、『京都のあそこらへんは住みやすいかな』と家賃を調べたり、不動産の前で止まってしまったり」と移住しかけたことを告白した。
木村も「『命がけで数馬という役を体現しなければ』と、毎日緊張しながら撮影に挑んでいました」と真剣勝負だった日々に思いを馳せ、「より現場愛を持ち、作品を良くしていこうと思った」と固く決意。高良は現場で学んだこととして「殺陣は“思いやり”なんです。相手をケガさせちゃいけない、など相手との関係性でできていく。そう知れたのは大きかった」と語り、「刀をなぜ抜いたのか、なぜ斬るのか、なぜそこで戦うのか。ただ人を斬るのではなく、武士としての“思い”があることが学べた。(今作はアクションの)派手さではなく、刀や人への思い、裏側の精神性を描いている」と得たものの大きさをにじませた。
また高良は、観客や映画ファンに「時代劇って面白い。中島監督が何かを届けるために、時代劇を選んだ意味が必ずあって。自分たちの世代を現場に呼んでくれるのは、『時代劇は面白い』『刀を振るうことに意味がある』と伝わったら良いな、ということ。個人的には、月9で時代劇をやっても面白いと思う」とメッセージを託し、木村も「もう一度、時代劇を若い人たちに見てもらえれば。僕たちが受け継いで、次に託していきたい」と同調する。その功績を称え“京都映画大賞”を授与された中島監督は、「泣ける言葉を言ってくれるね」と、願いが通じたように破顔していた。
「多十郎殉愛記」は、2019年春に公開。
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