せかいのおきく
劇場公開日:2023年4月28日
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解説・あらすじ
「北のカナリアたち」「冬薔薇(ふゆそうび)」などの阪本順治監督が、黒木華を主演に迎えて送る青春時代劇。
江戸時代末期、厳しい現実にくじけそうになりながらも心を通わせることを諦めない若者たちの姿を、墨絵のように美しいモノクロ映像で描き出す。武家育ちである22歳のおきくは、現在は寺子屋で子どもたちに読み書きを教えながら、父と2人で貧乏長屋に暮らしていた。ある雨の日、彼女は厠のひさしの下で雨宿りをしていた紙屑拾いの中次と下肥買いの矢亮と出会う。つらい人生を懸命に生きる3人は次第に心を通わせていくが、おきくはある悲惨な事件に巻き込まれ、喉を切られて声を失ってしまう。
中次を寛一郎、矢亮を池松壮亮が演じ、佐藤浩市、眞木蔵人、石橋蓮司が共演。
2023年製作/89分/G/日本
配給:東京テアトル、U-NEXT、リトルモア
劇場公開日:2023年4月28日
スタッフ・キャスト
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解説・見どころ/「この世界の片隅に」 と重なる“生のぬくもり” 声を失った、けれど恋をした――
まるでしんしんと注ぐ細雪のように、心に柔らかで淡い感動が降り積もっていく。
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2023年11月8日
映画評論
凜とした映像で江戸庶民の悲喜交々を描く、阪本順治の “活劇”
観終わって最も印象に残ったのは、笠松則通の撮影が生み出す映像の力だった。輪郭が立ちながらも柔らかさが損なわれていない。凛とした映像が音を際立たせ、画面に吸い込まれるような感覚に包まれる。阪本順治監督は、スタンダードの画角、モノクロームの映像に最小限の色味...
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映画レビュー
3.5幕末サスティナビリティ
モノクロ映像である理由は、うんこがたくさん映るから?そう勘繰りたくなるほど、うんこの描写がたくさんある。でも、しっかりカラーのうんこも出てくる。
主要キャラの職業が汚穢(おわい)屋なのでそうなるのだが、何故わざわざそういう設定にしたかというと、本作が「YOIHI PROJECT」の映画作品第一弾だからだ。
このプロジェクトの主旨は、「気鋭の日本映画製作チームと世界の自然科学研究者が協力して、様々な現代の『良い日』に生きる人間の物語を創り、『映画』で伝えていく」「地球環境を守るために考えたい課題を誰もが共感できる物語として描」くことだそうだ(「YOIHI PROJECT」ホームページより)。他にも、ドキュメンタリー映画や絵本などを世に送り出している。
おきくの受難とかわいい恋物語は、こういったプロジェクトのテーマをエンタメに昇華するための溶媒のようなものなのだろう。
ただ、設定上仕方ないもののちょっとうんこ描写が多すぎるので、人によっては嫌悪感が強いかもしれない。
ちなみにあのうんこの材料は主にダンボールで、場面によってはお麩を入れたり、廃棄される予定だった食材を入れたりしたそうだ。
鑑賞中はそんなことを知らず、おきくのドラマという単純な理解で観ていたが、それでも映像を追っていると確かに当時がその時代なりの循環型社会だったことがよくわかる。排泄物を、代金を払って回収し川で運び、肥料として売る。中次の最初の生業として、古紙回収の仕事も出てきた。
しかし、循環させることは素晴らしいのだが、やはり当時の仕組みは大変だ。裕福な家はいざ知らず、長屋のような住まいのトイレは、ちょっと激しい雨が降ればたちまちあふれてしまう。汚穢屋が排泄物を運べば当然道すがら臭う。不衛生になることが多く、健康に悪い。現代に生きる人間としては、改めて水洗トイレの偉大さを思う、といった感じである。
だが、当時の汚穢屋はいわゆるエッセンシャルワーカーだ。矢亮が言っていたように、人々の生活は彼らがいなければ成り立たない。欠かせない職なのに、実入りも社会的立場も恵まれない。そういった傾向は、現代にも残っている気がする。
おきくの物語に目を移すと、受難の場面は非情だが、その場面以外は全体にほっこり感が漂う。声を失った後も、悲しみや重苦しさに支配され続けるわけではない。
彼女の父親である源兵衛を佐藤浩市が、中次を実の息子の寛一郎が演じていることで、おきくは中次に父親の面影を見たのかもしれないというニュアンスも感じられる。あらためて、寛一郎は父親によく似ているな、と思った。
黒木華は時代劇がよく似合う。くっきりと派手な美しさではなく、日本の美人画に描かれるようなシンプルで凛とした美しさが、モノクロの画面によく映えていた。
ところで、最後に矢亮がしきりと「青春だなあ」と言っていたが、青春という単語が現代のような意味合いで使われ出したのは明治時代後期だと言われる。だから矢亮の言い方を聞いて少し不思議な気分になったのだが、脚本はあえてそうしたのではないかと勝手に想像している。
中次と矢亮、おきくが体験した喜怒哀楽は、私たちが現代に生きて感じているものと変わらないのだということ。その共感の橋渡しとして、現代的な言い回しを一言入れたのではないかと解釈した。
4.0世界で一番の君へ
3.0白黒映像もいい時代劇
3.5せかい
なくてはならないのに人に嫌がられ、下に見られる仕事。
生きていくために働いて、できないからと読み書きを覚えようとして、まっすぐ世界を見つめる中次がとてもかっこよかったです。
中次のようなまっすぐな人にはとても憧れます。
矢亮は、口ばかりで、気持ちは強いけれど心が弱い、と中次に言われていたけれど、泥に塗れて地を張って生きている姿はかっこ悪くも、かっこよく見えました。
なぜ、一瞬だけカラーになったのだろう。
カラーになった瞬間が、中次の矢亮に対しての尊敬が、少し軽蔑に変わった瞬間の出来事だったからなのかな?
おきくが"ちゅうじ"って半紙に書いていて、その姿がとても可愛かったなぁ。私も、小学生の時にノートに好きな人の名前を書いてにこにこしたなぁ。
時代が違えば暮らしも違うけれど、人と人との関わりや感情はずっと変わらない。世界の向こうだって。
この作品のおかげで、"せかい"という言葉が私にとってとても意味のある言葉になりました。
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