愛する人に伝える言葉
劇場公開日:2022年10月7日
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解説・あらすじ
フランスを代表する名優カトリーヌ・ドヌーブと「ピアニスト」のブノワ・マジメルが共演し、ガンで余命宣告を受けた男とその母が穏やかに死と対峙していく姿を描いたヒューマンドラマ。
人生半ばにして膵臓ガンを患ったバンジャマンは、母クリスタルとともに、名医として知られるドクター・エデのもとを訪れる。ステージ4の膵臓ガンは治せないと告げられ自暴自棄になるバンジャマンに対し、エデは病状を緩和する化学療法を提案。エデの助けを借りながら、クリスタルはできる限り気丈に息子の最期を見守ることを決意するが……。
主人公に愛情を寄せる看護師を「モンテーニュ通りのカフェ」のセシル・ドゥ・フランス、主治医のドクター・エデを実際にガンの専門医であるガブリエル・サラが演じる。監督は「太陽のめざめ」のエマニュエル・ベルコ。2022年・第47回セザール賞でマジメルが最優秀主演男優賞を受賞。
2021年製作/122分/G/フランス
原題または英題:De son vivant
配給:ハーク、TMC、S・D・P
劇場公開日:2022年10月7日
スタッフ・キャスト
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見どころ解説・感想 終活を意識する、大切な誰かを見送る、全ての人へ
10月7日から公開される「愛する人に伝える言葉」は、決して悲しい物語ではありません。そして、ただの感動作でもありません。
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2022年8月31日
フォトギャラリー
映画レビュー
3.5季節が巡るように訪れる人生の最期
39歳で末期の膵臓癌を患ったバンジャマンが、拒否していた化学療法を受け入れて身辺整理をし、最後を迎えるまでが淡々と描かれる。
独り身の彼は母親のクリスタルに身の回りの世話をしてもらうが、親子関係が円満というわけではないようだ。19年前に妊娠したことを理由に別れた恋人と、まだ見ぬ息子がオーストラリアにいるが、涙を誘う再会があるわけでもない。季節は静かに進む。
ただ、早すぎる死期に対するバンジャマンの苦悩がひしひしと伝わってくる。彼は演劇講師だが、時折挟まれる彼の授業シーンの寸劇が効果的に彼の心情を暗示している。
エデ医師がドライブ中にバンジャマンの訃報を聞くラストシーンを見て最初は「なんだかこういう映画にしてはドライというか、ビジネスライクだな」と思ってしまった。まだ見ぬ息子に会えないまま、39歳という若さで世を去るバンジャマンを見て私は悲しい気持ちになったが、エデ医師のリアクションには相応のエモーショナルな悲しみがなかったからだ。
ありがちな難病もの映画のセオリーに従えば、二人三脚で治療に携わった医師や、会えなかった息子が死の瞬間には枕元に寄り添って、愁嘆場になりそうなものだ。見ている側もそこで悲しみを共にしてカタルシスを得る。
しかし、そういう定番の流れとは一線を画した顛末にむしろリアリティがある。息子に会えずじまいだったことは一見不幸かもしれないが、初対面の捨てた息子に生きているうちに相対しても、共有する思い出などの接点がないだけに、恨み言を言われて終わる可能性が高い。結果的にこの形が二人にはある意味一番傷つかない形だったように思える。
本作がフォーカスしたいのは、死の瞬間のメロドラマではなく、当人の気が済む形で「人生のデスクの片付け作業」をすることの大切さなのだろう。信頼する医師を決め、体力が持つ限り生徒に演劇を教え、遺産を息子に相続させる手続をとる。母親に大切な5つの言葉を伝える。
そういった片付けを済ませたバンジャマンはきっと安らかに死を迎えられると、エデ医師は思ったのかもしれない。だから訃報に接しても湿っぽさはなかった。医療者の視点で見れば、バンジャマンのおだやかな死はがん患者としては恵まれた形であり、決して嘆くべき知らせではなかったのだろう。春で終わる章立てもそのことを示しているように思える。
ドクター・エデを演じたガブリエル・サラ氏の本職は医師だ。フランスの映画祭でエマニュエル監督の作品を鑑賞し、ディスカッションに参加したことが本作出演のきっかけだという。本作の台本には、サラ氏の医師としての哲学が強く反映されている。折々に挟まれる、音楽を取り入れた医療従事者のグループカウンセリングも、サラ氏が病院で実際におこなっている活動だそうだ。
カトリーヌ・ドヌーブとブノワ・マジメルを相手にほぼ出ずっぱりなのに、全く見劣りしない堂々とした演技で驚いた。実体験からくる説得力がなせる技だろうか。
「地下室のヘンな穴」にも本作にも自然になじむ、ブノワ・マジメルの演技の幅の広さも堪能した。
4.0最後の瞬間をどう生き抜くかを真摯に見つめる
終末医療を題材にするということは、少なからず死と向き合うことを意味する。作り手にとっても、観客にとっても、それは一見、暗くて長いトンネルのように思えるが、この映画が静かに胸を揺さぶるのは、いかに死ぬかではなく、最後の瞬間を「どう生きるか」を描ききっているからだろう。それは決して孤独な戦いではない。ドヌーヴ演じる母もいれば、実際の医師のガブリエル・サラ演じる主治医、看護師たちがいる。それからブノワ・マジメル演じる主人公の「演技講師」という職業もまた深みをもたらす。若い俳優の卵たちに「いかに自分を解放して役を生きるか」を情熱的に教える彼の姿は、まさに自身がありのままに生命と向き合おうとする投影であり、なおかつ後進へ残すことのできる遺言にさえ思えてならない。そして何より医師の言葉が力強い。それは気休めではなく、空虚な希望でもなく、最後の瞬間を生き抜く知恵と覚悟と勇気をもたらしてくれるかのようだ。
3.0自分の死期と死生観にも思いが至る
余生をより良く生きるためには、やはり知った方が良いのでしょうか。自分の死期というものは。
案外、「知らぬが仏」で、知らない方が充実した人生を送れるものでしょうか。
たぶん、告知を希望しなかったとしても、周囲(家族、知人)の言動から、きっと自分の余命限られていることは、うすうす気がついてしまうことでしょうけれども。
評論子も若年・壮年だった頃は、考えてもみなかったことですけれども、「後期高齢者」になるまでは今暫く時間があるとしても、そろそろ人様からは老年と言われる年代になると、「今まで生きてきた時間」よりも「これから生きていく時間」の方が明らかに短いことは、疑う余地のないところです。
そのことに改めて思いが至ると、壮年にして余命を宣告されたバンジャマンの「生き様」か、胸に迫るようでした。
彼は俳優養成所(?)の講師として、すなわち自身も俳優として、それまで幾多の「他人の人生」を演じてきたこととは思うのですけれども。
しかし、いざ降りかかってきた自分の運命(尽きようとする命脈)は、なかなか受け入れることができない―。
その「辛さ」「苦しさ」は、並大抵のものではなかったと推察します。
そして、そういう彼の姿からは、観ている「こちら側」の死生観をも問われているように思われました。
その「痛み」ということでは、佳作としての評価が適切な一本であると思います。評価子は。
(追記)
<映画のことば>
自分の死期は、誰にも分からない。
本作としては、いささか「脇筋」なのかも知れませんけれども。
しかし、只者ではないと思いました。パンジャマンの主治医であるエデ医師は(演じているのが実際のガン専門医であるようですけれども。)。
そして、彼は、物腰や立ち居振舞い等(など)から推すと、どうやら、この病院の院長先生の役どころのようです。
入院患者により良いケアを提供するためとあらば、患者の家族(パンジャマンの母親であるクリスタル)そっちのけで、院内にプロの(?)ダンサーを招き、イベントを開催して、それで入院患者たちを心底から楽しませるー。
その上で、専門家(医師)としての自信に溢れ、患者やその家族に安心感すら与えていた―。
彼の姿は、それだけでも、感動ものだったとすら思います。評論子は。
上掲の映画のことばのとおり、人間、いつ、どこで、どんなふうに最期を迎えるかは分からないのですけれども、自分の最後にもエデ医師のような医者に当たって欲しいと思
ったのは、評論子だけではなかったことと思います。
(追記)
<映画のことば>
患者は、愛する人々と穏やかに最期を迎えるのが、いい。
そして、隠しごとのないこと。
最近、相続に関して「愚行権」という言葉を聞きました(読みました)。
相続で、相続人である子どもたちに継がれる立場の親(被相続人)としては、その財産を浪費することなく、少しでも多く相続人へ引き継ぐのが「最後のお役目」なのかも知れないのですけれども。
もちろん、それが故に警察に捕まったり(刑事事件)、損害賠償金を支払うはめに陥ったり(民事事件)しては元も子もないのではありますけれども。
あくまでも触法しない限りでは、(いわゆる幸福追求権の一つとして憲法13条で保障されている?)愚行権の行使として、評論子の場合はそれが、旅行三昧になるのか、映画三昧になるのか(映画はそんなにお金がかからないか?)、今はまだ歯を食いしばってフルタイムで働いてはいても、余生くらいは、推定相続人様であらせられる子どもたちにも「隠しごとなく」、愚行を楽しめればとも思いました。
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