ヴィレッジ
劇場公開日:2023年4月21日
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解説・あらすじ
「新聞記者」「余命10年」の藤井道人監督のオリジナル脚本を、横浜流星主演で映画化したヒューマンサスペンス。「新聞記者」「ヤクザと家族 The Family」「空白」などを手がけ、2022年6月に他界した河村光庸プロデューサーのプロデュース作品。
美しい集落・霞門村(かもんむら)に暮らす片山優は、村の伝統として受け継がれてきた神秘的な薪能に魅せられ、能教室に通うほどになっていた。しかし、村にゴミの最終処分場が建設されることになり、その建設をめぐるある事件によって、優の人生は大きく狂っていく。母親が抱えた借金の返済のため処理施設で働くことになった優は、仲間内からいじめの標的となり、孤独に耐えながら希望のない毎日を送る。そんな片山の日常が、幼なじみの美咲が東京から戻ったことをきっかけに大きく動き出す。
優役を横浜、美咲役を黒木華が演じるほか、古田新太、中村獅童 、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、作間龍斗、杉本哲太らが顔をそろえる。
2023年製作/120分/PG12/日本
配給:KADOKAWA、スターサンズ
劇場公開日:2023年4月21日
スタッフ・キャスト
- 監督
- 藤井道人
- 脚本
- 藤井道人
- 企画
- 河村光庸
- 製作
- 河村光庸
- エグゼクティブプロデューサー
- 河村光庸
- 製作
- 堀内大示
- 和田佳恵
- 石垣裕之
- 伊達百合
- 企画プロデュース
- 椿宜和
- 野副亮子
- 柳原雅美
- プロデューサー
- 行実良
- 角田道明
- アソシエイトプロデューサー
- 長井龍
- ラインプロデューサー
- 吉田信一郎
- 撮影
- 川上智之
- 照明
- 上野甲子朗
- 録音
- 岡本立洋
- 美術
- 部谷京子
- スタイリスト
- 皆川美絵
- ヘアメイク
- 橋本申二
- 編集
- 古川達馬
- 音楽
- 岩代太郎
- CGプロデューサー
- 平野宏治
- コンセプトデザイン
- 平野宏治
- VFXスーパーバイザー
- 吹谷健
- シニアカラリスト
- 石山将弘
- オンラインエディター
- 亀山和寛
- スーパーバイジングサウンドエディター
- 勝俣まさとし
- リレコーディングミキサー
- 浜田洋輔
- 助監督
- 逢坂元
- キャスティング
- 杉山麻衣
- 能楽監修
- 近衞忠大
- 能楽指導
- 塩津哲生
- 塩津圭介
- 制作担当
- 菱川直樹
“観る楽しさ”倍増する特集をチェック!
解説・見どころ/ディープな衝撃作…閉鎖的な村を舞台に、若者の過酷な日常を描く
観る者に容赦のない刺激と余韻をブチかます、"尖りちらかした"映画が誕生した。
提供:KADOKAWA、スターサンズこの特集を読むインタビュー
【インタビュー】横浜流星&藤井道人監督が築き上げた“信頼関係” 「藤井組には孤独がない」
俳優の横浜流星と藤井道人監督が再タッグを組んだ映画「ヴィレッジ」が、4月21日から公開された。描かれるのは、「村」という閉ざされた世界を舞台に、そこで生きる人々のきれいごとだけでは生きていけないリアルな姿。出会いから7年、駆け出しの頃...
このインタビューを読むヴィレッジ の関連作を観る
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映画レビュー
3.0横浜流星の演技を堪能、物語のテーマはピンぼけ気味
予告で勝手に連想していたイメージがある。閉鎖的な村民が住む村の超法規的な掟、ホラーチックなサスペンス。
ふたを開けてみるとその予想とは少し違った。まず、明らかにおかしな村民は大橋父子の2人だけだった。序盤に面をかぶった村民の行進という思わせぶりな場面はあったが、警察はきちんと機能していたし、道の駅のような施設も地域住民に馴染んでいた。ごみ処理場の人間関係も、透がいなくなった後は普通に和やかなものになった。犯罪者の息子である優を村全体が疎んじていたなら、透が消えた後も疎外されていたはずだが、そんなことは全くなかった。
藤井監督は、本作の村を日本社会の縮図だと思って撮ったと言っている。
しかし、本作で描かれた悲劇は、村全体の在り方に起因するというより、ひとえに大橋家の人間たちの特殊性が引き起こしたもののように見える。
大橋家はその地に代々根付いた横暴な権力者(ありがちな暗喩としては政治家)、周囲の村民は彼らに物申せず横暴を許してしまっている民衆の象徴、といった感じなのだろうか。
村の閉鎖性、そこで未来を担う若者の犯した罪、という要素は、映画「ノイズ」を思い出させる。こちらの話の方が、誇張されてはいたが、閉鎖的な村落の隠蔽体質をよく描いていた。
冒頭で、能の「邯鄲(かんたん)」からのエピグラフが示される。物語の中で「邯鄲」の筋についての説明があり、光吉が能を舞う描写や邯鄲男の面も登場する。
ここまで「邯鄲」をフィーチャーしているのに、この村で起こることと「邯鄲」の物語のメッセージが、今ひとつ噛み合っていないように見えた。
監督はインタビューで本作を「一炊の夢の青年の転落劇」と表現している。邯鄲の物語のピースのひとつを借りた、くらいの関係性ということだろうか。美咲に助けてもらっていろいろと上手く行きかけたけどそれらは所詮夢のようなものだった、という……何だか絶望的だし、全体の流れから見るとそこが本筋だとは思えない。
監督は人によって解釈が違ってくる作品を目指したそうだが、日本の縮図的設定と能の演目、加えて環境問題を並べたことで、結果的にポイントが分散し、メッセージが不明瞭になっている気がした。どれか削った方がよかったように思える。
人によって解釈が変わる良作は、受け止める側の個々にとっては明瞭なメッセージが見えているものだ。思わせぶりなものを複数入れ込む手法は、焦点がぼやけるだけで、それは「人によって解釈が変わる作品」とは言えないのではないだろうか。
もともと横浜流星の演技を見たくて鑑賞したのだが、その点では大満足だった。絶望しきって生気の消えた瞳、その後美咲に心を開いてからの優の表情の違い、追い詰められた時の眼光など、迫真の演技だった。
一ノ瀬ワタルは、さすがの怖さ。演技だと頭では分かっていても、横浜流星の命の心配をしてしまった。
本当に死にそうなほど透が優をタコ殴りにしていたので、死体遺棄をせず警察に届け出れば正当防衛が成立していたのでは、という気もする。
3.5キラキラした地方復興の裏
地方創生の難しさというか、過疎化が各地で進む日本ならではの物語だなと思った。産廃処理の補助金頼みで運営されている自治体、その誘致も運営もきれいごとでルール通りにやっているだけではままならない。村を守りたいという意志はウソではないが、守るためにたくさんのウソが必要になる。村のPR事業に駆り出されることになった主人公も、ウソが必要である現実にのみ込まれていく。表向きのキラキラ感との現実のギャップがすごい。
主演の横浜流星がすごくいい。前半のにごった目つきから、生き生きとしてくる中盤への変化、そして転落しかける終盤へと変わりっぷりが上手い。彼を始め役者がみなよかった。特に奥平大兼の捨てられた子犬のような青年役がはまっている。一ノ瀬ワタルの迫力は特筆すべきものがある。ちょっと他の俳優には出せない味がある。
村の閉塞社会は、息苦しいが、その中で守られてきた美しい伝統もまた存在したいたりすること描かれているのも良い。社会全体が下降している日本の現実の一端に確実に触れた作品だと思う。
4.0藤井道人監督、期待値の高さゆえの
観始めて早々に、これは同じ藤井道人監督の「デイアンドナイト」(2019)とよく似た話ではないかと感じ、その感覚はずっと続いた。地方の閉鎖的なコミュニティー、地元の権力者(組織)の不正と抗って自殺した父親、主人公が巻き込まれていく昼の表向きの仕事と夜の裏稼業、内に募らせた恨みや怒りを外からのプレッシャーによりついに爆発させる主人公。
生前の河村光庸プロデューサーから与えられた「お面をかぶった人々の行列」「能」というお題を取り入れて、狭い村ならでは同調圧力や因習を強調してはいるものの、「デイアンドナイト」と「ヴィレッジ」は同工異曲と言えるだろう。
河村氏が立ち上げたスターサンズが制作と配給に名を連ねた作品でもあり、藤井監督とスターサンズのタッグでは「新聞記者」(2019)が高く評価された。スターサンズは「パンケーキを毒見する」や「妖怪の孫」といった当代の政権や権力者を批評するドキュメンタリー映画も手がけるなど、今の日本では本当に希少で貴重な存在だ。
そんな藤井監督とスターサンズの最新のタッグということで、当然期待値も高かったが、先述のように既視感のあるストーリーが惜しい。社会派のスタンスは評価するが、もっと新しいものを見せてほしかったというか。ついでに書くと、「宮本から君へ」(これも河村プロデュース、スターサンズ制作)に出ていた屈強でこわもてのラガーマン役の一ノ瀬ワタルが本作にも出演しており、「宮本から君へ」を鑑賞済みの人なら彼の役に“嫌な予感”を抱くだろうが、やはり予想通りの展開に。この点も既視感を強める要素になっている。
それから、作中に登場する能の演目「邯鄲」(かんたん)で語られる「平民から栄華を極めて五十年、と思ったらほんのひとときの夢だった」という話と、横浜流星が演じる優の浮沈との呼応もやや表層的。人生とはしょせん儚い夢なのか、というテーマをさらに深掘りしてほしかった。
4.0クローズド・ヴィレッジ
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3月21日更新
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