余命10年
劇場公開日:2022年3月4日
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解説・あらすじ
SNSを中心に反響を呼んだ小坂流加の同名恋愛小説を、小松菜奈と坂口健太郎の主演、「新聞記者」の藤井道人監督がメガホンで映画化。数万人に1人という不治の病に冒され余命10年を宣告された20歳の茉莉は、生きることに執着しないよう、恋だけはしないことを心に決めていた。ところがある日、地元の同窓会で和人と出会い恋に落ちたことで、彼女の最後の10年は大きく変わっていく。脚本は「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の岡田惠和と「凛 りん」の渡邉真子。「君の名は。」「天気の子」など新海誠監督のアニメーション映画で音楽を手がけてきた人気ロックバンドの「RADWIMPS」が、実写映画で初めて劇伴音楽を担当。
2022年製作/125分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2022年3月4日
スタッフ・キャスト
インタビュー
小松菜奈×坂口健太郎、初共演の場で探求し続けた“本当に生きる”ということ
1月24日、小松菜奈の瞳から涙が零れ落ちた。映画「余命10年」のジャパンプレミアイベント。全身全霊で生き抜いた「人生」が、多くの人々に届いた瞬間だった。切なすぎる小説としてSNS等で反響が広がり、累計発行部数65万部を突破した小説「余...
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映画レビュー
4.0生きることの大切さ
私は原作小説を全く知らないだけでなく、邦画実写にあまり興味がないため、見る前はそこまで期待していませんでした。しかし、いざ見てみるとラブストーリーでありながら人間関係が丁寧に描写されており、様々な人との関わりを通して2人が成長する物語に感動しました。
治らない病気を持つ茉莉と生きる意味を失った和人が、お互いが出会ったことでそれぞれの人生が大きく変わっていく展開に惹かれました。
茉莉が重い病気と闘いながらも、家族や友人との時間を目一杯過ごそうとする姿に感動し、自分のできる範囲で楽しむことの大切さが伝わってきました。また、和人が初めは死にたいと思っていたのが、茉莉と出会ったことで彼女との時間を大切にするようになるなど、茉莉のために頑張って生きようとする姿にも感情移入しました。
今のご時世は、失業や病気などで生きる意味を見失っている人が多くいると思います。
この映画を見ることで、生きることの素晴らしさを学べるだけでなく、温かいヒューマンドラマに感動できると考えました。
4.0洗練された脚本、俳優らの自然体を引き出す演出により、難病恋愛ドラマの水準を引き上げた
とりわけ日本で大人気のサブジャンルである難病恋愛物のありきたりな企画と思いきや、原作者の小坂流加は大学卒業後に難病を患いながら執筆活動を行い、2007年に同名小説で作家デビューしたのち、2017年に病状が悪化し死去したという。
共同脚本に岡田惠和、監督に藤井道人、主演は茉莉役の小松菜奈と和人役の坂口健太郎、さらには友人役で山田裕貴と奈緒、茉莉の家族役に黒木華、原日出子、松重豊など、スタッフ・キャストともに強力な布陣。本作の差別化ポイントは、効果的な治療法がなく患者のほとんどが10年も生き延びられない病ではあるが、主人公が20代の約10年間で死を意識しながらもほぼ日常生活を送れているという点だろう。「限られた人生の時間を生きること」というテーマが、洗練された脚本で積み上げられ、役を生きる俳優たちの自然な演技と、それを引き出す巧みな演出により、安易なお涙頂戴に寄らず丁寧に情感を伝える好作に仕上がった。
原作小説の版元である文芸社のオフィスが、劇中に登場する。余談ながら、文芸社が新宿に移転する前の飯田橋のオフィスには仕事で何度か訪ねたことがあり、打ち合わせの場面では当時の編集者たちを懐かしく思い出した。
4.0小松菜奈の凄味を味わう作品
今をときめく藤井道人監督の最新作が「余命10年」。
タイトルから浮上してくる「きっとこんな作品なんだろうな」という思いを、良い意味で打ち砕いてくれる良作。とにもかくにも、小松菜奈と坂口健太郎が良い。なかでも、小松からは凄味すら感じられ、役者としての充実期がこれから長く続きそうな予感すら抱かせるものだ。
5.0これまでの似たような作品とは一線を画す、実話をベースに「邦画の一つの到達点」と言える作品。
まず「余命10年」というタイトルで「以前に流行ったような映画?」と条件反射的に思ってしまいがちですが、この作品は過去のどの作品とも違っていました。
数万人に1人という確率の不治の病に罹ってしまい、10年も生きられない状況に主人公(小松菜奈)が立たされます。
ただ、主人公は、決して悲観的になり過ぎずに現実を生きようとします。家族以外の周囲には自分の境遇を知らせずに……。
この映画は「ベースとなる実話」が存在していて、それを参考にしながら作り上げている面があるので、何と言っても「物語の強さ」があります。
また本作では、時には「言葉」よりも雄弁に「劇伴」と「映像」が語ったりもしています。
心理描写を豊かにするため四季の風景を実際に映し出そうと邦画実写では異例な撮影に1年かける等かなり映像は見事なシーンが多くなっています。
例えばアニメーション映画でよく使われる「桜の花びらが風に舞う印象的なシーン」がありますが、それを見事に実写化もできていて、物凄く感慨深い良いシーンになっています。
そして、その映像を劇伴が優しく包み込んでいます。
「10年間」という月日を125分で体感できるのは、やはり冒頭から登場する“ビデオカメラ”という小道具も効いていました。
さらに「10年間」という時の流れを感じさせながら同一人物で演じ切るのは難しい面もありますが、メインの小松菜奈と坂口健太郎、山田裕貴、奈緒らは見事に演じ切っていました。
本作を見て改めて実感したのは、リアリティーの重要さです。
「奇跡」ばかりが映画ではなく、「奇跡が起こらない現実」にこそリアリティーが溢れていて、等身大の主人公らに素直に寄り添える面もあると思います。
「演技×物語×演出」のどれもが見事にハマった「名作」の誕生だと言えます。
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