孤狼の血 LEVEL2
劇場公開日:2021年8月20日
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解説・あらすじ
柚月裕子の小説を原作に、広島の架空都市を舞台に警察とやくざの攻防戦を過激に描いて評判を呼んだ、白石和彌監督による「孤狼の血」の続編。前作で新人刑事として登場した松坂桃李演じる日岡秀一を主人公に、3年後の呉原を舞台にした物語が完全オリジナルストーリーで展開する。3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれて殺害された、伝説のマル暴刑事・大上の跡を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡。権力を用い、裏の社会を取り仕切る日岡に立ちはだかったのは、上林組組長・上林成浩だった。悪魔のような上林によって、呉原の危うい秩序が崩れていく。日岡役を松坂、上林役を鈴木亮平が演じ、吉田鋼太郎、村上虹郎、西野七瀬、中村梅雀、滝藤賢一、中村獅童、斎藤工らが脇を固める。前作に続き、白石和彌監督がメガホンを取った。
2021年製作/139分/R15+/日本
配給:東映
劇場公開日:2021年8月20日
スタッフ・キャスト
- 監督
- 白石和彌
- 原作
- 柚月裕子
- 脚本
- 池上純哉
- 製作
- 村松秀信
- 木下直哉
- 山元一朗
- 丸橋哲彦
- 堀内大示
- 與田尚志
- 藤田浩幸
- 五老剛
- 吉村和文
- 丸山伸一
- 田中祐介
- 檜原麻希
- 鈴木貴幸
- 企画プロデュース
- 紀伊宗之
- プロデューサー
- 天野和人
- 高橋大典
- キャスティングプロデューサー
- 福岡康裕
- 音楽プロデューサー
- 津島玄一
- 共同プロデューサー
- 飯田雅裕
- 撮影
- 加藤航平
- 照明
- 川井稔
- 録音
- 浦田和治
- 美術
- 今村力
- 衣装
- 森口誠治
- 装飾
- 大庭信正
- 佐原敦史
- ヘアメイク
- 西村佳苗子
- 特殊メイク
- 藤原カクセイ
- 特殊造形デザイン
- 藤原カクセイ
- 特機
- 上野隆治
- スタントコーディネーター
- 吉田浩之
- 後藤健
- ガンエフェクト
- 納富貴久男
- カースタント
- 永田崇明
- 操演
- 羽鳥博幸
- 特殊効果
- 羽鳥博幸
- 編集
- 加藤ひとみ
- 音楽
- 安川午朗
- 音響効果
- 柴崎憲治
- VFXスーパーバイザー
- 渡邊祐示
- 小坂一順
- 助監督
- 山本亮
- 制作担当
- 前芝啓介
- スクリプター
- 長坂由起子
- ラインプロデューサー
- 吉崎秀一
- プロダクション統括
- 木次谷良助
- 俳優担当
- 高橋雄三
受賞歴
第45回 日本アカデミー賞(2022年)
受賞
最優秀助演男優賞 | 鈴木亮平 |
---|
インタビュー
松坂桃李と鈴木亮平が思いを巡らす「血沸き肉躍った」瞬間
飢えた"狼"たちが、3年ぶりに日本映画界へ戻ってきた――。それも、前回を凌ぐ圧倒的な熱量を携えて。「孤狼の血 LEVEL2」には、東映の伝統ともいえる任侠映画路線の"魂"が引き継がれている。その中心で"座長"として目をギラギラと光らせ...
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2023年8月11日
映画評論
白石和彌監督版「仁義なき戦い 広島死闘篇」に見る敗者の美学
壮絶なクライマックスを見届けた直後に感じたのは、「孤狼の血 LEVEL2」は白石和彌監督版「仁義なき戦い 広島死闘篇」という位置づけになるということ。それも当然といえば当然の話で、柚月裕子が手がけた原作小説が「仁義なき戦い」シリーズと「県警対組織暴力」に...
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映画レビュー
4.0キャスティングの妙が光る「時代劇」
前作でミイラ取りがミイラになった日岡の、怪物上林との対決を描く続編オリジナルストーリー。
暴力も嘘も世間的には当然アウトなレベルなんだけど、映画になるとカッコよく見えるから困ってしまう。何だろう、ヤクザ映画のこの引力は。
面白いと公言するのが憚られるほど暴力的で、けれどその行動原理にむき身の人間の姿が見えるからか、抗い難い魅力がある。
キャスティングもいい。前作以降、続編にヤクザ役で出たいと申し出る俳優が引きも切らず、スムーズに配役が決まったそうだ。
よかった配役を挙げ出すときりがないが、やはり鈴木亮平を推さないわけにはいかない。何なんでしょうねこの人。
俳優だから当たり前と言えばそれまでなんだけど、救急救命医も田舎の駐在さんも死の床の病人も変態仮面も、体型まで変えて全部ハマり役にするそのポテンシャル。演技と無関係だが鑑賞特典のポストカードの絵まで描いていて、万能感がすごい。
彼の上林は本当に怖かった。チンタの顔を両手で包む時、親指ふわふわさせてるだけでもう恐怖だった。モデルあがりのガタイのよさが、笑った時の形のよい口元までもが、威圧感に変わっていた。ヤクザの怖さというよりサイコパスの怖さだが、眩しいほどのインパクトに取り込まれてしまった。彼の行動の背景が、ちょっと類型的なのは惜しかった。
村上虹郎はいい役をもらえたと思う。中村梅雀、本当に上手い。吉田鋼太郎は個人的に好き。こんな作品でも滲んでしまうおじさんのかわいげ。
松坂桃李の演技も十分見応えがあったが、敢えて言えば肩幅があまりないのにあの痩せ方(役作りで痩せたとのこと)が、ギラギラ感を出すのに正解かどうかよく分からなかった。前作では大上の存在感と、新人日岡の心境がドラスティックに変化していくところが見どころだったので、それらのない本作を並べてみるとちょっと荷が重かったように感じてしまった。
設定上は大上の後継は日岡だが、作品の華を作るキャラという立ち位置で見れば、上林が大上の後継なのだろう。
ラストは原作との辻褄合わせなのかも知れないが、作品単体で見ると締まらない印象で勿体なかった。
今更野暮な話かも知れないが。
前作の大上や本作の日岡の姿は、実在して欲しい刑事の姿として描かれているわけではない。大前提として、どうしようもなく悪と癒着し切った警察組織の存在があり(そしてこれもフィクションである。現実の警察がどの程度清廉潔白かは知らないが)、カウンターかつおためごかしの正義への絶望を象徴する存在としてやむを得ず出現したアンチヒーローだ。
加えて、これは暴対法施行前の話だ。現在は、大上や日岡が「必要悪」としてのリアリティを持つ時代ではない。
本作のルーツとも言える「仁義なき戦い」(原作者は「仁義〜」なしに原作執筆はあり得なかったと言っている)は、組長の獄中手記を元にしており、公開時の時代背景を踏まえてもそれなりに当時のリアルタイムな現実に通じる面があっただろう。
そんな金字塔的作品の魅力の継承を目指した本作だが、良くも悪くもポリコレ全盛のこのご時世にあっては、いっそ時代劇と見なしたほうがいいように思う。
古臭いという意味では決してなく、現代の価値観に照らして野暮なことを言ったりせず、この作品世界が持つ魅力の普遍的な部分を楽しんだほうがいいということ。それと、現実に大上や日岡のような刑事がいてほしいかというとそれもまた違う、ということだ。
余談だが、上林が乗っていた車のナンバーが「59-10」(極道)だったのでちょっと笑ってしまった。
4.5鈴木亮平の怪演が絶品、新たな出演者が加わって描かれる抗争劇
鈴木亮平のヒールっぷりが凄いという前評判を聞いて、前作を鑑賞してから劇場に足を運びました。世界遺産がお好きで、気のいい力持ち的なイメージのある鈴木氏が演じる上林の突き抜けた極悪非道ぶりは期待以上に素晴らしく絶品でした。
1作目での大上(役所広司)とのバディを経て、マル暴刑事として覚醒した日岡(松坂桃李)のヒリヒリした感じも雰囲気たっぷりで、上林との血で血を洗う戦いで物語をグイグイ引っ張っていきます。回想シーンにはあえて大上のシーンを入れなかったそうですが、それによって不在感が際立ちつつ日岡の無軌道感もでていて、物語としては連続しているものの本作だけで独立した作品になっている強さがあるように思いました。
日岡と新たにバディを組む老刑事役の中村梅雀、本作のキーマンのひとりを演じる村上虹郎、変則的なヒロインとも言える西野七瀬、組トップの妻役のかたせ梨乃ら新たなキャストも好演ばかり。3作目もぜひ作ってほしいです。
4.0喰らい続ける男たち
白石和彌監督は振り切ることに決めていた。昭和の終わりから平成の始めへと時代が動く。手打ちによって二大組織の均衡が保たれている中、服役中の荒くれ者が出所してくる。見送る看守に「世話になった」と一瞥すると、不気味な微笑みを残して迎えの車に乗り込む。
復讐の序章。穏やかな空気が流れるピアノ教室に現れた男は、容赦なく女の両目に親指をぶち込む。問答無用の粛正、ただならぬ空気の先に女の兄である看守の写真が浮かび上がる。
広島を支配した親分の血筋を継ぐ上林は、時代は変わっただとか、今はビジネスの時代だなどとほざく上層部が気に入らない。復讐と復権を果たすために、誰も信じないことで自らを奮い立たせていく。
『虎狼の血』をLEVEL2に引き上げ、前作とは異なるテンションを付加するためには、凶暴で手のつけられない男が必要だった。鬼神、上林を託されたのは鈴木亮平だ。
優等生的な役柄が多かった俳優が余計な負荷を振り払い、髪を短く刈り込み、まるで仁王のような佇まいで他人を見下ろす。鍛えられた身体に刻まれた背中の刺青は入所によって途中で止まったまま。その空白を埋めるかのように男は性急に動く。鈴木は「最も凶暴な男」のひとりとして東映ヤクザ映画史に刻まれる上林を激烈に演じきる。
猟奇殺人事件が発端となり、捜査本部に招集された日岡(松坂桃李)と復讐鬼と化した上林が交錯していく。前作に続いて登場する毒気の強いキャラクターたちも健在だ。
そしてもうひとつ。この映画を観て俄然食欲がわいた。村上虹郎が演じる幸太はことあるごとに姉の元を訪れ「腹が減った、何か食わせてくれ」と焼きそばを喰らう。新たにコンビを組む瀬島(中村梅雀)は「相棒なんだからメシを食おう」と誘う。渋々応じた日岡の前にはビールと家庭料理が並び、焼酎をしこたま飲んだ後には広島名物「たこ飯」が振る舞われる。
活力は喰らうことで生まれることを監督は知っている。この作品は食欲をかき立てる力を持つ。
4.0鈴木亮平が演じる上林という❝モンスター❞の登場で、松坂桃李が演じる日岡刑事の❝狼❞化へのレベルが上がる。
前作の3年後(=平成3年)を完全オリジナルストーリーで描いた本作。
「LEVEL2」を見ても、この「孤狼の血」シリーズは、役者から製作陣まで気合が入りまくっているのがよく伝わります。
特に本作では、息もつかせぬような演技の応酬が繰り広げられ役者陣の本作にかける意気込みの強さを感じ取れます。
中でも鈴木亮平が演じる上林という❝モンスター❞の登場が本作の核となっていて、「R15+」に相応しい日本映画史に残り得る怪演を見せ続けます。
タイトルが「LEVEL2」となったことに合わせてか、主演の松坂桃李が演じる日岡刑事は、前作から狂気のレベルが増しています。ただ、前作の役所広司が演じる大上刑事(ガミさん)の、狂暴すぎる❝狼❞の領域にまでは行っていなく、日岡刑事が❝ガミさん化❞するまでは、この「孤狼の血」シリーズは続いてほしいところです。
今のところ、前作で日本アカデミー賞の主演男優賞と助演男優賞を受賞した役所広司と松坂桃李のコンビが最強に良いので、本シリーズには更なる高みを期待します。
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