パラダイス・ロスト
劇場公開日:2020年3月20日
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解説・あらすじ
詩人と映画監督という2つの分野で活動する福間健二の長編監督第6作。東京郊外の人気のない場所で、山口慎也という男がひとり、心臓発作を起こして死んだ。彼はネットの古本屋を仕事にしており、原民喜の小説と木下夕爾の詩が好きだった。妻の亜矢子は夫の死後、夢の中で慎也に会い、彼の残したノートの言葉を読み、ときには夫がまだそばにいると感じるが……。夫を失った亜矢子がどう生きるか、また、亜矢子の友人ら取り巻く人々が、どのように希望を取り戻していくのかを描いていく。主人公の亜矢子役を「岬の兄妹」「菊とギロチン」の和田光沙が演じるほか、福間監督作「あるいは佐々木ユキ」で主人公・佐々木ユキを演じた小原早織が7年後の同役で出演。
2019年製作/106分/日本
配給:tough mama
劇場公開日:2020年3月20日
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
2.0なかなか難しい。ただもっと和田光沙さんを欲したかったかな。
昨年観賞しました「岬の兄妹」の和田光沙さんが主演と言う事が気になって観賞しました。
で、感想はと言うと…う~ん、難しい…
あらすじである程度のストーリーラインは理解していましたが、それでもかなり難解な部分が多く、正直解釈が難しい。
観る人を選ぶと言えばそうなんですが、映画としての面白さが正直見出せ難い。
詩人と映画監督としての2つの顔を持つ福間健二監督の詩人の顔がかなり出ているのか、独創的な部分で一度置いてけぼりを食らうとなかなか付いていけない感じで、なんとなく寺山修司作品を思い出しました。
個人的に和田光沙さんの女優としての個性と言うか特異性が活かしきれてない感じが勿体無い感じ。
また、かなり演劇チックな演出も映画としての意図が感じられないんですよね。
カメラワークもこうでなければいけないと言うのがなくても、こんな感じでやってみたと言う理由が無ければ、ただ奇をてらっただけになる。
観る側にもそれを押し付けるのも傲慢にもなる。
そこの境をちょっと越えちゃってるかなぁ。
映画には映画としての良さと特異性があるし、演劇には演劇としての良さと特異性がある。
この作品を舞台で観たら感想は変わるかも知れませんが、それはたられば話なので、この作品の感想としてはちょっと個人的には響かなかったのは割りと期待してきたので少し肩透かしです。
上映後に福間監督の舞台挨拶があって、福間監督の話を聞けて、ある程度府に落ちた所もあるんですが、それはあくまでもボーナストラックなので、映画だけを観て理解が出来ないのは個人的には無し。
ただ、他の方が書かれてましたが、表現の多様性と理解と方向性の有無の確認を考えると稀有な作品かと思います。
ただ、やっぱりもう少し和田光沙さんを上手く使えてて、もっと噛み砕ければ良かったかなぁw
5.0生きていく力を与えてくれる作品
主役の亜矢子(和田光沙さん)が、ゼロの状況から前向きに、自然体で生きて行く姿は、かっこいいと思いました。生と死/見えるものと見えないものに挑んだ監督の期待に十分応えていました。
「福間組」の俳優の皆さま、ほかすべて安心感/安定感あり、どの場面も見応え、味わい深いものです。
特に、亜矢子と翔(我妻天湖さん)との言葉のやりとりは、福間監督ならでは、の味が確認できました。我妻さん自身、十分に考えたというセリフの箇所が出てくる場面(特に2箇所)は、とても光輝いています。生き生きしています。その2つの中の最後の方は、非常に高いレベルの仕上がりと思います。言葉も、二人の表情も抜群。一番、印象に残りました。
この世に生きていくのは、日々いろいろな出来事があり、死者にも見られ、共存し、進むのだと思いました。生きていく力とは、そういうものなのだと。
感染症拡大の厳しい状況下、現在を生きる世界中、すべての方々に、何度も見て欲しい、大満足の作品です。
2.5ダサい
いや〜、観づらいガーエーでした。作品のテーマは愛する人を失った後の再生という自分の大好物だったのですが、コラージュ的な作風と演劇っぽい演出が肌に合いませんでした。
訴えかけてくるものはポジティブで希望があり、清々しく感じました。
特に、日常描写を重視している点は好感が持てます。日々の生活を象徴する食事シーンが多く(しかも孤食ではなく様々な人たちと食卓を囲む)、新しい居場所や出会いによって再生がなされていく主人公の姿は、なかなか良いと感じました。
しかし、ゴダールっぽい断片的な作風は結構難解で咀嚼しづらい。しかも、ゴダールみたいに洒落ておらず、なんか全体的にダサいんですよ!だから観づらい!
日常を生きることがテーマなので野暮ったい画になるのは致し方ないけど、野暮ったいものを野暮ったく撮っているように思え、観る楽しみを感じられませんでした。
また、キャラ造形の細いところが不自然でダサいのです。亡くなった主人公の恋人の母親がパティ・スミス好きで自らをパンクと呼ぶのですが、無理しているように思えてキツい。主人公の弟はアンチレイシズムのデモに行ったりするのですが、上っ面な討論とかしていてダサいです。なんか、パンクやアンチレイシズム自体がダサく思えてしまう。
脱力ギャグの画がこれまたダサい。森を彷徨う幽霊(死神?)の手がてろんと垂れ下がったクラッシック幽霊の手をしていて、ガチならば痛いしギャグならば寒い。パンク母の夫であるギタリスト父がエアギターするシーンとか、死んだ息子がそれに合わせてステップ踏むとか、失敗したジム・ジャームッシュって感じでキツかったです。
一事が万事こんな雰囲気なので、急に舞台っぽくなって登場人物が詩を朗読し始めたりすると、ただでさえ違和感が強いのに倍増されるように感じます。
センスって、才能的な要素が強いように思えます。もともとセンスのない人がセンスで勝負しようとすると大怪我するな、と本作を観て思いました。
福間監督は詩人として大成されているようですし、大学教授や翻訳家としても活躍されているそうです。本作を観て、福間監督は映像ではなく文字のセンスを持った人なんだろうなぁとしみじみ思いました。
5.0この時代だからこそ多様な表現の重要性を感じる
初日満席だった詩人で映画監督の福間健二監督の最新作『 パラダイス・ロスト 』観てきました。
昨年製作にもかかわらず、今この瞬間を切り取ったような作品でした。
観に行ける人は是非 今この時期に観るべき映画だと思います。
福間監督はよく自分があれこれ指示するよりもそれぞれの良い面をだした方が面白いものができると話していますが、表現には製作者の意図を超えるものができあがる時があって、それを意識して作っている所が福間作品の面白さなんだろうと思います。
昨年の製作時に監督、俳優、スタッフが無意識的に予見した“今”から再生するヒントもこの映画には込められていると思う。
2020.06.21
緊急事態宣言解除後に2回目を鑑賞。
映画は死者と生者の対話になっていますが、観ていて、大きく価値観が変わった前と後の私(もしくは社会)の対話を実体験しているように感じられ、私たちと亜矢子の今が同じものであってほしいと願わずにはいられない。
劇中、登場人物が突然カメラ目線になり、これは誰かの視線で撮られているんだと気付かされるが、いくつかのシーンでカメラが視線を逸らしたり動揺したりと演技をする。
ここまでカメラに演技をさせる監督は福間監督くらいじゃないのかな。
福間監督は『止められるか、俺たちを』に出てくるくらい現代でインディーズ映画のレジェンド監督の1人と言ってもいいので、ぜひ多くの人に劇場に足を運んで新作を観てもらいたい。
劇中の亜矢子の絵は本当に和田さんが描いたものだそうですよ。
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