シェイクスピアの庭
劇場公開日:2020年3月6日
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解説・あらすじ
「ヘンリー五世」「から騒ぎ」「ハムレット」と、シェイクスピア作品を数多く手がけてきたケネス・ブラナーが、シェイクスピアの人生最後の3年間を描いた監督・主演作。1613年6月、「ヘンリー八世」上演中のグローブ座が大火災により焼失した。断筆したウィリアム・シェイクスピアはロンドンを去り、家族が暮らす故郷のストラットフォード・アポン・エイボンへと戻った。20年以上の間、ほとんど顔を合わせることのなかった主人の帰還に妻と娘たちは戸惑いを隠せなかった。そんな中、シェイクスピアは17年前に幼くしてこの世を去った最愛の息子を悼むために、庭を造ることを思い立つ。シェイクスピア役をブラナーが演じるほか、オスカー女優のジュディ・デンチ、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのイアン・マッケランら豪華なキャストが顔をそろえる。
2018年製作/101分/G/イギリス
原題または英題:All Is True
配給:ハーク
劇場公開日:2020年3月6日
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
4.0父、帰る
シェイクスピアについては学校で習ったり、代表作の一部を読んだ程度の知識。でも、肖像画とそっくりなケネス・ブラナー≒シェイクスピアにびっくり。
シェイクスピア劇で名を上げたケネス・ブラナーだからこその作品。
説明パート以外の会話、独白シーンには舞台劇のようなライティングとセリフに集中できるようにかぶる音を極力少なくしている。背景もあまり入らないようにしているのではないだろうか。一方、ストラトフォード・アポン・エイヴォンの村の風景や屋敷、庭を描くには映画ならではの美しい陽の光や季節の空の色を取り込んでいる。
1600年代初頭の人物ではあるが、作品の数ほどは彼個人の情報はあまり残っていなかったように思う。別人説や複数説が出るほどだ。
原題「All Is True」とあるようにシェイクスピア研究で「現在わかってきたこと」を軸に設定は組まれている。
物語はまさに「父、帰る」である。
ここからは稀代の名劇作家であるシェイクスピアですらコントロールができない家族ドラマが始まる。人権もへったくれもない時代なので、それぞれが抱く価値観も今のものとは違う。しかし、本当にそうだろうか?
価値観という外枠は現代とは違えども、その枠の中で渦巻く感情は不変ではなかろうか。
シェイクスピアの作品の多くが今もなお愛されているのは、観客が渦巻く感情や溢れ出す感情に共感できるからではないだろうか。
そんな感情を舞台劇よろしく長台詞で魅せて来る。シェイクスピアは作中の人物の心中を理解し物語に組み込んでいったが、生身の家族を理解するのは苦戦したのではないだろうか。(ブラナーの解釈だと)
ささやかで、分相応の人生が最後に待っていた。「父、塵に帰る」。余韻がいい。
面白いか面白くないかでいうと、そんなに面白くないと思う。でも、好きか嫌いかでいうと好きな作品だ。
4.0フィクションを交えつつ、ありえたかもしれない文豪の「心の内側」を雑味なく描ききった名作
ロンドンのグローヴ座消失後、故郷のストラットフォード・アポン・エイヴォンへと帰ってその後は一本も戯曲を書かなかったシェイクスピアの余生を描いた物語。謎に包まれた彼の人生ゆえ当然ながらフィクションも混ざっているが、他でもない英国を代表するシェイクスピア表現者であるケネス・ブラナーが主演、監督を務めているので、この「フィクション」にもある種の説得力というか、ありえたかもしれない文豪の心の内側をよくぞこれほど雑味なく描いたなという旨さがある。とりわけ興味深いのは、これまでありったけの情熱と創造性を「筆と紙」にぶつけてきた主人公が、故郷では「庭づくり」へと情熱を移行させる様だ。そこには内面世界がこれまでの戯曲とは全く違う形で投影され、表現者を突き動かす原動力の正体を静かに浮かび上がらせていく。静かだが、力強い。従来の人物像から一歩踏み出した人間性を描こうとする作り手の心意気を感じさせられる一本だ。
3.5シェイクスピアのことはよく知らないので少し知りたくて観てみた。
最初、とっつきが悪かったのだが、この家族が抱えている悩みが想像以上に深刻だとわかり、観る側も段々とシリアスになっていった。
一家は、時を経て、やっと苦痛とわだかまりを精算する。そして柔らかさと優しさが家庭に満ちる。とても清々しいステキな光景だ。
この家族は、思わぬ出来事のせいで、そして芸術家の家族という意識も作用しバランスを失ったが、本質的には良い家族なのだろう。
大作家は人生の最後に家族にやすらぎを見出したようだ。パターンとして平凡だが、シェイクスピアのような名声も財産もある人の話、となるとおもしろく、親しみが持てる。作品は素晴らしいが私生活はガタガタ…、でなくてよかった。
全体としては、セリフや間の取り方などがややわかりにくかった。雰囲気作りが先走っているような?印象を受けた。
そのかわり雰囲気はよく、映像も綺麗だと思った。昔の素朴な家やインテリア、生活スタイルが楽しい。
ところで、妻役のジュディ・デンチの演技には吸い込まれたし、イアン・マッケランはもちろん、娘たちも彼女たちの夫もよかったが、肝心の主役ブラナーが私にはイマイチに感じたのは、なぜだろう…。
3.5【”知られざるシェエクスピアが筆を折った晩年を描いた作品。”サー・ケネス・ブラナー、ジュディ・レンチを観るとあー、英国映画だなあと思う趣深き作品。】
■1613年、「ヘンリー八世」の上演中に大火災が起こり断筆したシェイクスピアは故郷へと戻る。
20余年もの間、滅多に会うことのなかった主人の帰還に、妻や娘たちは驚きを隠せない。そんな家族をよそに、シェイクスピアは愛する息子ハムネットを悼む庭を造り始める。
◆感想
・私は、シェイクスピアの全作品を読んでいない。
ー と言うか、”全作品俺は読んだぜ!”という方が敬服したいが、ハッキリ言って近年のエンタメ要素に満ちた作品を読んでいると、あんまり面白くない。-
■今作は、自身の戯曲が掛かった劇場で起こった火災を切っ掛けに筆を折ったシェイクスピアの晩年を描いているが、彼が帰って来たことで戸惑う家族の姿が、面白くも哀しい。
シェイクスピアは愛する亡き息子ハムネットを偲ぶ庭を作り始めるし、それに反発する家族たち。
<今作が見応えがあるのは、サー・ケネス・ブラナーが演じる晩年のウィリアム・シェイクスピアを人間として描いた姿である。
英国映画の抑制したトーンが好きなんです。>
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