ペイン・アンド・グローリー
劇場公開日:2020年6月19日
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解説・あらすじ
スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが長年にわたってタッグを組んできたアントニオ・バンデラスを主演に迎え、自伝的要素を織り交ぜつつ描いた人間ドラマ。世界的な映画監督サルバドールは、脊椎の痛みから生きがいを見いだせなくなり、心身ともに疲れ果てていた。引退同然の生活を送る彼は、幼少時代と母親、その頃に移り住んだバレンシアの村での出来事、マドリッドでの恋と破局など、自身の過去を回想するように。そんな彼のもとに、32年前に手がけた作品の上映依頼が届く。思わぬ再会が、心を閉ざしていたサルバドールを過去へと翻らせていく。バンデラスが主人公の映画監督を繊細に演じ、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞。第92回アカデミー賞でも主演男優賞、国際長編映画賞にノミネートされた。アルモドバル作品のミューズ、ペネロペ・クルスが家族を明るく支える母親を演じる。
2019年製作/113分/R15+/スペイン
原題または英題:Dolor y gloria
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2020年6月19日
スタッフ・キャスト
受賞歴
第92回 アカデミー賞(2020年)
ノミネート
主演男優賞 | アントニオ・バンデラス |
---|---|
国際長編映画賞 |
第77回 ゴールデングローブ賞(2020年)
ノミネート
最優秀主演男優賞(ドラマ) | アントニオ・バンデラス |
---|---|
最優秀外国語映画賞 |
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映画評論
老境にさしかかったアルモドバルの晴れやかな新境地が伺える
初期の狂気をはらんだエキセントリックで倒錯的な作風から、近年は、瞑想風で思索的な深みをたたえた、ヒロインを礼讃する<女性映画>の秀作を連作するに至ったペドロ・アルモドバルは文字通り、ヨーロッパを代表する巨匠といってよい。そのアルモドバルが70歳を迎えて自...
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映画レビュー
4.0“人生を振り替えるお年頃”を肴にしたアルモドバルの万華鏡
古くからの盟友A・バンデラスが演じる映画監督が、明らかにアルモドバルと同じ髪型をしていることからも、本作は自伝的作品と思われるだろう。実際、主人公のアパートは、アルモドバルが暮らしている住居で撮影されたという。
だとしたら、ある映画をきっかけに主人公と仲違いする人気俳優は、いったい誰がモデル? もしかして『アタメ』の頃のバンデラス? なんて深追いをしたくなるが、さすがはアルモドバル、簡単に謎が解けるような告白映画を撮ったりはしない。
いくつかの時代を振り返りながら人生の断片を俯瞰する構成がとりとめもないからこそ、余計にリアルに思えてしまうのも巧妙な引掛けに思えた。自分の人生をモチーフに、老境に差し掛かった感慨を描いてはいても、やはりこれは架空の世界であり、だからこそ純化されていて美しい。映画は現実に勝るのだ。
過去作でも使っていた手だが、メタな映画内映画で遊んでみせるあたりも、本当に映画作りを楽しんでいるのだなという気がする。
4.0アルモドバルの最新作が観客を温かくもてなす理由
心身共に消耗し切っている映画監督が、過去に体験した切実で痛々しい恋愛や、愛してやまない母親への思いを再確認することで、再び創作意欲を取り戻していく。数ある職業の中でも、苦痛を創作の武器に換え、そこから作品を生み出せるのは、美術家か小説家、または、映画監督ぐらいではないだろうか。初の自伝とも言われる本作のために、作者のペドロ・アルモドバルは盟友のアントニオ・バンデラスに自身の分身と思しき主人公を演じさせ、自宅から所有しているアート(ギジェルモ・ペレス・ビジャルタの抽象画等)やインテリア(月の満ち欠けが楽しめるエクリッセ・ランプ等)や食器(エルメスのティーカップ等)を持ち出し、セットの中に自分が生きてきた時間と空間を見事に再構築している。稀代のアートコレクターとして知られるアルモドバルらしい舞台設定の下、語られる物語は、だからこそ観客を温かくもてなすのだろう。
3.0色彩はとても印象的だが、「ニュー・シネマ・パラダイス」は少々言い過ぎでは…
名匠ペドロ・アルモドバル作品ということと、アントニオ・バンデラスが第92回アカデミー賞主演男優賞でノミネートされた作品ということで鑑賞。
予告編での「アルモドバル版ニュー・シネマ・パラダイス誕生」とのキャッチで期待値が必要以上に上がってしまったせいか、観終えた率直な感想としては正直いまひとつ。ニュー・シネマ・パラダイス感はさほど感じられなかったし、やたら抽象的な会話の連続でストーリーが展開していくあたりは何が言いたいのか何をしたかったのか、とにかく何が何だかよくわからない。恥ずかしながら、途中からは眠気のとの闘いになってしまった。
とはいえ、やっぱりスペイン映画らしく色彩はビビットでとてもきれいで良い。特にホワイトに塗りたくった洞窟の壁と、グリーンのレザージャケットはとても印象に残った。
もう少しペネロペ・クルスの出番が多ければ、ラテン感にも拍車がかかり観応えも出たのかも知れない。
3.5☆☆☆★★★ 『ニュー・シネマ・パラダイス』発 『オール・ザット・...
☆☆☆★★★
『ニュー・シネマ・パラダイス』発
『オール・ザット・ジャズ』経由
『8 1/2』行き
…と、思わせての『オール・ザット・ジャズ』へと戻り…。
…やっぱり『ニュー・シネマ・パラダイス』が終着駅(笑)
観客2名。 簡単に。
フェリーニの『8 1/2』は、その後の映画史に画期的な変化をもたらしたのだと思う。
それまで、映画中映画は成立してはいたが。そこに芸術家の苦悩を織り込むなど、誰も考えないものだった。
(当時の状況を完全に把握している訳では無いので、おそらく…って事で)
ところが、『8 1/2』の更に凄いところは。肝心の映画の中身を一言で表現するならば…。
「浮気してごめんなさい!」m(__)m
コレ…当時の状況を考えたなら、ほとんどの人が呆気に取られたんじゃなかろうか。
本作品、何だか『ウルトラQ』バリのオープニングから。主人公である映画監督役アントニオ・バンデラス(老けたな〜!ちょっとショック)が、水中リハビリ?をしながら、過去を回想する場面から始まる。
この回想場面には、過去の自分と一緒に。母親役のペネロペ・クルスが必ず登場し、ノスタルジーな回顧映像となっている。
それより何より、バンデラスの名前は《サルバドール》なのだ。『ニュー・シネマ・パラダイス』の主人公の名前が《サルヴァトーレ》なだけに…(笑)
更に言えば、バンデラスは背中の痛みを始めとして、身体の異変には薬物に依存し、その痛みを抑える毎日を過ごしている。
この日々の繰り返しは、『8 1/2』を下書きとして。ボブ・フォッシーが、自らの命を投げ出し完成された『オール・ザット・ジャズ』のロイ・シャイダーを、投影させているかの様に見える。
映画本編のほぼ半分以上は、この『オール・ザット・ジャズ』を参考に、アルモドバルは演出していたのでは?と、私には見えたのですが…果たして。
ところで『8 1/2』は、フェリーニが妻であるジュリエッタ・マシーナに対しての【謝罪】を、映画を通して描いていたのですが。アルモドバル版では、誰に対して謝罪をしていたのか?
本編の始めの内は、過去の作品で仲違いをした主演俳優に対しての様に見える。
実際問題、2人の間にあるわだかまりは。映画祭での上映(ここはかなりクスクスと笑える場面)後に、本音をぶつけ合った事から、新たな作品も生まれる。
その作品で題材になるのが、バンデラスが本当に謝罪したかった人物。
その人物が唐突に登場するのが、映画本編のほぼ半分辺り。
しかも、その人物の名前が《フェデリコ》だったのには、思わず椅子から崩れ落ちそうになりましたけどね〜(´Д` )
そのフェデリコが語る言葉に、「君の作品は常に祝祭だった」
(メモを取っていた訳では無いので、完全ではなく。大体、こんな感じの字幕だった)
思えば、『8 1/2』でのラストに、フェリーニ本人の分身と言えるマルチェロ・マストロヤンニが叫ぶ台詞が「人生は祭りだ!」(だったと思う)
このフェデリコ。作品中で唐突に現れては、また唐突に去って行くので、更に呆気に取られるですが。
1番始めに記した様に。
(こちらが勝手に最初に記した3作品を思い浮かべてしまってはいるのですが…)
この男が、アルモドバルに於けるジュリエッタ・マシーナにあたるのか?…と思うと、実に複雑な思いを抱くモノですなあ〜!
そんな唐突に現れる人物がもう1人居て。子供時代のバンデラス=サルバドールが出会うエドゥアルド。
彼は(確か)3〜4回本編で登場するだけなのですが。彼が何気なくしていた事が、その後のサルバドール=アルモドバルに多大な影響を与えていた、としたのならば…。
何とも言い難い不思議な感情が湧いて来るモノですなあ〜(u_u)
…………と、言いつつ。果て?俺は一体全体、何を見せられているのだろう?…とも。
今や巨匠扱いされているアルモドバルですが。この場面などは、初期作品の『アタメ』の頃の《変態性》が垣間見れ、ちょっとばかり懐かしさを感じたりしましたが…。
その様に、アルモドバル自身が。(自分の)過去を振り返っているかの様に見える作品ですが。その画面を見つめているこの俺は、一体何なのだろう?…とも同時に(;´Д`A
ただ、アルモドバルは、以前にも『抱擁のかなた』で、映画中映画を撮っていて。その際には、ヒッチコックの『汚名』を意識している(こちらが勝手にそう思ってはいるのですが)様な秀作が存在し。今回は、アルモドバル自ら、自身の人生を振り返るが如くに映画中映画を撮って…と。アルモドバル自身が人生の老朽に入りつつあるのだなあ〜と思って観ていたところ。映画は『8 1/2』のフィナーレを想起させるエンディングへと突入。
花火と照らし合わせた、映画の魔術を示すエンディングへ。
そこに映っていた〝 モノ 〟それは?
実にあっけらかんとしたハッピーエンドだった事に、思わず【草生える】思いっス(@ ̄ρ ̄@)
2020年6月24日 TOHOシネマズ流山おおたかの森/スクリーン5
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