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キャプテン・マーベル

劇場公開日2019年3月15日

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キャプテン・マーベル : 映画評論・批評

2019年3月12日更新

2019年3月15日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

女性スーパーヒーローの確立と1995年の郷愁を、スタン・リーへの感謝と共に

MCU初の女性監督による女性スーパーヒーローの物語は、その共同体制からおのずと先行作「ワンダーウーマン」(17)の影がチラついてくる。だが「力ある者がその自覚を人々にうながされていく」のがDC流ならば、マーベルの理念である「誰でもスーパーヒーローになれる」を体現するのが今回の「キャプテン・マーベル」といえるだろう。もちろん「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」(18)の終幕において、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が最後に希望を託した彼女の「切り札」としての実力も大いに気になるところだ。しかし「ブラックパンサー」(18)から続く多様性のさらなる証明のために、MCUは女性のエンパワーメントを高らかに謳い上げていく。

擬態能力を持つスクラル人を、敵対するクリー人の部隊が一掃しようとしている銀河宇宙。その一員であるヴァース(ブリー・ラーソン)は任務を遂行中、1995年の地球へと誤送されてしまう。そこで彼女は自分の前身が米空軍テストパイロットのキャロル・ダンヴァースであることを知り、戦いと同時に「私は何者なのか?」を模索していく。ともすれば受動的な鑑賞になりがちな近年のアクション映画だが、擬態と記憶が物語の仕掛けとして活き、錯時的な構成がパズルのピースのごとく、能動的な作りで我々を挑発する。

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1995年というレトロな設定も、日本の観客にとってレンタルビデオ店“ブロックバスター”は馴染みが薄いかもしれないが、Windows95のブラウザ画面への郷愁は共有できるだろう。だが郷愁を超えて驚異的なのは、デジタルで若く加工されたサミュエル・L・ジャクソンだ。まだ出オチ感も控えめでブレイクの渦中にあった頃の90年代サミュエルが、終始ラーソンと違和感なく芝居をするのだ。その高い精度と完成度たるや、正直CGキャラクターのひとつの到達点である「アリータ バトル・エンジェル」以上に衝撃をもたらす。

時はまだアベンジャーズどころか、S.H.I.E.L.Dもスーパーヒーローに一人としてアクセスしていない。しかし何者でもない一介エージェントのフューリーが、初遭遇となる地球外超人のヴァースと行動を共にすることで、後のMCUへの布石が敷かれていく。そして自分探しを経てキャプテン・マーベルへとたどり着くブリー・ラーソンのパフォーマンスも、ハリウッドの商業大作でも萎縮せず存在感を放つことを証明している。それぞれのアイデンティティの確立が印象に強く残る作品だ。

そしてありがとう、スタン。映画の冒頭から我々は、この壮大なフランチャイズがどこから来て、どこへいくのかを万感の思いで再確認することになる。

尾﨑一男

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