ビューティフル・ボーイ : 映画評論・批評
2019年4月9日更新
2019年4月12日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー
信じ、裏切られ、落胆を繰り返す。実体験だからこそのもがきと苦しみのリアル
「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ主演。そのセンシティブな演技と存在感は、決して期待を裏切らない。
デヴィッド(スティーヴ・カレル)の息子ニック(ティモシー・シャラメ)は、成績優秀でスポーツも万能。父子の仲も良い“理想的な息子”だった。しかし、いまニックは深刻なドラッグ依存に陥っていた。「あんなに美しく、可愛かった息子がなぜ?」。デヴィッドは息子をなんとか救おうとするのだが……。
のちにNetflixの人気ドラマ「13の理由」の脚本家となったニックの実体験を描く。主に父親の視点から描かれていることが大きな特徴で、それもそのはず、ニックと著名なライターである父・デヴィッドがそれぞれに書いた回顧録がベースなのだ。「もうドラッグはやらない」と言っては、同じ過ちを繰り返す息子にどう手を差し伸べればいいのか。本人の苦しみと同時に、親のもがきと苦しみのリアルは群を抜いている。

息子役がシャラメであることは重要だ。ボロボロに堕ちていきながらも、彼はやはり美しい。外見だけでなく、魂の底にある「純粋な美しさ」を感じさせるから、観客も父親と一緒になって彼の再生を信じ、裏切られ、落胆を繰り返す。苦しみは簡単に終わらない。劇的な解決も劇中では訪れない。ただ、彼がいま状況を抜け出し、成功しているという事実だけが救いだ。父親役のスティーヴ・カレルも実にいい。これまでにないほど抑制を効かせた芝居が心に沁みる。
それにしても「問題は“ドラッグ”じゃない。ドラッグは(抱えている)“問題”から逃げる手段なんだ」というセリフにハッとさせられる。アルコールやそのほかの依存症も、根っこは同じだろう。「問題」に気づき、向き合ったときがようやく一歩。ニックにとっての「問題」は、良き場所だったはずの「家庭」にもあった。解決法は結局、当事者にしかないが、周囲が辛抱強く待てば、いつか本人に必ず届く。だってこれは実話なのだから。
どんな親子にも、この映画は必要なのかもしれない。
(中村千晶)

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