来る
劇場公開日:2018年12月7日
解説・あらすじ
「嫌われ松子の一生」「告白」「渇き。」の中島哲也監督が、岡田准一を主演に迎え、「第22回日本ホラー大賞」で大賞に輝いた澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を映画化したホラー。黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡らが顔をそろえる。恋人の香奈との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に謎の来訪者が現れ、取り次いだ後輩に「知紗さんの件で」との伝言を残していく。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前で、来訪者がその名を知っていたことに、秀樹は戦慄を覚える。そして来訪者が誰かわからぬまま、取り次いだ後輩が謎の死を遂げる。それから2年、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、不安になった秀樹は知人から強い霊感を持つ真琴を紹介してもらう。得体の知れぬ強大な力を感じた真琴は、迫り来る謎の存在にカタをつけるため、国内一の霊媒師で真琴の姉・琴子をはじめ、全国から猛者たちを次々と召集するが……。
2018年製作/134分/PG12/日本
配給:東宝
劇場公開日:2018年12月7日
スタッフ・キャスト
インタビュー
岡田准一&小松菜奈が初タッグ 中島哲也監督は怖い人?
岡田准一と小松菜奈が鬼才・中島哲也監督のホラー「来る」で初共演した。岡田は幸せそうな家族(妻夫木聡、黒木華)に襲いかかる霊的な存在"あれ"の謎に迫るオカルトライター役。小松は霊媒師の血を引くピンクの髪に全身タトゥーのキャバ嬢を演じた。...
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映画評論
ホラー小説が強烈エンタメに“変身”。人間の業と闇を描き続ける中島映画の到達点
80年代から気鋭のCMディレクターとして名を馳せ、「下妻物語」(2004)以降はアクの強い人気小説をスローモーションやCG、アニメーションを駆使したスタイリッシュな表現で映画化してきた中島哲也監督。「嫌われ松子の一生」「告白」でも人間の業と闇に切り込んだ...
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映画レビュー
4.0まさかのクリスマス・ムービー!
「あれ」は、来る前からすごかった。
親の付き合いであれこれ観慣れているはずの子が、本作公開前の数カ月、予告が始まった、と察知した途端に耳を塞いで縮こまる。映画館内のポスター前を通るのも、そそくさ。チラシにも手を伸ばさず。余りの怯えっぷりに、「本編はどんなにすごいんだろう」という期待がむくむくと…。当然、子にはきっぱりと拒絶され、久しぶりに単身で悠々と映画を観た。
何より本作がユニークなのは、理不尽で不可解な「あれ」に立ち向かう側が、複数の対(夫婦、恋人、姉妹、友人…)を成し、入れ子細工のように入れ替わり立ち替わりしていく点だ。主人公がいて、それを支えるパートナーがいて…という定番は一切なし。しかも、それぞれのキャラクターが曲者で、あれやこれやと物語に「仕掛け」てくる。中でも印象を残すのは、主役然としながらも頼りない、妻夫木聡演じる秀樹と、じわじわと存在を出していく、小松菜奈演じる真琴だ。(松たか子演じる姉で霊媒師の琴子は、唯一最後までぶれないので例外。)
秀樹の軽薄さ、からっぽさにはかなりイラつく。その顛末には「自業自得」と思ったものの、終盤でクッキーを前にしょんぼりする姿には、思わず苦笑。そんな悪い奴ではなかったのかも、と気持ちが和らいだ。イクメンぶった言動は、家族への責任感ゆえの不安の裏返しとも思われ、冒頭の滑稽なほどの必死さを思い返すと、少ししんみりするほどだった。
一方、苦労の連続の黒木華演じる香奈は、最後までいいとこなし。母のため、子のため…と食べてもらえないナポリタンを作り続け、最後は結局母親と同じ轍、とガッカリな方向へ流れてしまう。真に母親側の思いを代弁するのは、真琴だ。凡人ながら果敢に「あれ」に立ち向かう。ぶっとんだメイクやファッションがいつしか気にならなくなり、彼女の声や表情がひしひしと伝わってくるのに驚いた。不安を抱えつつも、危険や痛みをいとわず、最後は自分の直感を信じて突き進む。まさに、子育てを通して育っていく(育てられていく)母親そのもの、な気がした。
怖いけれどおもしろい、すっきりしつつももやもやする。そんな矛盾の振り幅が、ホラー映画の醍醐味だと思う。解決したのか惨劇の始まりなのか、のエンディングのバランスは手堅く絶妙だった。ホラーにして育児もの、そして実はクリスマス・ムービー!な本作。ああ面白かった!とほくほくしながら帰宅した後、ふと日常と映画がかぶってぞっとしたり、考え込んだりすることが今も度々ある。一人の胸に収めておくのは、ちょっともったいない。できれば次は複数でわいわいと観て、あれこれ感想を話し合ってみたいと思う。
3.5中島哲也がホラーを手がけると……
「告白」「渇き。」の中島哲也監督が、岡田准一を主演に迎え、「第22回日本ホラー大賞」で大賞に輝いた澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を映画化すると聞いた際は、どのようなホラー作品になるのかワクワクした気分になったものだ。
しかも共演陣は妻夫木聡、黒木華、「渇き。」の小松菜奈、「告白」の松たか子。
さて、本編を観て感じたのは、「これはホラーなんだろうか?」ということ。
その論点さえ横に置いておけば、ギクッとする瞬間も、爆笑する瞬間もあり、個人的には楽しめたのだが……。いずれにしても、人は見る角度によって全く異なる見え方をするということを、改めて提示した作品でもあった。
4.5ホラー名手による別バージョンも夢想してしまうが、松&小松の霊媒師姉妹で続編も観たい
原作は澤村伊智のデビュー作で滅法面白い。中島哲也監督は主要人物の造形に力を入れ、人間の裏の顔の恐ろしさを強調したので、小説版の化け物ホラーの要素を期待するとあてが外れるかも。これが例えば、黒沢清などのホラー名手によって映画化されたら、どんな怖い映画になったかと夢想してしまう。
一方で、比嘉琴子と真琴の姉妹を演じた松たか子と小松菜奈は、原作にあった数少ないユーモア要素も含め、キャラの魅力を的確に表現していた。小説は比嘉姉妹シリーズとしてもう2冊出ているので、松&小松のキャストで続編も可能では。中島監督のエンタメ路線の継承でもいいし、ホラーに回帰してもいい。
終盤のお祓いの儀式は大仰だが、考えてみると神事は非現実的な存在を前提にしたイベントだから、お祭りの賑やかさで除霊をするというのは意外に正しいのかも。「信じる者は救われる」の言葉と合わせ鏡で、「呼ぶ者のところに、ぼぎわんが来る」のだ。
4.0ビジュアルカッコ良し
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