アトミック・ブロンド
劇場公開日:2017年10月20日
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解説・あらすじ
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」や「ワイルド・スピード ICE BREAK」など近年はアクション映画でも活躍の幅を広げているシャーリーズ・セロンが、MI6の女スパイを演じた主演作。アントニー・ジョンソンによる人気グラフィックノベルを映画化したアクションスリラーで、「ジョン・ウィック」シリーズのプロデューサーや「デッドプール」続編の監督も務めるデビッド・リーチがメガホンをとった。冷戦末期、ベルリンの壁崩壊直前の1989年。西側に極秘情報を流そうとしていたMI6の捜査官が殺され、最高機密の極秘リストが紛失してしまう。リストの奪還と、裏切り者の二重スパイを見つけ出すよう命じられたMI6の諜報員ロレーン・ブロートンは、各国のスパイを相手にリストをめぐる争奪戦を繰り広げる。共演に「X-MEN」「ウォンテッド」のジェームズ・マカボイ、「キングスマン」「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」のソフィア・ブテラ。
2017年製作/115分/R15+/アメリカ
原題または英題:Atomic Blonde
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2017年10月20日
スタッフ・キャスト
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映画評論
クールでポップな“女性版ボンド”を心底楽しそうに演じるセロンが最高!
舞台は東西冷戦が氷解する直前のベルリン。主人公はMI6のミッションを帯びた諜報員。目的は消えたスパイリストの奪還。今やデジタルツールに主役の座を奪われ、ジェームズ・ボンドは唯一の例外として、人間の肉体そのものが機能する場所を失った時代に、これ程スパイアク...
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映画レビュー
3.5ブロンドに映える反射色とその意味
デヴィッド・リーチ繋がりで見直したくなったので視聴。
○作品全体
ロレーンの行動が全て筒抜けというミスリードを下地に敷いて、ロレーンの基礎となる色をぼかす。ラスト、コロコロと変わっていく真実…というシーンは、ぼかし尽くした色が存分に活かされるシーンだ。
色は必ずしも髪や服や照明の色だけに限らず、例えば照明の色は人に反射する色を加えれば多様性を増す。部屋全体は統一的な色が注いでいるのに、間接照明等を使っての別の色を含ませ、意味を増やすシーンが多々あった。さらに言えば、ロレーンのブロンドの髪にかかる反射色の面積によって、仮面に隠した裏の表情を見て取ることもできる。例として、パーシヴァルがロレーンの部屋に潜り込んで、それを咎めるロレーンのシーン。パーシヴァル側には青の光がブロンドの色を変えているが、その逆方向は赤色だ。ソ連・KGBを意味する赤色とも取れるし、ロレーンの内側に隠した怒りや疑心を示す警告色とも取れる。シーンによって変わっていくブロンドの反射色のエキゾチックな雰囲気、そしてそこに内包された意味を探ることも、この作品の醍醐味と言えるだろう。
○カメラワークとか
なんと言っても長回しカット。エレベーターに乗るところから始まり、下へと降りていく縦の軸を意識したアクションを長回しにするという新鮮味。階層ごとにシチュエーションを変える役割はもちろん、画面外からインしてくる時の自由自在な発想を担う役割もあった。
スパイグラスが「二人来ている」と言って二本指を出すシーンが良い。ロレーンにとっては既に視認しているが、フレーム内には収まっていないから視聴者からすれば突拍子もない出来事のように映る。視聴者側に次の相手の出現だとミスリードを狙ったアイデア。緊張感の続く長回しの中でいいアクセントになっていた。
アクションの組み立ても見てて飽きない。画面ブレを少なくしてアクションそのものの魅力で真っ向勝負している感じが良い。PVにもある横位置で左右の敵を蹴散らすカットが特に良かった。
○その他
・画面を横一線で覆うレンズフレアはデヴィッド・リーチの「手癖感」がある。あんまり意味ない気がする。でも画面の雰囲気はガラッと変わる感じではある…ただそれだけな気がする。
・美術館で窓のようなフレーム内に雨の映像を流しているシーン。あそこにやってくるとロレーンがフードを外すのがかっこよかった。ロレーンの嘘にまみれた感覚とマッチしている…けど、単純に雨なのにフードを脱ぐというのがかっこいいから!でやってそうな演出でもある。
・カット初めでグルッとカメラを回したりするカットがいくつかあった。これも表と裏の意味合いだろうか。演出的な規則性とかあるのかな。…ないような気がする。
・ラサールとロレーンの関係性が百合感強くて良い。『キャロル』よりも年が近いように見えるし、少し年上のお姉さんとそれを慕う年下、みたいな関係性。実際女優の年齢差もそんな感じっぽいけど、思っていた以上に歳行ってて驚いた。
4.0満身創痍アプローチが大成功
セロン姐さんがタフな女スパイに扮して大活躍……というのは嘘ではないが、大活躍なんて言葉の響きとはだいぶ印象が違う。本作でアクションしまくっているのは本当だが、とにかく身体を痛めつけられ、傷だらけになり、青タンを作りまくり、それでもギリギリのところで戦うのが、本作でのセロン姐さんの覚悟なのだから。
傷だらけになって戦うアクションスターというのは過去にも大勢いて、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、メル・ギブソン辺りにはそういうイメージが強い。『用心棒』の三船敏郎だってその系譜に入れられる。
ただ役の上でも女優としてもこれほど身体を張ったアクションヒロインがいただろうか? セロンはもちろん絶世の美女の一人だが、闘いが続くに従って彼女の美貌はどうでもよくなってしまう。ただただヘトヘトになり、心だけは折れずに攻撃の精度を高めていくその姿に、われわれはボクシングの試合のようなエールを送ってしまうのだ。
3.5またも限界越えに挑んだセロンに熱狂
『マッドマックス』とはガラリと違う役ではあるものの、今回もまたシャーリーズ・セロンが破格のストイックさで身体表現の極みに挑戦。コート姿に髪をなびかせ、スタイリッシュな身のこなしで相手をバッタバッタとなぎ倒す様が無性にかっこいい上に、終盤のワンカットのアクションは近年公開された映画の中でも指折りのクオリティ。さすが『ジョン・ウィック』チームだけあって、アクション構成には抜かりがない。
それに比べてマカヴォイは見事な堕天使ぶりを発揮。スキンヘッドにギブスの腕で、破格のボルテージに沸くベルリンの壁崩壊の瞬間を余すところなく引っ掻き回してくれる。この役者の対比だけでも十分楽しい。
独特なのは80年代のカルチャーを音楽と色彩とで表現し尽くしているところ。単なる往年のスパイスリラーの二番煎じではなく、当時のリアルな空気を匂わせつつ、常識が何ら通用しない異空間を作り出しているところに妙味を覚えた。
4.5アクションが思いのほかゴツい、重い!
不惑過ぎのシャーリーズ・セロン、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でもアクションを見せていたが、女性版ボンドという売り文句を聞いて、カットを細かく割ってスピーディーに見せる華麗な格闘シーンを予想していた。ところがどっこい、本作のアクションはかなりの本格派だ。実際にコンタクトしているように見える迫真の殴り合い、敵役のスタントマンが階段を転げ落ちるショットなど、観ている側にまで痛みが伝染しそうなシークエンスに思わず声が出てしまう。
「キングスマン」のガゼル役が最高だったソフィア・ブテラは、味方として登場するが果たしてその正体は?というミステリアスな役どころなのだが、彼女は期待に反してアクションの見せ場が少なくて残念。その代わりなのか、別の意味で刺激的なシーンは用意されているが。
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