しあわせな人生の選択
劇場公開日:2017年7月1日
解説・あらすじ
余命わずかな男と彼を取り巻く人々の最期の4日間を描いたドラマ。カナダに住むトマスは長年の友人でスペインに住むフリアンが余命わずかであることを聞き、フリアンのもとを訪れる。治療をあきらめ、身辺整理を始めたフリアンは、愛犬トルーマンの新たな飼い主を探し、アムステルダムの大学に通う息子の誕生日を祝うためにオランダへ旅をする。その中でフリアンとトマスは、昔のように遠慮のない関係に戻っていくが……。主人公フリアン役を「人生スイッチ」のリカルド・ダリン、フリアンの親友役を「トーク・トゥ・ハー」のハビエル・カマラがそれぞれ演じる。監督、脚本のセスク・ゲイは母親の闘病生活の実体験をベースもとに本作を製作し、スペイン版アカデミー賞といわれる第30回ゴヤ賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞の5部門を受賞した。
2015年製作/108分/R15+/スペイン・アルゼンチン合作
原題または英題:Truman
配給:ファインフィルムズ
劇場公開日:2017年7月1日
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
3.5二人の呼吸や表情、飄々としたやり取りを見ているだけで底知れぬ友情を感じる
余命いくばくもない親友と過ごす4日間、と書くとセンチメンタルな印象が拭えなくもなるが、彼らは涙など見せない。何しろ本作に登場するのはオッサンふたり。スペインで俳優として暮らすフリアンは「もうこれ以上の治療はやめた」といい、カナダから遥々やってきたトマスに対し「文句があるなら、とっととカナダへ帰ってくれ」と告げる。つまり本作は序盤から、よくありがちな闘病モノへと進むことを禁じ、むしろ彼らが昔のようにつるみ、新しい愛犬の飼い主を探し、そして突拍子もなく飛行機に乗って渡航したりすることをよしとする。ただそれだけなのだが、阿吽の呼吸で、何の気取りもない言葉を口にし合うふたりの演技が何とも軽妙で心地よい。俳優業を営むフリアンにとってはまさに人生のカーテンコール。そこでどのような幕引きを迎えるか。互いの性格を知り尽くし、固い絆で結ばれた二人だからこその大切な時間、頑なな意志、そしてささやかな余韻が胸を締め付ける。
4.5大切なものを託せる友がいる?
もし、トルーマンがこの映画に存在しなければ、ただ『お涙頂戴』のよくある映画になってしまったと思う。トルーマンの存在が、末期癌のフリアンと友達の間のブレーキ役になっていて、この4日間の現実が、フリアンにとって、自分のことだけを考えられないように設定してあるのがいい。トマスにとっても、友達とはいえ、お金を払うだけで何もできない歯痒さを感じているから、トルーマンが一つのファンクションになっていると思う。
この映画はユニバーサルな課題を扱っているので、私の予想通りに話は運んでいく。いくつか気になったことを書く。
まず、フリアンのこと。フリアンはハンサムな役者役で、女にもモテる役で、既婚者の妻と浮気をしたりしていたが、彼が、末期癌と分かってから、友達や人が彼を避けるようになった。しかし、レストランで、妻が浮気されたある男性がフリアンのテーブルに来て、いたわりの言葉をかけ『なにか困ったことがあったら言ってくれ』と。この態度に感激した。トランプがコロナ感染したときに、ジョーバイデンや、オバマ元大統領が、いたわりの言葉をかけているのと同じ。気持ちがあるから見舞いの言葉がかけられるのであって、気持ちがなければかけにくい。どんな人にでも、敵であっても、お互いが人間であることを忘れたくないものだ。
トマスだが、4日の休暇をとって、フリアンのためにモントリオールから来ている。映画の初めから多くの素性を掴むことは難しかったが、エスパニアのパスポートを空港でみせるシーンがあったので、スペイン国籍(二重国籍?)だとわかった。その後、大学で、教授をしていることもわかった。フリアンとは全く反対の性格のようだし、財政的にも恵まれている。トマスはフリアンのために何かをしたいと思ってきたようだし、なにができるかの答えも持っていなかったようだ。フリアンにしてみれば、そばにいてくれるだけでいいんだが、トマスにしてみると何かしてあげたいと思う。金銭的な面でしか援助ができないと感じ、それを惜しむ態度はまるっきりないので、金銭的にだけでも援助してあげられて、嬉しく思っているようだ。最後に、フリアンにとって一番大事なことを援助してあげるんだけど。
末期ガンのフリアンが自分の最期をどう決めたかを聞く準備はいとこのポウラにはできていない。この感情を共有できるのはトマスだけだった。この抑えきれない失望感を二人はセックス通して抑えたんだと思った。
3.5【身勝手な男と心優しき男との不思議な友情の梯となった犬、トルーマン。】
ー最初に劇場で鑑賞した際には、感情移入が出来ずスペインの方々とは感性が違っているのかなと思った作品。-
・スペインで暮らすフリアン(リカルド・ダリン)の所にある日、カナダ在住の友人トマス(ハビエル・カマラ)が長い飛行機の旅を経て、やってくる。
ーどうも、フリアンは末期の肺がんに侵されており、トマスは遠路足を運んだようだ。ー
・最初に劇場で鑑賞した際には、フリアンの自分勝手な言動、行動
ー例えば、アムステルダムに住む息子ニコの誕生日を”日帰り”で祝いに行くと言い出し、飛行機代など全てトマスに払わせ、ノンアポで息子に会いに行くシーン。
しかも飛行機内でトマスはフリアンがニコに自分の深刻な病状を伝えていない事やノンアポであることを知り、フリアンに”忠告”するが、聞く耳を持たないフリアンの態度ー
などが、理解出来ずフリアンもフリアンだが、トマスも如何に親友とは言え、甘すぎるだろう・・、と思ったのが2年半前。
当然、レビューを書いてもいないし、当時の鑑賞メモを見ても良い感想はない。
・が、今回久しぶりに再鑑賞して、(大まかな感想は変わっていないが)、あるシーンの記憶が欠落していた。
その短いシーンとは、二人が久しぶりに交わした会話である。
【フリアンはトマスに”君は見返りを求めない。何も要求しない。”と語り、トマスはフリアンに”君は勇気がある。決して逃げ出さない”と語る。】
-成程。二人はお互いの気質を良く知り理解しあった上での関係性を持っていたのか・・。
それにしても、駄目だなあ。とても重要なシーンが記憶に残っていないとは・・・。前日、祇園で遊び過ぎたか? -
・フリアンは息子同様に可愛がっている愛犬で老犬の”TRUMAN:今作の映画の原題でもある、の貰い手をトマスと探すが、結局トマスに引き取ってもらうよう”勝手”に手配をする。緩やかに笑ってそれを受け入れるトマス。
<だが、矢張り大きく感想が変わった訳ではない。が、こういう友情の在り方もあるのかなと思った作品である。>
<2018年1月21日 京都シネマで鑑賞>
<2020年6月 別媒体にて再鑑賞>
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