教授のおかしな妄想殺人
劇場公開日:2016年6月11日
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解説・あらすじ
ウッディ・アレン監督がホアキン・フェニックスを主演に迎え、人生の不条理を独自の哲学で描いたコメディドラマ。アメリカ東部の大学に赴任してきた哲学科の教授エイブは、人生の意味を見失い、孤独で無気力な暗闇に陥っていた。ある日、迷惑な悪徳判事の噂を耳にしたエイブは、その判事を自らの手で殺害するという完全犯罪を夢想し、次第にその計画に夢中になっていく。新たな目的を見い出したことで、エイブの人生は再び輝き出すのだが……。アレン監督と初タッグとなるフェニックスが主人公エイブを演じ、アレン監督の前作「マジック・イン・ムーンライト」でもヒロインを演じたエマ・ストーンが、殺人妄想が渦巻くエイブに、そうとは知らずに恋心を抱く教え子ジルに扮した。
2015年製作/95分/G/アメリカ
原題または英題:Irrational Man
配給:ロングライド
劇場公開日:2016年6月11日
スタッフ・キャスト
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2016年6月10日
映画評論
ギラギラと際立つ、ホアキン・フェニックスという規格外の俳優
ロードアイランド州の小さな大学に、いわくつきの哲学教授エイブ・ルーカスがやってくる。情緒不安定の天才で、伝説には事欠かない男だ。夏期講習で彼の講義を受けた女子大生のジルは彼に夢中になるが、死に取り憑かれ、虚脱感を感じているエイブはまるで関心を示さない。し...
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映画レビュー
4.0不合理な男?そんなタイトル誰が見る
最近見た人間ドラマを描いた作品の中では群を抜いて面白い映画だった。
殺人を題材にしてはいるが、男と女の出会いと、別れ、不義、不実、倫理観の違いを照らし出す傑作で、見終わった後では誰かに話したくて仕方のない一本になることだろう。
「この映画、どう思った?」それは、真に罪があるとしたなら、動機のない教授よりも、動機そのものになった直情型の女こそが、なにより許せない、罪深き存在なのだと、確かめずにはいられないからだ。
現に私がそうなのだから。
許せない女。
教授の気をひこうとして、ありとあらゆるアプローチを試みる女。
好奇心旺盛で、恋愛に対する自信もあり、興味のあるモノには首を突っ込まずにはいられない。
そうして、生きる気力をなくした皮肉屋の教授に魅かれ、彼の著作を読み、授業を取り、恥ずかしげもなく愛を告白もする。
そしてついには肉体的関係を結ぶ。
その時付き合っている本命の彼から別れを告げられ、ある仮説にたどり着くが、それを突き止めた途端に、自らの正義感に従って、通報すると言いだす。
無害の、いや、無益のとでも言おうか、文字通り「役に立たない」男を犯罪に巻き込み、動機を与え、殺人者に仕立てた挙句、突き放すのだ。
妄想癖の教授から見た、この罪深き学生は、こんな風に映る。少なくとも、セックスに関してあまりにも直情的で、だらしない。
こんな奔放な女を、エマ・ストーンは直感に従って見事に演じ、我々観客をエンディングまで一気に連れていく。
彼女が演じた役とは言え、現実にいたら、ちょっと許せないし、男として軽蔑せずにはいられない。
ホアキン・フェニックスはどう見ても犠牲者。
さえない大学教授に過ぎないのに、彼を危険人物に仕立て上げ、それが成立したとたんに奈落に突き落とす。
映画の冒頭に、わざわざアルファベット順に出演者のクレジットが並べられ、終演後には登場順にキャストが並べられる。
それを見て、ある仮説に至った。
監督であり、脚本も自分で書いたウディ・アレンは、可能な限り順撮りで、この撮影を終えたんだ。と。
こんな繊細で、上質のドラマを、俳優たちが役柄の変化を追って、その役になりきれるように。
そのほうが、結果的に、作品の質を高められるし、早く撮り終わるんだと、知っているかのように。
もちろん、事実がどうなのかは私には知りようがないし、知ったところで何も始まらない。
でも、そう思うことで、ウディ・アレンの映画人としてのこだわりを感じられて、作品に対する理解も深まるのだ。
たぶん、何気なく食事をしていた時に、隣のテーブルから聞こえてきたのっぴきならない話に、気を取られ、そこから着想を得るなどしたのだろう。たまたま隣に座っただけの、それでいて聞き流せないほどの重みをもつ社会悪、これを放置していいものか?逆に、そこから犯罪行為に走るとしたらどんな男だろう?動機は?なんて思いつきを、一本の映画にしてしまうのだ。
最後に、見始めた時には日本語吹き替えで、気楽に見終えるつもりだったのが、途中から字幕スーパーに切り替えて見終えました。
この教授が、若い学生から好奇心たっぷりにアプローチを受け、誘惑されほど魅力的には、とても見えなかったから。
せめてホアキンの、声、セリフも含めて、女性が惹かれるものがあるとしたらそれを逃すまいと。
彼の演技、そして魅力は疑いようもないが、気取って魅力的にふるまおうとするその声が、どうにも鼻についたから。
だからこの作品に限っては、字幕スーパーのほうが、絶対に出来がいいと言い切ります。
吹き替えを担当した三上哲さんには、申し訳ないとしか言いようがない。
それから、邦題に関しては絶妙のネーミングだと言っていいでしょう。
これ以上、いじりようがないし、興味をひく、それでいてウディ・アレンのテイストを実に見事に表現したタイトルでした。
味気のない、「不合理なおとこ」irrational manなんてタイトルだけは間違っても避けたいところ。だって、そんな作品誰も興味わかないでしょう。
1.5ウディ・アレンのおかしな妄想と哲学
ウディ・アレン×ホアキン・フェニックス×エマ・ストーン!
2015年時、ホアキンとエマはまだオスカー俳優ではなかったが、それでも豪華なトリオ。
しかし、この3人を以てしても…。
大学の哲学教授のエイブは無気力な日々。死すら望んでいる。
ある日悪徳判事の話を聞き、妄想で殺害を計画した事から、生き甲斐を見出だしていく…。
どーゆー事…!?
妄想殺人計画で人生上向き…?
私だって心の中で“あ~コイツ死んでくれないかな”と思って憂さ晴らしくらいはするけどさ、それで人生上向きなんて意味分からん。
百歩譲って妄想までは分かるとしても、ましてや本当に実行…! ヤベー度ではジョーカーレベル…? しかもそれを罪とは思わず、人助け。
死すら望んでいた男が、妄想殺人をする事で生きる意味を見出だし、本当に実行してバレないと余裕ぶっこいてたが、バレそうになったら教え子まで殺害しようとするも、罰が当たって最後は…と、アレンらしい皮肉は効いているのかもしれないけど…。
唯一の救いはキュートなエマだけ。
でもエマ演じる教え子もおかしな殺人妄想教授に恋するも、殺人実行で倫理観を訴える役柄なのだろうが…、彼女のキャラもいまいち分からん。
何だかこんなにもイミフな作品は久しい。
アレンの作品の中でも難解とされる『インテリア』や『スターダスト・メモリー』の方が意味あった。
才人アレンも哲学や妄想に迷走した…?
4.0シリアスになりすぎないジャズ効果
面白かった。(って言葉を使いづらいけど笑)
全体的にジャズの軽い音楽のおかげで、シリアスになりそうなシーンも「シリアスに見なくていいですよ〜」って誘導してもらってる感じで、重すぎない「とあるお話」みたいに見ることができた。ウディ・アレンの作品ってそういう感じだよな。
音楽の効果ってすごいなと、改めて感じる作品だった。
エイブ(ホアキン)の登場から、最後の最後まで
どういう展開になっていくか先が楽しみだったし、
テンポよくいろんなことが進んでいくから楽しく見れた。
ホアキンさん、なんかずっと見てるとやっぱり色気あるなと思ってくるんだよなあ。なーんか人を引きつける強いものがあるんだよなあ。
やる気がない無気力モードのホアキンも、
活力に満ちたエネルギッシュなホアキンも、
事件後のいつも通りな、いやむしろ生き生きとしたところも、
全部なんか「ホアキン感」「ホアキン色」になるというか。説明難しいな...ホアキンがやってるからホアキン色になるのは当然なんだけど
「今作ではふつーな人の役かな?」と思って見てたけど
やっぱ狂気的になっちゃうのねーー!ってなった笑。
狂気的で、精神的にもろさもある、そんな役。もしかしたら自死してしまうかも、みたいな。でも「これだ!」となったらそこにすんごいエネルギーを向けて突進する。
とにかくそういう、エネルギーが強くて狂気的な役が多い!笑
最近ホアキン祭をしてるから余計それを強く感じる。
ホアキンにそういう狂気的な役のオファーが来やすいのか、
それともホアキンがやるから狂気的になるのか。
どうなんだろうね。
ぜ〜〜んぶどこかにJOKERを感じる。笑
JOKERがいるのよ。
JOKERはそういう意味で本当に適任だったし、狂気的ホアキン・フェニックスの集大成のようにも感じる。
p.s.
エマ・ストーン、綺麗なお顔立ち。
ただ、怒ったエマストーンはパワーがすごいな笑
すっごい怒ってるエネルギーが強い人だな、と毎回感じる。
エマストーンは怒らせたくないな。
エマストーンには笑っててほしい。笑
3.0現実は本質を凌駕する
「教授のおかしな妄想殺人」という邦題がつけられているが、原題は「Irrational man」直訳すると「不合理な男」だ。
主演のホアキン・フェニックスが哲学教授であることを考慮すると、この映画は「生の哲学」を扱ったものなのだろう。
察するにエイブは「生の哲学」そのものだ。理性によって定義できない「不合理さ」が彼を支配している。「智」を愛する哲学者でありながら、思考によって捉えることの出来ない「不合理な生」に翻弄される悲哀。
そんな彼に恋をするのがエマ・ストーン演じるジルだ。ジルは哲学史になぞらえるなら「実存主義」にあたる。本質よりも現実の存在を優位とする考え方だ。
そもそも哲学とは、人間にだけ許された「己の存在を考える」学問だ。学校で習わなくても、普段あまり内省的にならなくても、誰もが一度は考えることじゃなかろうか。
「自分は何のために生まれてきたのだろう」と。
仕事としてそんな命題に打ち込むうちに「不合理さ」に捕らわれ、生きる意味を感じられないエイブ。そんな彼に繊細さと純粋さを感じ、夢中になってしまうジルには共感できる。
難解なことを考えている悩める男は魅力的だ。少なくとも若い時は、同世代の男はなんだかガキっぽく物足りなく感じるし。
ジルは現実的だからこそエイブの浮世離れした魅力に傾倒し、エイブは現実の中に「生きる意味」を見出だせたからこそ活気を取り戻す。
そのすれ違いが何とも皮肉。
ストーリーの他にも、ホアキンの徹底した役作りは素晴らしい。生に懐疑的で希死願望のある役どころを、観るものを惹き付けるリアリズムで演じている。
対するエマも夢見る少女を魅力たっぷりに演じていて、24通りもの衣装を見事に着こなしている。そんなにパターンがあるのに、3回も着ている衣装(白のミニワンピ)があるのだが、あれはどんな意味があるのだろう?
ものすごく可愛らしくて、ふわふわした乙女チックな服だから、ウッディ・アレンが気に入ったのだろうか?
エンディングのマニッシュで大人びたなファッションと絡めると、「少女」らしさが一番出ていたから、なのかもしれない。
「生の哲学」が哲学という学問の中でどんな位置づけなのか?それを知るとなかなかに良くできたエンディングだ。
私はあまりウッディ・アレン推しじゃないが、テーマ的には楽しめた。
あまりにも邦題が内容とあってなさすぎて、ちょっと肩透かしなのが残念。
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