二十四の瞳 デジタルリマスター版
劇場公開日:2007年3月3日
解説
美しい小豆島を舞台に、分教場に赴任した女性教師・大石先生と12人の子供たちとの心の交流を描いた木下惠介監督の感動作が、ハリウッドの最新鋭技術を導入したデジタルリマスター版で蘇る。貴重な映画を次代に残す為のプロジェクトとして、「砂の器」に続く修復作品第2弾として本作が選ばれた。
1954年製作/156分/日本
配給:松竹
劇場公開日:2007年3月3日
あらすじ
昭和三年四月、瀬戸内海小豆島の分校へ、新任のおなご先生として大石久子先生(高峰秀子)が赴任してくる。一年生の十二人の生徒が、初めて教壇に立つ大石先生には特に愛らしく思えた。二十四の瞳は、足を挫いて学校を休んでいる大石先生を、二里もの道のりを歩いて訪れてきてくれる。しかし大石先生は自転車に乗れなくなり、本校へ転任せねばならなくなるのだった。五年生になって、二十四の瞳は本校へ通うようになったころ、大石先生は結婚していた。貧しい村の子供たちは卒業を迎えても、誰一人望み通り進学できないのだった。八年後、日本の軍国主義の波は久子を教壇から追い出し、その夫も戦争で亡くなった。島の男の子は次々と前線へ送られ、そのうち三人が戦死した。久子には子供が三人いたが、二つになる末っ子は、栄養失調で死んだ。終戦の翌年、久子は再び岬の分教場に赴任することになる。教え児の中には、かつての教え子、松江やミサ子の子供もいた。昔の教え子たちが久子を囲んで歓迎会を開いてくれた。二十四の瞳は揃わなかったけれど、彼らの胸には美しい思い出が残っているのだった。
スタッフ・キャスト
大石久子高峰秀子
大石久子の夫天本英世
久子の子大吉八代敏之
久子の子八津木下尚寅
久子の母夏川静江
分教場の男先生笠智衆
男先生の奥さん浦辺粂子
校長先生明石潮
小林先生高橋トヨ
松江の父小林十九二
松江の母草香田鶴子
よろずやのおかみ清川虹子
小ツルの父高原駿雄
飯屋のかみさん浪花千栄子
岡田磯吉田村高廣
岡田磯吉(本校時代)郷古仁史
岡田磯吉(分校時代)郷古秀樹
竹下竹一三浦礼
竹下竹一(本校時代)渡辺四郎
竹下竹一(分校時代)渡辺五雄
徳田吉次戸井田康国
徳田吉次(本校時代)宮川純一
徳田吉次(分校時代)宮川真
森岡正大槻義一
森岡正(本校時代)寺下隆章
森岡正(分校時代)寺下雄朗
相沢仁太清水龍雄
相沢仁太(本校時代)佐藤武志
相沢仁太(分校時代)佐藤国男
香川マスノ月丘夢路
香川マスノ(本校時代)石井シサ子
香川マスノ(分校時代)石井裕子
西口ミサ子篠原都代子
西口ミサ子(本校時代)小池章子
西口ミサ子(分校時代)小池泰代
川本松江井川邦子
川本松江(本校時代)草野貞子
川本松江(分校時代)草野節子
山石早苗小林トシ子
山石早苗(本校時代)加瀬香代子
山石早苗(分校時代)加瀬かを子
加部小ツル(本校時代)田辺南穂子
加部小ツル(分校時代)田辺由実子
山下富士子(本校時代)尾津豊子
山下富士子(分校時代)神原いく子
片桐コトエ永井美子
片桐コトエ(本校時代)上原雅子
片桐コトエ(分校時代)上原博子
フォトギャラリー
映画レビュー
4.5二十四の瞳アッセンブル‼️
何度も映画化されている「青い山脈」や「伊豆の踊子」と同じく、やっぱり一番最初の作品が一番名作‼️木下恵介監督作品としても持ち味である抒情性が一番よく出てる作品ですよね‼️香川県小豆島を舞台にした女性教師と子供たちの交流の物語‼️オープニングの水面の画面に「仰げば尊し」が流れるだけで涙腺が緩んでしまう‼️やっぱり我々日本人のDNAに刻まれてますよね、「仰げば尊し」‼️高峰秀子さんの颯爽とした大石先生も大変魅力的‼️一年生が8キロ歩いて大石先生の見舞いに来るなど、子供たちとの触れ合いの描写も素晴らしい‼️後半は貧困や戦争で夢破れていく子供たちの成長が描かれ、悲劇的なんですけど、それを感じさせず、爽やかなんですよ‼️いつか、必ず小豆島に一度は行かねば・・・‼️
5.0素晴らしかった
4.5擬似ループに込められた二重性
瀬戸内海に浮かぶ小さな島。18年を跨ぐ愛と悲しみの往還。激動の社会情勢に揉まれながら、教師の大石先生は生徒たちの壮大な旅路をヒューマニスティックに見守り続ける。
見守り続けることはある意味で見捨てることよりも辛い。二十四の瞳、すなわち12人の教え子たちは時代の変遷とともに一人、また一人とその数を減じていく。貧困、戦争、家庭の都合と事情は様々だが、そこに「良心」なるものの入り込む隙がないことだけは確かだ。大石先生は悲嘆にくれる生徒に、せいぜい花柄の入った弁当箱を買ってやるくらいのことしかできない。
生徒を支え導く立場を自称しながら、彼らの人生を実質的に左右する経済や政治といった根本的地層には決して切り込むことができないというもどかしさ。それはやがて「いち教師のとしての苦悩」の域を超え、「戦争は誰にも止められない」という戦時中の平民の普遍的な無力感へと拡大されていく。それによって大石先生という「個」と日本国民という「全体」はシームレスに接続され、大石先生のふとした所作や言葉の一つ一つが平民の総意の代弁かのような重みとリアリティを帯びる。
大石先生が「自分の息子が戦争に行くのが嫌だと言うような母親はどこにもいない」と息子に言われたとき、「何と言われてもお母さんはあんたたちの命が惜しい、本当はみんなそう思ってるはずだよ」と答えるシーンは印象深い。どれだけ無力であっても、どれだけ理想論であっても、ひたすらに平穏を願い続けること。それはたとえ経済的、政治的には何一つ寄与できなくとも生徒たちを見守り続ける教師としての彼女の使命とも相即する。
終戦後、大石先生は再び一年生のクラスを担当することになる。そこにはかつての教え子たちの面影を湛えている生徒がたくさんいた。昔を思い出し人目も憚らないで涙を流した大石先生に、生徒たちは「泣きみそ先生」というあだ名をつける。ちょうどかつての教え子たちに「小石先生」とあだ名をつけられたように。
時期を同じくして、小石先生は墓地で偶然再会したかつての教え子から同窓会に誘われる。同窓会は楽しげではあったものの、そこにははっきりと幾人かの生徒の不在が刻印されていた。二十四の瞳は18年の激動の末にここまで減ってしまった。しかし物語は感傷によって過去を振り返ることはしない。大石先生は生徒からのプレゼントとして自転車を贈られる。それは彼女が赴任してきたばかりの平和だった頃に、彼女が使っていたものだった。戦争は終わり、平和は戻ってきた。そのアレゴリーとして、彼女は再び自転車を手に入れる。
彼女が18年ぶりに1年生のクラスを受け持ったことや自転車を手に入れたことからもわかるように、ここへきて物語は擬似的なループ構造を取り始めている。そこには二重の意味が込められているように思う。一つは「一周目」で失ってしまったものが再び目の前に現れる、つまり復興が成し遂げられつつあるという肯定的な意味。もう一つは、物語が無反省のまま「一周目」とまったく同様の道を辿るならば、それは必然的に戦争あるいは喪失へと行き着いてしまうだろうという警鐘的な意味だ。
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