ウィッカーマン(1997)
劇場公開日:1998年3月21日
解説
原始宗教息づくスコットランドの離れ小島を舞台に、行方不明となった少女捜索に訪れた中年警部と、奇妙な島民の姿を描いた異色ホラー。権利の問題などから様々な長さのヴァージョンが存在したカルト映画の日本劇場初公開(ビデオはすでに廃版。今回の公開はイギリスでの初公開時と同じ88分ヴァージョン)。ケルト人の民族学的風習に裏打ちされた怪しくもどこかのどかな物語をミステリー、ホラー、ポルノ、ミュージカルなど様々な要素を混じえて描く。全編を彩るフォークソングも聴きどころ。監督は小説家・TV演出家・脚本家としても活躍する『ファンタジスト』(日本未公開)のロビン・ハーディ。製作はピーター・スネル。脚本はハーディの友人で後に映画化もされた大ヒット舞台劇『探偵スルース』で有名な「死海殺人事件」のアンソニー・シェイファー。撮影はハリー・ワックスマン。音楽はポール・ジョヴァンニ。美術はシームス・フランネリイ。編集はエリック・ボイド=パーキンス。主演はTVシリーズ『ザ・シークレット・ハンター』「キング・ダビデ/愛と闘いの伝説」のエドワード・ウッドワード。共演は「吸血鬼ドラキュラ」などドラキュラ俳優として名高いクリストファー・リー、「007/黄金銃を持つ男」のブリット・エクランド、「ハンナ・セレシュ」のイングリッド・ピット、「セバスチャン」のダンスの演出家でもあるリンゼイ・ケンプほか。
1973年製作/88分/イギリス
原題または英題:The Wicker Man
配給:ケイブルホーグ
劇場公開日:1998年3月21日
あらすじ
ハウイー警部(エドワード・ウッドワード)は行方不明の少女ローワンを捜しにスコットランドの孤島サマーアイル島にやって来た。夕方から酔っ払いが猥歌を大声で唄い、海岸では大勢の若者たちが乱交パーティー、その上、宿の娘ウィロー(ブリット・エクランド)は警部を誘惑、敬虔なクリスチャンである彼は煩悶の極致。ここではの島民たちの間で大地豊穰と男根崇拝が基本の原始宗教が信仰され、生活の隅々までに染み渡っているのだ。百年前にこの島に原始宗教を普及させた一族の末裔で統治者サマーアイル卿(クリストファー・リー)を訪問した警部は、強引にローワンの墓を掘り返す許可を取ったが、掘り起こした棺から出てきたのは、何と野兎の死体だった。直感的にローワンが生きていることを感じた警部は、彼女が翌日の豊作祈願の祭で生贄とされるのではないかと推測する。当日、動物の面をかぶり色とりどりの衣裳を身に纏った島民のパレードに、紛れ込んだ警部は、海の神に捧げる生贄となったローワンを助け出そうとするが、逆に籐で編んだ巨人ウィッカーマンの体内に押し込められ豚や鶏とともに燃やされる。実は全ては異教の神を信奉する無垢な人間を生贄にするための罠だったのだ。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ロビン・ハーディ
- 脚本
- アンソニー・シェイファー
- 製作
- ピーター・スネル
- 撮影
- ハリー・ワックスマン
- 美術
- シューマス・フラネリー
- 音楽
- ポール・ジョバンニ
- 編集
- エリック・ボイド・パーキンス
- 衣装デザイン
- スー・イェランド
Sergent Howieエドワード・ウッドワード
Lord Summerisleクリストファー・リー
Miss Roseダイアン・シレント
Willowブリット・エクランド
Librarianイングリッド・ピット
Alder MacGregor(Ouner of Green Man Pub)リンゼイ・ケンプ
Harbor MasterRussell Waters
オールド・ガーデナー
Gravediggerオーブリー・モリス
May Morrisonイレーヌ・サンタース
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映画レビュー
3.5【”異教の神への聖なる供物。”孤島の中で脈々と受け継がれて来た邪教の生贄になった、行方不明になった少女を探しに来た、熱心なキリスト教徒の巡査長の顛末を描いたエロティックホラー。奇作である。】
■スコットランド警察のハウイー巡査(エドワード・ウッドワード)は、行方不明になった少女ローワン・モリソンを捜すため、孤島であるサマーアイル島を訪れる。
そこで彼は島民がキリスト教普及以前のケルト的宗教生活を送っていることを知る。
キリスト教徒のニールは島民の特異な風習に嫌悪感を抱きながらも捜査を続ける。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・妙だが、惹かれる映画である。キリスト教徒からすると。嫌悪感を抱く様な、サマーアイル島で行われていた授業や、風習のエロティックな内容。
・島を収めるサマーアイル卿を演じる、ドラキュラ役で名を馳せたクリストファー・リーが良い。このような役を演じさせたら、ピカ一である。
<そして、ハウイー巡査は島民に騙され、格好の生贄として木で作られた巨大な「ウィッカーマン」の中に入れられ、生きたまま火を付けられるのである。
内容が陰惨であるにも関わらず、流れる音楽はフォーキーな旋律の音楽であり、どこか突き抜けた明るさが印象的な作品である。
アリ・アスター監督が好きそうな題材であると思う。>
4.0何となく観てみました。
4.5非寛容はいかんよう…
敬虔なキリスト教徒である主人公の警官ハウイー巡査が、行方不明の少女を捜索するために孤島サマーアイル島に向かうが、そこで待っていたのは全く話のかみ合わない島民たち。何をするにも島民の尊敬を集める領主サマーアイル卿の許可を取って欲しいと言われ捜査は一向に進まない。
他方、島民たちは性に奔放な島土着の宗教を篤く信仰していて、敬虔なクリスチャンであるハウイーはそんな島民の言動が受け入れられない。
一方、島民たちはもうすぐ訪れる五月祭の準備を嬉々として進めているのだった…。
伝説のカルトムービーと呼ばれているけど、ストーリーは案外とシンプルでかつ分かりやすく土着の宗教を信仰するサマーアイル島民と、キリスト教こそが唯一の宗教と信じてやまないハウイー巡査の対比によって、特にキリスト教のその非寛容さと傲慢さが浮き彫りになるような作りになっている。ハウイーは自分こそ正しい神を信じている、という島民にとっては全くもって大きなお世話な注意喚起をしているのが、大変滑稽に見える。
確かに島民のやっていることは一般的な道徳上好ましくないものが多い、だけどそれがこの島の道徳上特に問題が無ければ、それのどこが問題なの?となる。
キリスト教の信者且つ法の番人たる警官のハウイーが寛容になり得ない存在であるのは分かりやすい。警官だって自分が仕えている国の法律こそが守られるべきで、そこから逸脱するものは、いかに離島で別の文化だと言えども許容することはできない。
でも、この事件の捜査では島民は嘘はついているものの、ハウイーの捜査の仕方の方がよほど法律ギリギリの恫喝をしたり、或いは宗教と法律をごっちゃにしている感もあり、正直ハウイーに感情移入するのは大変難しい。童貞拗らせちゃった風紀に煩いチェリーボーイおじさんである。
大きな戦争など大半が宗教の衝突から始まる場合が大変多い。土地欲しいから攻めちゃおうなんてプーチンぐらいのもんである。
他の大規模な戦争は大抵宗教絡み、それも中でも世界二大非寛容宗教のキリスト教徒イスラム教は結局、この映画におけるハウイーそのものである。
人が何を信仰しようが、その信仰による良いこと、良くないことが自分と異なろうが、そんなのはその人の勝手。自分が正しい、自分の信じるものが正しい、って人は考えたくなるだろうけど、土地土地の考え方を無視して振りかざしたところで、迫害されるどころか藁人形に入れられて燃やされるばっかである。
自分が同化する必要も受け入れる必要もない。ただ、ああ君はそうなのね、と受け流すことができれば、世の中もっと平和になっていくに違いない。異国に住むと、その感が余計に強くなる。
そんな何事にも非寛容な現代を予見したかのような作品で、変な作品ながらなかなかに侮れない名作だったりするのである。
この辺りの目線の鋭さが、ミッドサマーでは感じられんかった部分なんやな。ド田舎祭り生贄映画のマスターピースは偉大やなと感じた次第。
3.0異様な世界観で奇祭を描く!
へ~ほ~♪
っと裸で歌い誘う美女、隣の部屋で欲に耐え続ける童貞おじさんの警官という前半からとんでもシーンが飛び出します。冒頭からこの映画の異様さが伺える1シーンです。この後もミュージカル映画!?と思ってしまう。映画を最後まで観るんためには世界感に慣れる決心がいります。
まさしく島の人たちと正反対の性格のハウイーという面白い構図なのです。
前半の異様な雰囲気そのままで、後半は一気に盛り上がっていきます。島の豊作を願ういけにえの祭りは、奇怪そのものの祭り。ハウイーは少女がいけにえにされると読み一人奮闘しますが…。ここらで観ている人は彼の結末は分かりましたね。
「おお神よ!」と最後の最後までキリストを信じ救いを求め続けるのはハウイーでした。決して神は助けてくれず、キリスト教徒が異教徒に迫害される瞬間です。
いや違いますね、この島ではたった一人だけのキリスト教徒であるハウリーこそが異教徒なのでした。
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