嵐を呼ぶ男(1957)
劇場公開日:1957年12月28日
解説
小説サロン所載の井上梅次の小説を、彼自身と西島大が脚色し、「鷲と鷹」に続いて、彼が監督した娯楽映画である。撮影は「美徳のよろめき」の岩佐一泉が担当した。主演は「俺は待ってるぜ」の石原裕次郎、北原三枝のコンビである。ほかに青山恭二、岡田眞澄、芦川いづみ、白木マリなどの若手に、小夜福子、金子信雄らベテランなどが助演している。また笈田敏夫が特別出演する。色彩はイーストマンカラー。
1957年製作/100分/日本
原題または英題:The Stormy Man
配給:日活
劇場公開日:1957年12月28日
あらすじ
音楽学校の生徒国分英次は、銀座の流しギターで評判の暴れん坊である優しい兄の正一を売り出そうと思っていた。それをジャズ・バンド「福島慎介とシックスジョーカーズ」の女支配人美弥子にたのみ込んだ。バンドのNO1ドラマー、チャーリー・桜田は、美弥子と結ばれた仲だったが、最近ステージ・ダンサーのメリーに引かれていた。そして、ついに美弥子と別れてメリーの属する持永興行と契約してしまった。NO1を失った美弥子は正一のことを思い出した。「彼を日本一のドラマーとして育て上げよう」桜田への競争心も手つだって彼と契約したのである。正一も懸命になった。父を失い、母から冷たくあつかわれて来た彼は、「おふくろの鼻をあかしてやる」という気持もあった。正一が初出演する日、表面、ジャズ評論家で、実は情報屋の黒幕左京徹が現れ、美弥子との仲をとりもつことを条件に、君を売り出してやろうと正一に持ち出した。正一の人気は次第に上ってきた。もちろん左京の運動もあったが、彼の猛練習、それに美弥子の厳格な指導でメキメキと力をつけたのだった。そのうち、二人の間に淡い恋心が芽生えた。いよいよ桜田と正一がドラム合戦をすることになった。その前夜、正一はメリーをめぐる紛争から、桜田の取巻きの与太者と喧嘩して右手を傷つけられた。当日、繃帯をまいた手の痛々しい彼は、遂にマイクをにぎると荒々しい一曲を唄い、満場の拍手をあびた。だが、母は正一に冷たかった。絶望して泥酔した彼は、はじめて美弥子と結ばれた。ところが、たまたま弟英次が新人リサイタルに推薦されることになり、それには左京の力が必要となった。正一は以前の左京との約束を守ろうと、美弥子から離れるつもりになったが、左京と桜田一味の襲撃にあい、右手を完全につぶされてしまった。英次の晴れての演奏会の夜がやってきた。客席では今は正一を理解した母、美弥子、そして英次を恋するみどりが、喜びにあふれてかがやかしい英次の姿にながめいっていた。その時正一は、バーのラジオで英次のうたごえをききながら、一人で涙を流していた。自分はダメだが、弟が……と思いながら。
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
4.0【”自らを認めてくれない母に対する屈託をドラムに叩きつける男。”邦画名シーンである右手でドラミングしながら唄う姿と共に、最後の最後に母と涙を流し和解する姿も良き作品である。】
■流しのギター弾き・正一(石原裕次郎)は、銀座で評判の暴れん坊。
そんな兄のため、弟の英次はジャズ・バンドのマネージャーの美弥子(北原三枝)に正一を紹介する。
こうしてジャス・ドラマーを目指すことになった正一は、猛特訓を重ねる中で、徐々に美弥子と引かれあっていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・多分、不惑以上の映画好きの方は一度は観た事がある映画かも知れないが、正直に書くと恥ずかしながら初鑑賞である。だって、年代的に違うもん。
・ストーリーとしては分かりやすいし、故、石原さんの当時としては日本人離れした長身を駆使したドラミングも魅力的である。
■映画からは離れるが、随分前に読んだ記事で、石原さんが早逝された際に最後まで付き添ったのが、今作で共演し、その後結婚された北原三枝さんだそうである。
映画共演を契機に結婚した男女スターは多数居るが、50代後半で早逝された石原さんを見送り、その後北原三枝さんは、独身を貫いている。稀な事であると思う。
今でも覚えているのだが、病魔に侵された石原さんが排泄していたのは、北原三枝さんの掌だったそうである。
微かな記憶なので違ったら申し訳ないが、石原さんは”三枝でないと出ないんだよ。”と仰った記憶がある。
凄い夫婦愛である。
・石原さんが演じる正一がドラマーとして、一世を風靡するも認めない母。だが、弟は喧嘩でドラマーになれなくなった兄の意志を引き継ぎ、見事にコンサートマスターになるのである。
弟が指揮する曲を行きつけのバーでそれを聞く正一の姿。
そこに現れた母が、正一にそれまでの言動を詫びるシーンは矢張り沁みるのである。
<石原裕次郎さんは、年代的に躍動感あるお姿を見た事が無いのであるが、この方を信奉する方が多いのが十二分に分かる気がする作品である。>
4.0新しいヒーロー誕生の熱気、そして興味深い渡辺プロ誕生時の物語
井上梅次原作・脚本・監督による1957年製作(100分)の日本映画。
原題:The Stormy Man、配給:日活。
やはり、前日にライバルの仲間に左手を痛めつけられてドラムが遂に叩けなくなった石原裕次郎が、少し間を置いて「オイラはドラマー」と左手でドラム叩きながら歌を歌い出すシーンは逆転性もあってなかなかの設定。爽快感もあった。
北原三枝のマネージャーと裕次郎のドラマーの関係は、 1956年に渡辺プロダクションを興した渡辺美佐(当時は曲直瀬)とベーシストの渡辺晋の関係をモデルにしたとか。
しょっぱなのシーンで、後に歌手として更に作曲家として活躍する平尾昌晃が歌っていた。ジャズ喫茶で歌っていところを渡辺美佐と井上監督に見そめられたとか。この映画のストーリーみたいだ。
裕次郎演ずる主人公国分正一が、北原三枝との仲取り持つからと、金子信雄演ずるジャズ評論家に自分の売り込みを持ちかけていたのが、興味深かった。決して正義感溢れる若者ではなく、売れるためには、際どいことも平気でするというキャラクター設定なのかと!あと、ジャズ界で売れるには、実力以上に評論家の後押しが重要との認識を、この映画では堂々とうち出していたのも、少々驚ろかされた。まあ、事実なんだろうけど。
また、いい年をした主人公裕次郎が、母親に自分がしていることを評価してもらえないと不貞腐れていたのにも、自分的には随分と驚かされた。エデンの東(1955)のジェームズ・ディーンみたいに親離れ出来ない主人公が、当時の流行りだったのか?
チャーリー・桜田役は紅白歌合戦8回出場ののジャズ歌手笈田敏夫。裕次郎のドラムの吹き替えは時代の寵児だった白木秀雄が担当。彼、渡辺プロに所属もわがままのせいか解雇され、1972年孤独死。映画のチャーリー役をまるで地でいっている様。チャーリーのドラム演奏は重鎮ドラマーとなる猪俣猛。裕次郎のドラム指導は当時のジャズブームの火付け役ジョージ川口で、留置場のワンシーンでジャズマンでもあったフランキー堺も出演と、当時の有名ドラマー多くが関与とか。
まあ映画自体はそれ程のものとは思えないが、何と言うか、新たなヒーロー誕生の熱気の様なものは、感じさせられた。また芸能マネジメントの激しい競争や暴力との絡み等、胡散臭さも垣間見れて、とても興味深くもあった。
監督井上梅次、脚色井上梅次、西島大、原作井上梅次、製作児井英生、撮影岩佐一泉、
美術中村公彦、音楽大森盛太郎、録音福島信雅、照明藤林甲、編集鈴木晃。
出演
石原裕次郎国分正一、青山恭二国分英次、小夜福子国分貞代、北原三枝福島美弥子、岡田眞澄福島慎介、高野由美福島愛子、芦川いづみ島みどり、山田禅二島善三、天路圭子有馬時子、白木万理メリー・丘、笈田敏夫チャーリー・桜田、金子信雄左京徹、市村俊幸持永、冬木京三種田、高品格健、峰三平乾分A、榎木兵衛乾分B、光沢でんすけ乾分C、八代康二乾分D、三島謙マネージャー滝、木戸新太郎バーテン矢野、寺尾克彦バーテン、柳瀬志郎吉田、二階堂郁夫長谷、林茂朗木村、加藤博司、汐見洋大熊教授、早川十志子福島邸の婆や早
、竹内洋子バーの女、小柴隆凡太郎、坂井一郎ボーイ、紀原耕留置所の警官、衣笠一夫浮浪者、阿井喬子テレビの女アナ、東郷秀美テレビのフロマネ。
4.0裕次郎はかっこいい
3.0ドラムソロが目玉
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