二重生活(1947)
劇場公開日:1949年3月

解説
「心の旅路」「ボストン物語」のロナルド・コールマンが主演する映画で、ルース・ゴードンとガーソン・カニンの夫婦チームが共作したオリジナル脚本から「フィラデルフィア物語」「ガス燈」のジョージ・キューカーが監督した1948年作品である。コールマンの相手はスウェーデン生まれのシグネ・ハッソが勧めるが、彼女は1937年映画に入り欧州で15本の映画に出演し、ハリウッドではこれが12本目の映画である。彼女と共に「ノートルダムのせむし男(1939)」のエドモンド・オブライエンを始め、新人シェリー・ウィンタース、「我等の生涯の最良の年」のレイ・コリンズ、フィリップ・ローブ、ミラード・ミッチェル等が出演している。撮影は「ミネソタの娘」「暗い鏡」のミルトン・クラスナーが指揮し、音楽は「失われた週末」「赤い家」のミクロス・ローザが作曲した。
1947年製作/104分/アメリカ
原題または英題:A Double Life
劇場公開日:1949年3月
あらすじ
舞台の名優トニー・ジョンは、ブロードウェイで長期興行中の喜劇「紳士の紳士」を打ちあげ、次回にはシェークスピア劇「オセロ」上演と決定した。トニーの相手女優ブリタ・カウリンは彼の別れた妻であるが、2人ともいまだに愛し合っている。離婚したのはトニーが舞台で演じる役に打ち込みすぎて舞台から退場してもその役を離れ得ず、家庭でも彼自身が舞台の彼の延長である故であった。この様な心境で「オセロ」を上演するのは考えものだと、演出者のドンランは反対したし、トニー自身も惧危しないでもなかったのである。果たせるかな舞台稽古で、早くもトニーはオセロ役に心を奪われてしまった。彼はニュー・ヨークのイタリア人街に迷い込み、そこでパット・クロールという女給と知り合い、深い関係が出来た。「オセロ」はヒットであった。そしてトニーは日毎にオセロになり切って行き、ついにブリタが扮するデスデモナをキッスして殺すシーンで熱演しすぎて、彼女を傷つけたのであった。そればかりか、宣伝係のビル・フレンドを狂気じみて嫉妬するようになった。ビルがブリタを恋しているというのである。その口論のあげ句トニーは市街をうろつき歩いて、パットのアパートにやって来る。彼はもはやつかれ者で、オセロのせりふをしゃべり出し、パットをデスデモナと信じてキッスした。そして熱演したためにパットは彼のキッスで窒息死してしまう。その事件を知ると宣伝ビル・フレンドは好材料とばかり、「オセロ」劇に結びつけて宣伝し新聞の大特ダネとなる。トニーは大憤慨で、下等な宣伝だとビルを怒鳴りつけ危うくのどをしめ殺す程であった。余りにも恐ろしい権幕なので、ビルはトニーが女給の死と何か関係があるのではないかと疑い、警察と連絡して1人の女にパットの扮装をさせ、トニーを酒場に呼んで、その女にサービスをやらせる。トニーが彼女を見ると、その振舞は唯事でなく、ビルはパットの死にトニーが一役演じたことを確信する。パットが働いていた料理店の主人は、トニーの写真を見せられると、この男が来たと申し立てる。ビルは彼を伴って劇場に来ると、舞台からオセロは見つけて、犯罪が発見されたことを覚る。そしてオセロがデスデモナ殺害の罪を問われるシーンになると、トニーは脚本に書かれてある通りに、短剣で自分の心臓を本当に刺したのである。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジョージ・キューカー
- 脚本
- ルース・ゴードン
- ガーソン・ケニン
- 製作
- マイケル・ケニン
- 撮影
- ミルトン・クラスナー
- 美術
- ハリー・ホーナー
- 音楽
- ミクロス・ローザ
- 「オセロ」シーン・アドバイザー
- ウォルター・ハンデン
受賞歴
映画レビュー
4.0コールマンの渾身の演技…怖い!
「演技にのめり込み過ぎた役者が心も身体も奪われる怖さ」、その役者を演じたロナルド・コールマン渾身の演技は素晴らしい!
さすが、本作でアカデミー主演男優賞を受賞しただけある。
全編を通じて、コールマンが演じたオセロの「役」が「実生活」を侵食していく怖さが前面に出た感じだった。
そのため、殺人事件はコールマンの怖さの裏側に行ってしまった感あり。
新人シェリー・ウィンタース、若い!
ジョージ・キューカー監督の佳作。
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