きっと ここが帰る場所
劇場公開日:2012年6月30日
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解説・あらすじ
名優ショーン・ペンが引きこもりのロックシンガーに扮し、亡き父の思いをたどってアメリカ横断の旅に出る姿を描くドラマ。人気絶頂の最中に表舞台を去り、アイルランド・ダブリンの広大な邸宅で穏やかな日々を過ごしていたロックスターのシャイアンのもとに、故郷アメリカから30年以上も会っていない父親が危篤との報せが届く。飛行機嫌いなシャイアンは船でニューヨークに戻るが臨終には間に合わず、ユダヤ人だった父が元ナチス親衛隊の男を探していたことを知ると、父にかわって男を探す旅に出る。元「トーキング・ヘッズ」のデビッド・バーンが本人役で出演し、音楽も担当。タイトルも「トーキング・ヘッズ」の同名曲からとられている。監督は「イル・ディーヴォ」「愛の果てへの旅」のパオロ・ソレンティーノ。
2011年製作/118分/G/イタリア・フランス・アイルランド合作
原題または英題:This Must Be the Place
配給:スターサンズ
劇場公開日:2012年6月30日
スタッフ・キャスト
受賞歴
第64回 カンヌ国際映画祭(2011年)
出品
コンペティション部門 | |
---|---|
出品作品 | パオロ・ソレンティーノ |
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2014年5月11日ベン・スティラー監督・主演「虹を掴む男」リメイク版にショーン・ペン
2012年4月28日ショーン・ペン、引きこもりのロックスターに!賛否両論の意欲作に主演
2012年2月16日
映画評論
アンバランスな人間が抱える痛みと哀しみ
宣伝画像からは意図的に(?)排除されているようにも思えるのだけど、この映画はまず、ショーン・ペン扮する初老の元ミュージシャンの皺だらけの顔を見つめるところから始まる。過去の輝きを失った彼の現実を皆でじっと直視して、その皺とそこに刻まれた痛みと哀しみを皆で...
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映画レビュー
3.5欠けたピースを求めて
特筆すべきは映像の美しさ。
自然を映し出しているだけのはずなのに、息をのむ美しさ。部屋の調度、佇まい。心に沁みわたる映像。それを眺めているだけでも惹き込まれる。
そこにスパイスのように組み込まれる登場人物のファッションコーディネート。予定調和的な場面もあり、トリッキーな場面もあり。
奇抜なファッションに、あの抑揚の声・言葉の発し方・話し方。間と表情。シャイアンが動き、話すだけでいい。
全てが計算されつくされたはずし方。
いつの間にか、シャイアンのように、ため息とともに、ふっと前髪に息を吹きかけたくなる。
たくさんの、欠けたピースを抱えて生きる人々が出てくる。
そんな人々を巡るロードムービー。
シルヴァスタイン氏の『ぼくを探しに』のような、
『あおくんときいろちゃん』のような展開。
そして…。
全編を通して、何か変な映画(主人公も、常に「なんか変」と言っているけれど)。
豪邸なんだけれど、廃墟?と言いたくなるような空っぽの家。
ある出来事から、ロック歌手をやめたはずなのに、当時のままの厚化粧。-化粧は心の仮面とも言う。その言葉を当てはめたくなる。
生気のない幽霊のような夫に、生命力あふれる妻。
人生を達観したかのようなシニカルなユーモアと、おちゃめないたずらっ子。
完璧にしつらえられていないからこそ、どこにでもある日常のようで、
緻密に完成された符丁合わせのようで、
何かのピーズが欠けているような寂しさが画面を支配する。
心が破裂しそうに、持て余してしまうほど一杯なくせに、心が空っぽ。
キャリーケースを引っ張って歩かなければいけないほどに。
あえて?間に合わなかった父の臨終。
そして、何かのピースを探しに行くかのように、旅に出る。
ロードムービーお決まりの、旅の途中で出会う人々。
父の意外なエピソード。
どういうわけか、シャイアンの中で腑に落ちた瞬間。
それまでうつつの中で焦点の合わない生を生きていたシャイアンが、現実に戻ってくる。
寂しさとキャリーバックを捨て去って。
なんて、粗筋みたいなものをさらってみても、わかった気になったようなならない映画。
あれ、どうなったの?等、回収していない伏線もあり、解説が欲しくなる。
けれど、要所要所でぽっと飛び出してくる台詞に魅了され、そこに哲学を見出したくなる。
実際に観て感じなければ、この映画は味合えない。
そして、リーフェン氏の役者魂。あのお年でも、映画に必要とあれば、あんな映像許すか。ペン氏は超ハリウッドのアクターなのに、場面によっては、醜悪と言えるほどの、皺のアップを許す。
感服、脱帽m(__)m。
もう唸るしかない。
心が満たされると、余計なものはいらない。
満たされた心だけで、充実する。
たばこは、大人の象徴というより、充実を伴う余裕の象徴のように見える。
そして、止まっていた時が動き出す。
ハマる人とと、心にシャッターが下りてしまう人に分かれる映画だから、評価は低め。
刺激的な作品です。
4.0甘い甘い砂糖菓子の中にくるまれた、かなり苦い薬
ナチスによるホロコーストと、ロードムービーを通じた父と子のユーモラスかつヒューマンな和解物語を同じ映画で取り扱うなどという奇抜な芸当は、本作で初めて見た。
ホロコーストはユーモアなどと同居させてはいけない、という思い込みが当方にあったせいか、初めは非常に奇異に感じたものである。
例えばユダヤ人社会でこれを肯定的に受け入れたかどうか、何とも疑問に感じる。制作費2,500万ユーロに対し、興行収入1,200万ドルというのだから赤字もいいところで、興行的には失敗作である。恐らく「早すぎた野心作」というのが世界的な評価ではなかろうか。
その「野心」とは、戦後66年を経た2011年にもなり、いつまでもホロコーストを激しく追及するイスラエル、ユダヤ社会に対する穏やかな異議である。
もちろんナチスやホロコーストを肯定はしないまでも、永久に追及するのはおかしいのではないか。会話がズレまくるオフビートの笑いや、旅の途中で出会う奇抜な人々、ナチス親衛隊の家族たちの人間的な言動が醸し出すユーモラスな雰囲気の中から、監督たちのそうしたスタンスが浮かび上がってくる。
甘い甘い砂糖菓子の中にくるまれた、かなり苦い薬…それが本作である。類似の作品が多数制作されるようになれば、ホロコーストに対する硬直的で厳しい歴史観も、いくらか和らぐのではないか。そのように歴史観を動かしていく意図、野心が本作の核心にある。しかし、製作から12年近く経った現在だが、小生には違和感が残らざるを得なかったのも事実なのである。
1.0チューニング
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