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ミロクローゼ

劇場公開日2012年11月24日

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ミロクローゼ : インタビュー

2012年11月20日更新

「ミロクローゼ」石橋監督が提言する映画づくりにおける「意識の問題」

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“登場するのはマネキンのみ”という奇抜な設定で、国内外で話題を呼んだ短編ドラマ「オー!マイキー」の生みの親、石橋義正監督。映画監督や映像作家としてだけではなく、パフォーマンスグループ「キュピキュピ」を主宰するなど、多岐にわたる表現活動を行っている。最新作「ミロクローゼ」では、3人の男が愛に翻ろうされる異色のラブストーリーに挑んだ。第35回香港国際映画祭など海外映画祭での上映を終え、凱旋公開を間近に控えた石橋監督に、ものづくりにかける思いを聞いた。(取材・文・写真/編集部)

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(C)2012「ミロクローゼ」製作委員会

俳優・山田孝之がおかっぱ頭の外国人青年オブレネリ・ブレネリギャー、隻眼(せきがん)の浪人・タモン、愛の伝道師・熊谷ベッソンという奇想天外な役どころを1人3役でこなし、物語は矢継ぎ早に展開する。「人間には弱さや凶暴さなどいろいろな面があると思うんです。違う人物として描きながら、作品を見終わった後にひとりの人物像を想像できる映画づくりができないかと思い、ひとりの役者が3人を演じ分けるということにチャレンジしました」と振り返る。

石橋監督は、山田が放つ独特のオーラに魅力を感じたという。「昔ながらの男の色気がある俳優にやってもらいたかった。最近はモデルのようなスマートな男性が多くなってきているので、一見して男くささを感じられる人を探していて、山田孝之の目を見たときにこれだと思った」と出会いから手ごたえがあった。現場でも「ものづくりに対して前向きな人で、俳優という立場でありながらつくり手の意識が強い。あまり多くを語る人ではないけれど、どうやっていい作品にしようかという考えを、自分のなかでつくり上げて臨んでくれる」と信頼を置いた。

石橋作品は、なんといってもビジュアルのファーストインパクトが強烈だ。「台本に仕上げていくよりも、ビジュアルや音楽を考えたりする方が楽しい」と話す通り、「ミロクローゼ」でもその持ち味は存分に発揮されている。石橋監督は、ビジュアルを出発点とした作品づくりに重きを置くことに対して「自分が好きな(スタンリー・)キューブリックやヒッチコックの映画は、セリフやビジュアル、音楽をふくめて好きなシーンが記憶に残っているんです。人生に影響することもあるし、それが映画の醍醐味だと思う。いろいろなつくり方があると思うけれど、自分はワンシーンに思いを込めていきます」と映像作家としての思いを語る。

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(C)2012「ミロクローゼ」製作委員会

見せ場のひとつは、歌舞伎絵をモチーフにしたクセのある殺陣だ。同シーンは、石橋監督が、絵金(土佐の絵師)による歌舞伎絵の迫力と構図に触発され、「絵巻物のような平面的な構成を映像化できないか」と思い立ったことから誕生した。映像の醍醐味を追求し、合成してレイヤー状に映像を重ねていくのではなく、分岐した部屋ごとに撮影を敢行。ハイスピードカメラによる長回しで撮り、大立ち回りを見せる山田を中心にしたユニークな殺陣を生み出した。

今作で描かれる3つのストーリーの根幹には、“恋愛”がある。「恋は世のなかのすべてのことの始まりだということがわかった」というタモンさながらに、「恋をすることはすごく大事なことだ」と持論を展開。「最近は自分のなかで完結できる楽しみが多く、人と接することで考えたり、異性と感情のやり取りをして楽しむことが少なくなってきている気がする。この作品には『恋をしましょう』というメッセージが込められています。基本的なことだけれど大事なことで、今自分がつくっておくべきテーマだと思ったんです」と振り返る。「作品のテーマは常に変わっていきますし、『オー!マイキー』などブラックジョークの作品もつくっているけれど、どれだけ尖った作品やエッジの効いた作品であっても、そのなかに愛を感じられることを大事にしています」と譲れない信念を語る。

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オリジナルの笑いをつくり上げてきた石橋監督に、昨今の映画業界をどのようにとらえているのか聞いてみた。オリジナル作品の少なさを指摘し、「意識の問題」と向き合う必要性を説く。「作品をつくる人間が、あきらめてしまわないこと。映画人は皆、映画に対する夢や愛を持っているけれど、経済的な問題などでつくることができないもどかしさを抱えている。でも、そこを変えていこうという意識がないと絶対変わっていかない。アイデアを出していくしかないんです。今後さまざまなアイデアが出て、違う形で活性化していくことができれば、夢のあることだと思います。自分が子どものころは、映画というものはロマンがあってワクワクしていた世界でした。今もそうなればという思いがあります」と映画に恋する少年のような顔をのぞかせる。

同時に、「映画にバラエティ性を持たせることで、映画から新しく展開していける、映画発信のエンターテイメント作品をつくりたい」という野望も抱えている。「オー!マイキー」では、「テレビというフォーマットから映像コンテンツとして広げていく」方法をとり、テレビドラマから映画へと展開した。「ミロクローゼ」をふくめ、今後は「今までは、“テレビはテレビ”と収まってしまうのが面白くなかった。そこからライブパフォーマンスや展覧会や、また新しいメディアに発展したり、ひとつのことで完結せず成長していくものづくりに興味がある」と多角的な表現を模索。柔軟な発想のなかに、石橋監督が持つ人をひきつけてやまない自由な感性を垣間見た。

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