硬派なギャング映画として、見応えのある作品。もっと軽い感じかとなめていたら、かなり本格的なつくり。そして長い。
「仲間を売るくらいなら死を選ぶ、という美学であったり、けじめを付けずに逃げることをしない感じは、日本のヤクザ映画にもよくある。
そういう意味で理解もしやすい。
この手のジャンルが好きな人なら納得の作品ではないでしょうか。

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　とある名画座で、お目当ての作品と併映だったので見た1本。
　スピードと派手なアクションやＣＧが全盛の現代映画の中で、実に渋い作品です。60年代のフランス映画がそのまま復活してきたような作品。
　仁義とプライドのためなら命も惜しまないギュの生き様に共感。彼を追うブロ警視の罠により、首謀者の名前を口にしたことにされてしまったギュは、警察とグルになって自分を追い込んでいったギャングたちへの復讐に立ち向かっていくところがいかにも彼らしいシーンでした。
　銀行強盗により大金を手に入れていたギュは、愛するマヌーシュとそのまま国外逃亡していけば安穏とした暮らしができたはずです。しかし彼は、仲間の名前を口にした裏切り者という汚名を被ったまま、逃亡するくらいなら死んだ方がましというくらい、誇り高き昔気質のギャングだったのです。
　そしてギュは、彼を待ち受けるギャングたちの元へ、みすみす飛び込んでいくのでした。最後にギュがマヌーシュへ無言のアイコンタクトで別れを伝えるとこも渋かったです。
　男として決着（おとしまえ）をつけること！
　そんなメンツのために、美女を置き去り、弾が尽きるまで、命枯れるまで、打ち込まれた弾丸で苦痛に顔が歪んでも、執念で撃ち放つギュとは、馬鹿な男か？歴史遺産のような頑固さか？皆さんもＤＶＤで感じていただきたいと思います。

　ところで２度も堅固な刑務所から脱獄した逃亡の天才ギュを追い詰めるブロ警視の罠の仕掛け方には、舌を巻くほど狡猾なんです。
　しかしブロ警視は単なる法律の番犬ではありませんでした。同僚の警視の非人道的な取り調べ方法に仲間を殺されて憤るギュに粋な計らいを見せます。その辺もラストの見所ですね。ブロ警視が、心配して駆けつけてきたマヌーシュに無言で、ギュの結末を悟らせるところも本作ならではの演出が光るシーンでした。

　主演ダニエル・オートゥイユの男ぶりに男が惚れるような１本。ちゃらちゃらしたアクション映画を見飽きたひとなら、ハードボイルドの王道をいく本作をお勧めしたいですね。

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