クライング・フィスト
劇場公開日:2006年4月15日
解説
事業に失敗し妻子に去られた元ボクサーと、少年院でボクシングに目覚めた不良少年が、新人王の座を懸けて闘うボクシング・ドラマ。監督は「ARAHAN/アラハン」のリュ・スンワンで、本作でカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞した。出演は「オールド・ボーイ」のチェ・ミンシクと、監督の弟で「ARAHAN/アラハン」のリュ・スンボム。
2005年製作/120分/韓国
原題または英題:CRYING FIST
配給:東芝エンタテインメント
劇場公開日:2006年4月15日
あらすじ
かつてはアジア大会の銀メダリストとして名を馳せた人気ボクサーのカン・テシク(チェ・ミンシク)は、事業に失敗し、莫大な借金を抱えてしまう。生活費を得るために「殴られ屋」として街頭に立つ彼だが、追い討ちをかけるように妻から離婚を要求され、最愛の息子とも引き離される。心の拠りどころだった銀メダルも借金の方に取られ、自暴自棄になるテシクを、なじみのソバ屋の主人(チョン・ホジン)は諌める。酒に逃げるテシクの目に、「新人王戦」のポスターが焼きついた。ケンカとカツアゲの荒んだ毎日を送る19歳のユ・サンファン(リュ・スンボム)が行き着いた先は、少年院だった。刑務主任からボクシング部に誘われ、先輩のクォルロク(キム・スヒョン)から簡単にマットに沈められたことで、サンファンはボクシングに目覚める。自分にも何かができるという意志と喜びを得たサンファンだが、建設現場で働く父(キ・ジュボン)が事故死し、祖母も病に倒れる。生まれて初めて家族のために何かをしたいという思いに駆られたサンファンは、「新人王戦」でトップに立つと心に決める……。予選が始まり、かつての実力を見せつけ次々と相手を倒すテシクと、全試合をノックアウトで勝ち進むサンファン。決勝ラウンドでついに二人は出会い、人生を賭けた対決が始まる。テクニックのテシクと、若さとスピードのサンファン。母の制止を振り切ってテシクの息子ソジンが会場に駆けつける。サンファンの祖母もまた、病院を抜け出して孫の試合会場にたどり着く。激闘の末にからくもサンファンが勝利するが、二人は闘い抜いた達成感を互いに感じていた。
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
4.0この二人の男、闘わせたくない。祈る想いで拳を握りしめる。どうせなら“猫いらず”と“ゴキブリ団子”で闘ってくれ!
かつてはアジア大会で銀メダルを獲得したことがあるのに、事業に失敗し落ちぶれてしまった男カン・テシク(チェ・ミンシク)。妻にも愛想をつかされ、何もかも失い、生活費を稼ぐために街中で“殴られ屋”をやっている。一方、ケンカに明け暮れ、カツアゲも日常茶飯事の若者ユ・サンファン(リュ・スンボム)。手っ取り早く金を稼ごうと高利貸しを襲ったところ、運悪くその爺さんが死んでしまい、5年の実刑。少年院内でボクシング部に入り、やがてテシクと闘うことに・・・
普通のボクシング映画というと、一方の人間ドラマを丁寧に描いて感情移入させるものですが、この映画では両者とも均等にドラマを描いているのです。この実験的ともいえる点でもハリウッド映画によくある典型的なプロットとは一線を画しているし、何しろ二人の男がパラレルに映し出され、まるで2本のボクシング映画を観ているような気にさせられるほどの満足感。たしかに、細かな設定や時系列は端折り気味で、「このカットにはどんな意味が?」などと疑問に思えるところもありました。まぁ、これは二人の人生を2時間で収めるのですから、多少のことはしょうがないし、二人とも考えるよりも手が先に出てしまうタイプなので、荒削りであるだけその粗暴な性格も伝わってきたのかもしれません。
もちろん、年代的にはチェ・ミンシクを応援したくなるのですけど、肉親の死に直面したり未来を掴み取る目的で闘っているリュ・スンボムのドラマのほうが泣けてきました。公開時コピーの「過去と闘え。未来と闘え。」という言葉もグサリと響いてくるのです。二人とも実在のモデルがいるらしいのですが、実際でも全く別のボクサー人生。闘わせたくなんかありません。
二人の中心人物以外でもいい演技がいっぱいありました。サンファンの祖母やテシクが知り合ったそば屋の店主。重いシーンが多かっただけに、それぞれ別の映画にした場合、観終わったら立ち上がれなくなるくらいに打ちのめされていたかもしれません。もちろん肝心のボクシングシーンでも、ラストの新人王戦ではリアルの打ち合いと演技の割合が8:2くらいの壮絶な撮影だったらしい。プロ並の特訓までしたというのだから、この試合の迫力は本当に凄かった。
惜しいと思ったのは、二人のウェイト。どう見てもチェ・ミンシクの方が重いように思えるのです(ともにスーパーライト級)。そして、プロとしての実績がないのだから、40歳超えてるとダメなような気も・・・(韓国での条件はわかりません)
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