サンタクロースの眼は青い
劇場公開日:2023年8月18日
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解説・あらすじ
ポスト・ヌーベルバーグを代表する映画監督ジャン・ユスターシュが「大人は判ってくれない」のジャン=ピエール・レオを主演に迎えて手がけた中編で、後の長編「ママと娼婦」「ぼくの小さな恋人たち」と併せてユスターシュ監督の自伝的3部作を構成する1作。
フランス南西部の街ナルボンヌ。定職のない青年ダニエルはモテるためにダッフルコートが欲しくなり、サンタクロースの扮装をして街角で写真撮影のモデルをする仕事を始める。やがて彼は、変装しているとナンパに好都合であることに気づくが……。
ジャン=リュック・ゴダールが「男性・女性」で使わなかったフィルムを提供して撮影された。特集上映「ジャン・ユスターシュ映画祭」(2023年8月18日~、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか)にて4Kデジタルリマスター版で上映。
1963年製作/47分/フランス
原題または英題:Le pere Noël a les yeux bleus
配給:コピアポア・フィルム
劇場公開日:2023年8月18日
その他の公開日:2001年4月14日(日本初公開)
原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
2.5モテたい、やりたい、愛されたいユスターシュの、はばからない悪童ぶりにイマイチ共鳴できず。
『わるい仲間』と併映で下高井戸にて視聴。
50分弱の中編だが、体感は長かったなあ。
ノリとしては、『わるい仲間』の姉妹作(というより兄弟作だけど)と呼びうる、きわめて同質性の高い内容で、ユスターシュが「こういう映画が撮りたかった」というのはよくわかる。
よくわかるのだが、映画自体は「だからどうした」みたいな内容で、あんまり共感する部分もなければ、家に持ち帰れる何か大切な感興とかもまるでなかったな……(笑)。
たぶん、ジャン・ユスターシュの根底には「永遠の悪童」というのがあって、『大人は判ってくれない』(本映画内にも上映館のシーンが出てくる)のガキ共がそのまま大きくなったようなボンクラ愚連隊としての自分――「性的にゆるいうえに狂暴で」「インテリだけど生産性に欠け」「いつも仲間たちとつるんでいないと不安でよるべない」ような「弱くてかっこいい自分」を認めてほしい、という強い承認欲求があるのだろう。
パンフによれば、ユスターシュ本人はこの映画に関して、
「十代の若者たちに気に入られて、おかげで本当に満足した」
「他者を助けるためにではなく(自分が)生きるためにこの映画を作ったのだ」
と述べている。
みんな、十代のときはこんな感じだったよね? というわけだ。
え? そうかな? いや、そうかも。
まあ、共感する人もいれば、しない人もいるだろう。
僕はといえば、十代のときは激しい破壊欲求と猛烈な性欲に苛まれながらも、詰襟制帽の中高一貫の男子校で兵隊のような(それはそれで充実した愉しい)青春を送ったので、こういう舐めた連中のことは基本的にあまり好きになれないんだけどね。
― ― ―
●サンタクロースの扮装をすると、とたんにモテ度がアップするというのはよくわかる。
自分もまだ若手社員だったときに、会社のイベントで着ぐるみに入ったことがある。
幼稚園くらいの女の子たちに「だーいすき」とか言って抱きつかれて、脳汁が出過ぎてトビそうになったのをよく覚えている。たしかにあんなにモテたことは、僕の人生であれ以外なかった気がする(チッ、別にいいんだよ、嫁にさえモテてれば……)。
●相変わらず、ジャン=ピエール・レオが軽い発達っぽさを発揮して、異常な勢いで女性につきまとって、デートを引き延ばそうとしていて、まあまあこわい。
女性が押しに負けない聡明さを発揮して、けっきょくは振られるところまで『わるい仲間』と同じだが、ジャン=ピエール・レオは「本物」感があるから、いい感じで気持ちが悪い。
●『わるい仲間』では男は二人組で常につるんでいたが、今回のジャン=ピエール・レオは仲間が多い。出てくる悪友連中も、一人増え、二人増え、結局六人くらいの「わるい仲間」が徒党を組んでいる。
にしても、なんでこの男たちはいっつも、Gメン75みたいに横並びで歩いてるんだ?(笑)
マジで邪魔すぎる……。
『わるい仲間』の二人組が、四人掛けのテーブルに「横並び」で座っていたのと同じぎょっとするような違和感を、こちらの映画でも感じ取ることができるが(そういう座り方のシーンもあったような)、この「横並び」って、『ワイルド・バンチ』の決め所とか、『レザボア・ボックス』の出陣シーンとかでも、死地に赴いて歩く男たちの姿は常に「横並び」なんだよね。
「ホモソーシャル」な関係性を示す、一種のクリシェということなんだろう。
●総じて退屈な映画で、『わるい仲間』以上にとりとめのない作りであるように思えたが、ラストの「売●●! 売●●! 売●●!」には、ふつうに声をあげて笑ってしまった。
こういう投げっぱなしのバカなラストは、とても美しいと思う。
●でも、こうやって『わるい仲間』と『サンタクロースの眼は青い』を続けて観て、さらには『ママと娼婦』の内容を反芻してみると、ジャン・ユスターシュって人は他のヌーヴェル・ヴァーグの監督たち以上に、思春期男子のような「モテたい」「女をモノにしたい」「自分の魅力に気づいてほしい」ってのが、生臭いまでに強いんだよなあ。
要するに、童貞くさいんだけど、その方向性が加害的なのが若干気持ち悪い。
女をモノみたいに扱ってる部分が大きいし、自分勝手な理屈をこねすぎている。
それと、ふつうに遵法性が低い(笑)。毎回、主人公に万引きとか寸借詐欺とかさせてるし、それを是としているらしい意気揚々とした気配がある。まちがいなくちょっと病的だ。
それを「キャラクター」としてやらせているというより、「私小説的な映画」における監督本人の分身としてやらせている――イコール「素で」やってる感じが強いので、僕のようなKeyゲー信奉者(病んでる女の子に尽くし、助け、救済することで自尊心を充たすタイプのマウント男子)には生理的に受け入れがたいということだろう。
●それにしても、「明晰な知性と、病的なこだわりと、エキセントリックな言動と、とめどない性欲と、いわくいいがたい愛嬌」を兼ね備えた存在として、トリュフォーからも、ゴダールからも、パゾリーニからも、ユスターシュからも、ほぼ「とあるタイプの役柄」を一手に押し付けられていたジャン=ピエール・レオって、マジで凄い存在だよな……。
よく「ミューズ」(芸術の女神)って言い方をするけど、まさにヌーヴェル・ヴァーグの男神。ひとつの時代と運動を支えた個人の俳優としては、サラ・ベルナールに匹敵する存在とすらいえるのではないだろうか。
3.0不思議な印象の残る場面がある。サンタバイトを始めてから最後までにチ...
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