わるい仲間
劇場公開日:2023年8月18日
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解説・あらすじ
ポスト・ヌーベルバーグの最重要人物の1人とされるフランスの映画監督ジャン・ユスターシュが1963年に発表し、キャリア初期の代表作となった作品。
パリの街をうろつく、タフガイ気取りで品位に欠けた若者2人組。やがてある女性と知り合ったものの口説くことに失敗し、腹いせに彼女の財布を盗んでしまう。
ユスターシュ監督の妻ジャネット・ドゥロに実際に降りかかった災難に着想を得た物語で、パリの街なかでのゲリラ撮影によってリアルに活写した。特集上映「ジャン・ユスターシュ映画祭」(2023年8月18日〜、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか)にて4Kデジタルリマスター版で上映。
1963年製作/39分/フランス
原題または英題:Les mauvaises frequentations
配給:コピアポア・フィルム
劇場公開日:2023年8月18日
その他の公開日:2001年4月14日(日本初公開)
原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
3.0ユスターシュ初期の中編。男が二人でキャッチみたいにナンパする、今日び「アウト」な話(笑)。
面白いかと言われると、ぜんぜん面白い映画ではない、悪いけど(笑)。
ただ、10年前の芸能人のナンパの仕方がどうのこうのってニュースで世間が持ち切りのときに、これを偶然観ることになったのは興味深い符合ともいえる。
こいつら……ナンパの仕方も、振られたときの復讐の仕方も、完全アウトすぎるだろ(笑)。
ジャン・ユスターシュの中編映画(このあと併映で観た『サンタクロースの眼は青い』ともともと抱き合わせで公開されたらしい)。
本来、僕が観るようなジャンルではないが、このあいだ『ママと娼婦』が意想外に素晴らしかったので、ためしに下高井戸の再上映に足を運んでみた。
話は、二人組のナンパ師が路上で女をつけまわした挙句ダンスホールに同伴することに成功するが、相手は別の男と踊りだして……という、まあどうでもいい内容。
男二人がつるんで女にちょっかいをかけるというのは、ゴダールの『女は女である』や『はなればなれに』でもやってたけど、当時だと一般的だったのかね?
なんか、うまくいっても必ず一人あぶれるってわかってるのに、なんでかなって気もするが。
考えてみると、フランスでは『冒険者たち』とか『太陽がいっぱい』とか、「男二人と女一人」の仲良しコンビの内輪で女の取り合いをする話がやたら多い印象があるよね。
あと、女性の両横から男性二人が挟み込んでプレッシャーをかけまくるシーンが印象的だし、たぶん有名だと思うのだが、それ以上に個人的にぎょっとしたのが、空いている四人席のテーブルで主役の二人が当たり前のように「隣り合わせ」に座るところ!
これがホモソーシャルってやつか!?
僕とか気持ち悪くて、前が空いてるのに友達の「横」とか絶対座れないけどなあ。
こういう「自然な不自然さ」の演出はうまいと思った。
けっきょく、こいつらは「女をものにする」ことが目的なのではなくて、「女をものにする」という共通の目的をもって「つるんで行動している」こと自体が真の目的なんだろうね。本当の連帯と紐帯と共鳴は、「男同士」のほうで成立している。
ね、とてもホモソーシャルでしょ。
やってることが下衆いので話には感情移入しづらいし、かといってパゾリーニの『アッカトーネ』のように、女たらしのろくでなしでもどこか愛嬌があるみたいな描写にもなっていないし。単純に「なんだこいつら」って印象しかわかなくて申しわけない。
いちおう、話の構造としては、男一人に女二人が言い寄りつつ女二人もある種の友情を育むという『ママと娼婦』の人物関係の、「性別」を入れ替えた形になるのかな?
むしろこっちが先なわけだから、「性別」を入れ替えた結果が『ママと娼婦』につながったというべきなんだろうけど。
男女の交歓劇だと思うから若干観ていて腹も立つわけで、最初からピカレスクだと思って観ていたら、だいぶ印象も違ったのかも……。
― ― ―
●考え抜かれた構図と静的なカメラワークが支配的だった『ママと娼婦』と違って、手持ちカメラを多用した動的でゲリラ的な撮影方法を中心として撮られている。とはいえ、三人の立ち位置や動き出しは緻密に考慮されていて、基本的には「みっちり計画通りに撮る」監督だという印象は初期から変わらない。
●出だしでデカいほうが小さいほうに言う「お前、頭薄くなってきたな」って台詞が妙に印象的。その際は「あれ? 言うほどかな?」と思ったのだが、その後バックショットで街を並んで歩くシーンが多出して、そのたびに小さいほうの後頭部の薄さが少し気になるので、ああ観客の機先を制して「こっちはちゃんと気づいてますよ」って指摘したわけね、と納得。あと余程親しい仲でもハゲは指摘しづらいから、二人の妙に親密な関係性やあけすけさをうまくあらわした台詞だとも言える。
●一方、二人に「つめられる」女性のほうは、離婚したせいで勤めも辞めざるを得なくなり、幼い二人の子どもを育てるために今は職探しをしているという、きわめて生活感のある存在。苦労はしているけど、男二人の屑っぷりと比べてじつに立派で、地に足がついている。彼女が男二人を「だし」にしてダンスホールに繰り出す流れも、ある種の「したたかさ」があって、個人的には好感がもてた。
●二人が入ろうとして辞める映画が、小林正樹の『切腹』。看板に「HARAKIRI」と書いてあって、横にフランス語で「カンヌで受賞」みたいな添え書きがあるのがわかる。ゴダールにしてもトリュフォーにしても、ときどきジャポニスム的な感性を見せて日本の風物とかグッズとか映画とかを引用・挿入してくるよね。
●たぶん、アッカトーネと違って主人公二人に共感しづらいのは、「常にふたりで女を追い詰めようとするキャッチめいた下劣さ」と、「たいして金もないのにネクタイにお洒落背広でモテようとするいじましさ」あたりが、僕のオタク的義侠心からして許せないからなんだろうな。
2.0本当に悪い!映画としても印象深いこともない。習作、ソナチネですかね...
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