劇場公開日:1982年1月23日
解説・あらすじ
第2次世界大戦を舞台に、ドイツ軍潜水艦(Uボート)の過酷な戦いを活写した戦争ドラマ。ロタール・ギュンター・ブッフハイムの同名小説を原作に、後に「トロイ」「エアフォース・ワン」などのハリウッド大作を手がけるウォルフガング・ペーターゼンが監督・脚色を担当。Uボートの実物大レプリカを建造して撮影を敢行し、閉塞感に満ちた艦内で繰り広げられる乗組員たちの戦いをスリリングに描き出す。1941年、ナチス占領下のフランスの港町ラ・ロシェルから、ドイツ軍の潜水艦U96が出港した。総勢43名の若き乗組員たちは、緊迫した空気の流れる船内で魚雷の恐怖や続発するトラブルにさらされ、肉体的にも精神的にも限界まで追い詰められていく。1997年には、ペーターゼン監督が編集を施したディレクターズカット版が製作された。
1981年製作/135分/西ドイツ
原題または英題:Das Boot
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1982年1月23日
スタッフ・キャスト
受賞歴
第6回 日本アカデミー賞(1983年)
ノミネート
外国作品賞 |
---|
第55回 アカデミー賞(1983年)
ノミネート
監督賞 | ウォルフガング・ペーターゼン |
---|---|
脚色賞 | ウォルフガング・ペーターゼン |
撮影賞 | ヨスト・バカーノ |
編集賞 | ハンネス・ニーケル |
音響賞 | |
音響効果編集賞 |
第39回 ゴールデングローブ賞(1982年)
ノミネート
最優秀外国語映画賞 |
---|
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映画レビュー
5.0TVシリーズのダイジェスト再編集版である事を凌駕した功績を刻んだ公開作
この作品を初公開時のロードショー劇場で当時鑑賞出来た時の衝撃は忘れられない。
海中の真っ暗闇の中から艦首が姿を現す冒頭のシーンには完全に度肝を抜かれてしまった。
特に当時から、世界中のほぼ全部と言える戦争映画作品でドイツ人側が“悪役”や非人間的“極悪人”とされて来た事にはとても不公平感とある種の不快な感情も抱いていたから、この作品の登場には溜飲が下がる思いだったことも。
それ程この作品の登場は自身にとって待望の作品でもあったし、当時としても画期的な出来事だったといえ、鑑賞後にも大いなる感動と満足感で劇場を後にした。
そしてその後も、一緒に鑑賞した友人などと未鑑賞の知人なんかにも吹聴したりなど暫くはこの作品の話題が続き、世間的にもマスコミも「無名のドイツ映画が異例の大ヒット」的に話題に登った。
またその当時、西ドイツ映画界の底力が世界に知らしめられたと言うことが、我が事のように誇らしく思えた瞬間でもあった。
この作品への愛着や興味は自身にとっても絶大すぎるくらいのものだったので、当然ながらサントラLPを入手して聴き入ったりしつつ、パンフレットの情報などから「オリジナルの原版は西独TVシリーズである」と知りその鑑賞への切望は高まるばかりで、叶わぬことと(国内TV放送など有り得ぬ)思いつつ、決して忘れる事などあり得ず時は過ぎていった。
この作品は上記のように、元々が劇場公開作品としての制作では無い、西独TVミニシリーズの抜粋編集版を劇場作品として世界公開した事で大ヒットし、監督キャスト音楽等の関係者を世界的に有名にさせた作品として、現在は認識されている。
この劇場初公開バージョンはUボート自体の活躍する見せ場シーンが少なく、沈没〜脱出、帰還するも無に帰すような、ほとんど悲惨な艦内シーンの人間ドラマを主にして反戦映画的要素を強めた構成となっていたため、繰り返し鑑賞していると可成り強引に端折ったために前後の繋がりに希薄を覚えるようになってしまっていたのも事実であった。
それを埋めるべく、後年発売が実現した本国オリジナルTVシリーズがLD・BOX化されて入手可能となったその時は遂にやって来た。
その際には迷う事なく即座に購入し、鑑賞を果たすことが出来た時にはその余りの生々しい感じや時間を追って進行して行く内容の濃密さに引き込まれて感動した。
そして劇場版はこれとは全く別物の、極く一部を切り取ったダイジェスト版に過ぎないことを改めて思い知らされた。
では、この劇場版の持つ意味が乏しいのかと言う事となるとそれは違っているだろう。
ただそれについては、当時の西独史上最大規模ともいわれる巨額の予算を投じて制作されたとされるこの映像作品を「劇場の大スクリーンに映し出されたのを鑑賞出来た」と言う事に一つの大きな意義があったろう。
更には前述のように、この劇場版作品の世界的大ヒットによって作品に関わった、監督、キャスト、音楽家といった関係者を世界的に知らしめた事で、ハリウッド作品に進出させる切っ掛けをもたらしたという功績は大きい。
それに続くその後の世代のドイツ系として、ローランド・エメリッヒ監督や、音楽のハロルド・フォルターメイヤーやハンス・ジマー等、‘80年代以降に目覚ましい活躍を見せるようになって、今日に至る感を覚える。
3.0潜水艦は「サイレントキラー」か。
<映画のことば>
今からブローチを行い、浮上を試みる。
浮上しても、まだ試練が待っている。
祈るしかない。
ディーゼルが動けば、両舷いっぱいで海峡から脱出する。そして帰還。
成功したら、ビールを振る舞う。
音もなく忍び寄って、一撃(の魚雷)で相手を殺す…正に「海のサイレントキラー」と呼ぶに相応しい兵器なのだろうと思いました。
しかも、せいぜいは数時間で基地に帰投し、乗員は夜は基地の(それなりには心地よい)ベッドで休むことのできる飛行機(航空兵器)とは違い、いったん出撃となると数ヵ月は基地に帰投しない艦船(潜水艦)の乗員には、戦闘だけでなく、日常生活にも不便の多いことでしょう。
その不自由・困難な境遇で死力を尽くして戦いに挑む男たち…。その苦難の様が「潜水艦映画にハズレなし」とも言われるのでしょう。
本作も、そのご多分に洩れず、苦戦の中でも艦長と乗組員たちの深い信頼関係が素敵な一本だったと思いますが、困難な任務から何とか無事に戻っても、その帰投した基地が受けた空襲であっけなく沈没させられて、艦長も戦死してしまうということは、この時点では、Uボートの勇猛果敢な戦闘にも関わらず、ドイツ軍の敗色はもはや明らかということだったのだと思いました。評論子は。
5.0潜水艦の話
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