ぼくの小さな恋人たち
劇場公開日:2023年8月18日
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解説・あらすじ
ポスト・ヌーベルバーグの最重要人物の1人とされる夭逝の映画監督ジャン・ユスターシュが自身の少年時代を投影させて描いた自伝的作品。カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した「ママと娼婦」に続く長編2作目で、ユスターシュにとっては最後の長編映画となった。
ペサックで暮らす13歳の少年ダニエルは優しい祖母や友人たちに囲まれて幸せな毎日を過ごしていたが、ナルボンヌに住む母と継父のもとへ引き取られることに。ダニエルは経済的な事情から学業を諦め、原付自転車修理店の見習いとして働き始める。
タイトルは詩人ランボーの同名の詩から採用された。特集上映「ジャン・ユスターシュ映画祭」(2023年8月18日~、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか)にて4Kデジタルリマスター版で上映。
1974年製作/123分/フランス
原題または英題:Mes petites amoureuses
配給:コピアポア・フィルム
劇場公開日:2023年8月18日
その他の公開日:2001年3月31日(日本初公開)
原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
2.5少年のころから女好きの性癖は不変(笑)。ジャン・ユスターシュ版『ヰタ・セクスアリス』!
おお、なんか映画.comに感想をつけるようになって3年、
初めて運営に感想を問答無用で削除されたんだけど(笑)。
何が悪かったのかなあ? ふだんどおりに書いたつもりだったんですが。
通告なしに検閲される言論空間だということを、再認識しました。
……なので、簡便に先に書いたことをあらためて(穏便な表現でなるべく検閲されないように)とりまとめておきます。
ユスターシュの私小説的三部作を形成する少年篇にして、最後の(といっても二本目だが)長編作品。主人公は13歳というから、日本でいう中学生くらいか。
とにかく出だしから、飛ばしてる。
友だちにいきなり腹めがけてグーパンかましてみたけど、なんともなかったぜ!
聖体拝領のときに、ひとり前に並んでる美少女に興奮して、つい体押し付けちゃったぜ!
って、単なる犯罪者じゃねーか(笑)。
初期作である『わるい仲間』と『サンタクロースの眼は青い』の二中編を観たときも、とにかく女性と関係を持ちたい、女性をなびかせたいという異様な妄念だけが突出していてまあまあ気持ち悪かったし、傑作『ママと娼婦』でも、主人公のジャン=ピエール・レオは、二股をかけて二人の女性を傷つけることを全く厭わない、正真正銘のろくでなしだった。
まさに三つ子の魂百までの諺どおり、ユスターシュには少年時代からじゅうぶんその「素養」があったわけだ。
ほかにも、作中で少年が繰り広げる女性に対する行為は、なかなかにえげつない。
女の子を尾行したり、銃口を向けたり、子供たちのフェスで痴漢を敢行したり、映画館で知らない女性に耳フーしたうえキスを強行したりと、まさにやりたい放題。
終盤では、場面写真として使われている田舎の少女とのやりとりもでてくる。
これが『青い体験』や『ポーキーズ』みたいな「もともとそういう趣向の思春期映画」だったらむしろ僕にとっては大好物だし、キャラクターとして「そう描かれている」のならまだこちらも客観視して楽しめもするのだろうが、ポスト・ヌーヴェルヴァーグの枠内で呈示されたうえで「監督の自伝的要素が強い」などと言われてしまうと、「なんだよ、この性犯罪者予備軍!」としか思えなくて、ほんとすいません。
自分もそれこそ幼稚園のころから●●旺盛な児童ではあったので、人のことはあまり言えないんだけれど、少なくともそれを映画にして人にさらそうとは思わないもんで(笑)。
自分はこんなガキでしたって、世の中に語り掛けずにはいられない自己顕示欲というのは、ジャン・ユスターシュの「業」だよなあ。
そして、そういう「業」は、まわりにもたくさん犠牲者を強いた末に、いつか本人をも滅ぼすことになるっていうね。
たしかに、少年は私生活で大変な部分を抱えてはいる。
もともとはお祖母ちゃんのもとで、子供らしく平和に過ごしていた少年。
それが、母親がスペイン人の旦那と再婚(事実婚)したのを機に、街でふたりと一緒に暮らすことになる。そのこと自体は少年も待ち望んでいたことだったが、いざ行ってみると、お金がないとの理由で学業を断念させられ、義父の弟のバイク店で見習いをさせられることに。
鬱屈する想いを抱えた少年は、店番をしながら、目に入る大人たちの行動をつねに「窃視」し、それを律儀に「模倣」するかのように、タバコを覚え、女性への欲情をつのらせ、町の愚連隊とつるんでガールハントにいそしむようになる……。
ただ、映画の描き方として、貧困や学業断念の理不尽、不慣れな労働との向き合い方、ダメ人間の親との葛藤といった部分はあまり強調されない。むしろ、なんとなくぼんやりとした諦観を以て、すべてがやり過ごされている印象で、その代わりに少年の反抗心は、猛烈なリビドーと女性征服欲求のほうに全振りされることになる。
全体として、女性に対してナチュラルな感じでモノのように扱う描写が多く、観ていて正直あまり気持ちのよい映画ではなかった。
結局、この映画は『ヰタ・セクスアリス』をテーマとしているように見えて、実際は女性を追いかけまわしている「周辺の大人びた連中」の「真似」をして「その仲間入りをしたい」という、「ホモソーシャル」を指向した映画であるという点で、『わるい仲間』や『サンタクロースの眼は青い』と本質的に何も変わらない。
そこで女性は、性的対象として「崇められる」のではなく、むしろ「軽んじて」扱われる。その部分がユスターシュの根幹にある以上、たとえ『ママと娼婦』が大傑作だとしても、個人的にはあまり好きになれない監督だとしか言いようがない。
― ― ―
●とにかく主役の少年の手足がむやみに長くて、異常にスタイルが良いことに圧倒させられる。他の少年少女も、ヤバいくらい手も足も長くて顔が小さくて……。
やっぱり、人種間のスペック差ってのは間違いなく存在するよね(笑)。
僕は主役の少年に声を大にして言いたい。お前は放っておいても3年後アホみたいにモテるようになるんだから、今からそんなにがつがつしなくてもいいんだよ、と……。
●演出技法としては、出演陣にはなるべく演技経験のなさそうな子供たちと大人を選んだうえ、主役の少年には極力棒読みでしゃべらせ、監督の思うように型にはめて一挙手一投足を「振りつけている」ように見える(それは他の少年少女に関しても同じ)。これはおそらくロベール・ブレッソンの演出法を強く意識したものではないか。
●愚連隊の少年たちがチャリを飛ばして隣町までガールハントに出陣する爽快なショットは、間違いなくフランソワ・トリュフォーの『あこがれ』を意識しているはずだ。
●ちなみに、途中で川があって橋が流されていて、年長者ふたりが水に飛び込んで向こう岸まで行って渡し舟を引っ張ってくるシーケンスは、ストーリーとしては全く不要のイベントだが、むらむらとみなぎらせた少年たちの通過儀礼としては、よく出来たメタファーだと思う。
●田舎でのガールハントシーンは、他のシーンよりは生き生きと撮られていて面白いし、尾行てきた年長者の愚連隊連中があっさり踵を返して帰っていくシーンには思わず笑ってしまったが、女の子二人をあの人数で取り囲んで圧をかけて、あげく中学生くらいの少女にギラギラしながら高校~大学くらいの齢の男子が群がってるのは、今の感覚でいうと完全アウトだよね(笑)。
●撮影技法としては、名カメラマン、ネストール・アルメンドロスの起用もあって、他の作品よりも動的でバランスのとれたカメラワークが顕著。初のカラー作品として、色彩設定も実に美しい。
各シーンのつなぎでフェイドを多用しているのも印象的で(同じフェイドの技法はギャスパー・ノエの『ヴォルテックス』やヴィクトル・エリセの『瞳をとじて』でも見られた)、これは私的な「記憶」の断片の集積体としての映画の在り方を強調する効果を上げると同時に、本作をサイレント・ムーヴィーの世界と淡く結びつける役割をも果たしている。
ただ、それが映画として効果的かと言われると疑念もあって、あまり様子のよくわからない断片的記憶がヤマなしオチなしですうぅっと終わってそのままフェイドすると、とんでもなくどうでもいいものを見せられた気になるのもたしかだったりする。
●少年が映画館の前の席の知らない女性にディープキスを敢行するシーンで、エヴァ・ガードナーの出ている映画がかかっているのはとても気になる。字幕で「パンドラ」というタイトルが出ていたので帰宅後調べてみたら、アルバート・リューイン監督の1950年の同名映画で、ギリシャ神話の「パンドラ」の物語と、ワーグナーがオペラ化している「さまよえるオランダ人」の伝説を合体させた現代もののファンタジーらしい(どんな合体だよw)。少なくとも男たちを魅了する「ファム・ファタル(運命の女)」ものの映画であることは確かで、本作に引用するには実にふさわしい素材といえるだろう。
2.0始めは普通の商業映画のようなスムーズな進行に好感を持ちましたが、こ...
始めは普通の商業映画のようなスムーズな進行に好感を持ちましたが、これは数多いる監督たちが普通にやっていること。気にかかるのが、ユスターシュはとにかく金・女・金・女、ただそれだけ。青年がナンパの腕を磨いて右往左往するのはわかるが、子供でまで金と女の話をされると流石に閉口してしまう。何かの一瞬の輝き、或いは闇。生きる以上関わらなければならないテーマ、思い。ユスターシュにそんなものはない。口の回る優男が女を求めて金から逃げて、街や田舎を彷徨うだけだ。シネアストなのにどうしてこうなってしまうのだろう。
…ちょっと言い過ぎたかもしれない。しかし映画監督として一線級になれなかっのは納得がいく。逆に言うと「ママと娼婦」は紛れもなく天才性そのものということ。
4.0思春期の少年
5.0少年映画のトップクラス
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