ベン・ハー(1926)
解説
「椿姫(1927)」「悪魔の踊子」等と同じくフレッド・ニブロ氏の監督作品で、ルー・ウォレス将軍氏の小説を映画化した大作品である。ジューン・メイシス女史が映画向きに書き直したものからケイリー・ウィルソン氏が脚色し、それに基づいて更にウィルスン氏がベス・メレディス女史と協力して撮影台本を作成した。主役ベン・ハーに扮するのは「海軍士官候補生(1925)」「紅百合」等主演のラモン・ノヴァロ氏で、「裁かれる魂」のフランシス・X・ブッシュマン氏、「昼閑夫人」のメイ・マカヴォイ嬢、「曠原の烽火」のベティー・ブロンソン嬢、「ソレルとその子」のカーメル・マイアース嬢、「燃ゆる戦線」のキャスリーン・キイ嬢、その他多くの知名の人々が出演した。映画中の最も呼び物たる戦車競争の場面はリーヴス・イースン氏が特に監督した。ちなみにこの映画は、最初メシス女史の脚色、チャールズ・ブレビン氏の監督、ジョージ・ウォルシュ氏の主演で制作される予定であった所、中途にしてここに示した顔触れに変更されたものである。
1926年製作/アメリカ
原題または英題:Ben-Hur
あらすじ
これは一ユダヤ人ベン・ハーの物語であると共にキリストの物語でもある。紀元前、ヘロデの朝、ローマの勢力旭の昇る如き頃に、イスラエル、ユダの里にベン・ハーという青年がいた。彼16才の時、幼友達のメッサラに巡り会ったがメッサラは時に年19才、ローマの武人となっていて、ローマ人に非ざれば人に非ざるが如き気はいを示し、ベン・ハーを嘲った。これにベン・ハーの心は燃え立ち、奮然ユダヤ民族のために戦うべき事を誓った。ローマの執政グロウタスがこの地に赴任して来た日、ベン・ハーは誤って煉瓦を落とし執政を傷つけたので、彼は母及び妹と共にローマ人に捕らえられる。しかも捕らえに来た人というのはメッサラであった。かくてベン・ハーは奴隷として笞と鞭とに打たれる日を送り、更に軍艦の漕ぎ手としての苦難と屈辱との日を送った。その間、反抗の精神とユダヤ民族とのために戦う気迫は益々熾烈に燃えさかっていった。海賊の一隊がこのローマの海軍を襲った時、ローマ軍は全滅し、ただ、ベン・ハーと彼に救われた司令官アリウスとこの2人のみが命を全うした。アリウスはベン・ハーを己が養子とした。ベン・ハーは明るみに出た。が、彼はその豪奢な生活を棄て母と妹とを尋ねて旅立ちをした。アラビアで彼は昔の老僕シモニデスとその娘エステルとに会った。エステルと彼とは互いに憎からず思う。翌日、彼は戦車競争の選手として数万の観衆の眼前に立った。相手は?珍しや積年の仇敵、ローマのメッサラである。ベン・ハーとメッサラの争い、これはまさに両人によって代表せられる両民族の闘争の縮図であった。メッサラは奇計をもってベン・ハーの車を転覆せしめんとしてかえって己が命をおとした。ベン・ハーは勝った。彼はこの意気をもって直ちに義軍を募り、ローマ人のために磔刑に逢わんとしているキリストを救わんと道を急いだ。が、キリストは彼の救いを謝絶して刑場へ引かれて行った。時にキリストによって病を癒された2人の女があった。それはベン・ハーの母と妹とであった。キリストは処刑せられた。が、神の恵みはベン・ハーの一家にも、エステルにも、否、世のあらゆる人々の上にも静かなる朝を迎えさせ給うた。
スタッフ・キャスト
映画レビュー
3.5思いの外良かった
「サイレント映画だし2026年の人間が観てもな~。ま、宗教と歴史の勉強になるから観てみるか」と期待せずに鑑賞。
うわ、ちゃんとおもしろい!
サイレントを馬鹿にしていて本当にすみませんでした。自分が無知で恥ずかしい…!
セリフが限られている分、観客が状況理解できるよう、俳優の動きや演出など“画で見せる”ことのレベルが非常に高くて驚いた(ベン・ハーがガレー船から覗く同胞のユダヤ人奴隷を苦渋の決断で見捨てるシーンetc.)。完全なカラーではなく限定的に色を付けることにより、かえって人物の感情や情景が際立たせることにも成功している(マリアを見た時の赤子を抱く女のシーンetc.)。
状況説明のセリフがダラダラ長い現代の作品の方が、むしろ劣っているかもしれない。昔の人のアイデアや工夫に脱帽した。
またガレー船のシーンは必見。当時のガレー船ってこういう構造だったんだ!そして漕ぎ手は奴隷たちが従事していたんだなあ…と勉強になった。
あと「聖衣」と同じくキリストは体の一部が出てくるだけで顔は映さないようにしているのだが、これは偶像崇拝禁止の故だろうか?
しかし気になったのは、やはりユダヤ人視点のみで描かれているところ。そういう作品だから仕方ないのだが…。ニュートラルでない点はどうしても気になる。宗教とは難しい…。
4.5映画の極み
Amazon primeにて観賞。
約100年前の映画になる。
1959年のベンハーは知ってるけど観たことはない。と言うか、1959年版がリメイクなのを知らなかったのでとても気になり本作をみる。
1926年を調べると昭和元年(大正15年)とある。
う~ん、昔過ぎて実感が無いがww1と2の間くらいにあたるのか。
そんな時代にこの映画、セット、エキストラ、ストーリーの規模が巨大過ぎてサイレント映画ながら今観ても思わず息をのむ。
サイレントだけに俳優たちは内面の感情を表情や仕草で分かりやすく表現しているものの、違和感のない演技で惹き付けられる。
どうやって撮影したのか、海軍船とバイキングとの死闘、馬車レースなど迫力がありすぎて、昨今のアクション映画を腐るほど観ているのに、空いた口が塞がらないほどワクワクした。
それに編集が何より素晴らしい。昔の映画は今の映画に比べるとどうしてもゆっくり凡長に感じるシーンが多いのだが、どうしてこの映画はかなりスピーディーに展開して無駄がないのだ。
かと言ってじっくり見せたいシーンにはそれなりの時間を割いている。
まさに映画のお手本をみてるよう。
凄い、凄すぎます。
ただただ感服。
こんなとんでもない映画、100年前に作られていたなんてまだまだ世界は広い。
何より素晴らしいのは
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