ベイブ
劇場公開日:1996年3月9日
解説
立派な牧羊犬ならぬ牧羊豚になることを夢見る無垢な子ブタの奮闘を描く感動作。500匹にも上る本物とSFXを巧みに組み合わせた、動物たちの“演技”がみごと。イギリスの童話作家ディック・キング・スミスの『The Sheep-Pig』を、「マッドマックス」シリーズや「ロレンツォのオイル 命の詩」のジョージ・ミラーの製作・脚本で映画化。監督は本作が初の劇場用映画となるオーストラリアの監督、クリス・ヌーナンがあたった。脚本はミラーとヌーナン、製作はミラー、ダグ・ミッチェル、ビル・ミラー。撮影はアンドリュー・レズニー、音楽はナイジェル・ウェストレイク、美術はロジャー・フォード、編集はマーカス・ダルシーとジェイ・フリードキン。アニマトロニクス(ロボット)製作はジム・ヘンソンズ・クリーチャー・ショップ、動物演技指導は「ベートーベン」シリーズのカール・ルイス・ミラーが担当。出演は「名探偵登場」「ピンク・キャデラック」のジェームズ・クロムウェル、オーストラリアのトップ・コメディエンヌのマグダ・ズバンスキーほか。第68回アカデミー視覚効果賞、全米批評家協会最優秀作品賞受賞。
1995年製作/92分/オーストラリア・アメリカ合作
原題または英題:Babe
配給:UIP
劇場公開日:1996年3月9日
あらすじ
子ブタのベイブ(声/クリスティン・カウゲァナー)は、収穫祭の体重当てコンテストの賞品として、無口な農場主アーサー・ハゴット(ジェームズ・クロムウェル)に引き取られた。農場にはさまざまな動物たちが住んでおり、色々なルールがあった。牧羊犬の母犬フライ(声/ミリアム・マーゴリーズ)は、母を恋しがって泣くベイブを、自分の子供たちと一緒に育てる。ある日、牧場に羊泥棒が現れた。ベイブは主人に急を知らせるべく急ぐ。その日からアーサーは、ベイブに牧羊犬の役割を務めさせようとする。犬を真似て威嚇するものの、羊たちはバカにして言うことを聞かない。だが、老羊メー(声/ミリアム・フリン)のアドバイスに従って素直にお願いすると羊たちは静かに整列し、アーサーも大満足。だが、父犬のレック(声/ヒューゴ・ウィーヴィング)は牧羊犬としてのプライドを傷つけられ、怒り狂う。ある日、野犬の群れが牧場に侵入し、メーが殺されてしまった。アーサーはベイブのせいだと思い込むが、やがて誤解も解け、ベイブに寄せる期待もますます高まる。アーサーは牧羊犬コンテストにベイブを出場させようとし、妻(マグダ・ズバンスキー)は正気を疑う。家の中にも入れられてかわいがられ、嫉妬した猫はベイブに、ブタは人間に食べられるために飼われているんだと告げる。ショックを受けたベイブは失踪し、翌朝発見されるが弱り切っていた。その時、無口なはずのアーサーが歌い踊り、ベイブを励ました。何とか持ち直してコンテスト会場へ急ぎ、審査員からやっと出場が認められた。レックスは羊たちの合言葉を聞き出し、急いでベイブに教える。すると、羊たちはベイブの言うことを聞き、無事に試技は終了。審査員は全員満点を付け、満場割れんばかりの拍手喝采が、ベイブとアーサーを讃えた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- クリス・ヌーナン
- 脚本
- ジョージ・ミラー
- クリス・ヌーナン
- 原作
- ディック・キング=スミス
- 製作
- ジョージ・ミラー
- ダグ・ミッチェル
- ビル・ミラー
- アニマトロニクス・キャラクター創作
- ジム・ヘンソン工房
- 撮影
- アンドリュー・レスニー
- 美術
- ロジャー・フォード
- 音楽
- ナイジェル・ウェストレイク
- 編集
- マーカス・ダーシー
- ジェイ・フリードキン
- アニメーション&視覚効果
- リズム&ヒューズ・スタジオ
- 動物演技指導
- カール・ルイス・ミラー
- 字幕
- 戸田奈津子
受賞歴
第68回 アカデミー賞(1996年)
受賞
視覚効果賞 |
---|
ノミネート
作品賞 | |
---|---|
監督賞 | クリス・ヌーナン |
助演男優賞 | ジェームズ・クロムウェル |
脚色賞 | ジョージ・ミラークリス・ヌーナン |
編集賞 | マーカス・ダーシージェイ・フリードキン |
美術賞 |
第53回 ゴールデングローブ賞(1996年)
受賞
最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル) |
---|
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映画レビュー
5.0マッドマックスの監督
4.0過酷な世界で己が生存権を掛けて戦う子豚の勇姿を見よ!
人生にはただ無心で動物を眺めたい…という衝動に駆られる時というものがあると思うのですが、その時がいよいよ私にも訪れた様です。
ただでさえ低い集中力がカツカツとなり、映画を見ていても見たシーンから直ぐに忘却されていき、物語の前後がまったく繋がらないというメメントの主人公をも凌ぐポンコツ状態に陥ってもなお楽しめる映画―。それが動物映画なのです。
動物映画にも物語やテーマがあるのは分かっています!分かっているのですが、もうぶっちゃけ動物が可愛ければそれでいいじゃないか!!という一点突破の楽しみを見出せるのが動物映画の良いところだと思うのです。そして何より動物園に行った時のあの獣臭さを感じずに、可愛いさだけを堪能できるのが動物映画の最大の利点なのです!
という訳でただひたすらに愛くるしい動物の姿を頭空っぽにして堪能してやろうとチョイスしたのが本作なのですが、この映画の製作と脚本を(他者と共同で)手掛けているのがジョージ・ミラーなのです。そうです。ちょっと前に「マッドマックス:フュリオサ」で映画ファンを沸かせた、かのマッドマックスシリーズのジョージ・ミラーです。本作では監督こそしていないのですが、流石に文明崩壊後の世界を生存本能剥き出しで生きる人間の姿を描いてきた男の息がかかった作品だけあって、単に可愛さだけを堪能してやろうというコチラのアテを外してきます・・・・・・。
ベイブは養豚場で産まれた子豚です。なので本来ならば将来は食肉となり人間様の食卓に並ぶ運命だったのです…。実際にベイブの母は映画開始早々に出荷されていきます。映画の中の豚たちは出荷されるという事は「楽園」へ行くことだと思っており、出荷された豚たちが帰ってこない本当の理由を知りません。(少し前にそんな設定の漫画があった気がしますが…)母が帰ってこない理由に関係なく、単純に母を恋しがり泣くベイブ…。まるでヴィーガニズムの啓蒙のような導入部です。
そんな泣く姿が運よく?人の目に留まったベイブは村祭の懸賞商品として生きたまま出品され、当選したとある農夫の農場へ行くことになります。多種多様な動物が暮らす農場。そこは日々の糧(餌)を保証された動物たちにとって安寧の楽園かと思いきや、ご主人(農夫)にとってどんな益をもたらすかで序列が決まる超能力主義の世界だったのです。
しかもその能力というのが各動物が生来持っている種族的な特徴に依存しているため、牛は乳を出し、鶏は時を告げ卵を産み、羊は羊毛を作り出し、犬はご主人の仕事のパートナーであり、猫は人間たちを癒してくれる!というプラスアルファ的な特徴のない豚(ベイブ)やアヒルのような動物は、丸々太って美味しく食べられるという役割しかない世界なのです。
ご主人が生殺与奪の権を握るこの小さく過酷な世界で、疑う事を知らない純粋なベイブは持ち前の優しい心と好奇心、そして好奇心に素直に身をゆだねられる行動力とを持って、世界から与えられた役割を、ご主人や農場の動物たちの先入観や既成概念を覆し、食肉になるだけの運命を大きく変えていくのです。
こちらとしては世間から与えられた役割だとか、より理想的とされる生活の為に努力しなければならないとかいう億劫な現実から目を逸らすために動物映画を見ている訳なので、人に媚びへつらった甘ったるい可愛さだけ見せて…と思いつつも、この世界で生きる為、居場所を確保するためにはやはり頑張らねばならないという世の理を改めて教えられる思いなのでした。
またベイブの奮闘とは直接関係がないもののこの映画には個人的に印象深いシーンがあります。
ご主人には幼い孫娘がおり、クリスマスシーズンに遊びに来るのですが、最初からこの孫娘はご主人の農場へ来ることを嫌がっております。単純に田舎が嫌いなタイプの子なのでしょうが、ご主人はこの孫娘のために手作りの立派なドールハウスを用意しました。
ところが孫娘は手作りのドールハウスを見るなり「これじゃない!テレビでやってるヤツが欲しい!!」と大泣きします。ご主人を含め大人たちはみんな苦笑いです…。
まぁ確かにこちらの好意が受け入れられなかったからと言って子供にヘイトを向けるは違うのでしょうし、私も子供の頃は工場で大量生産された既製品が大好きな子供だったので、直情的には「このク○ガキッ!」とは思うのですが、そういう事もあるよね…と、この子もいずれは他人が自分のために何かをしてくれる事の特別さを理解するようになるだろうと期待して、生温かく見守るしかないという「魔女の宅急便」(89年)の例のニシンパイと双璧を成す、見ていて居心地の悪くなるシーンなのです。
また続編である「ベイブ/都会へ行く」(98年)ではジョージ・ミラー自身が満を持して監督を務めているため、マッドマックスシリーズに通じる様な神話的物語が見られます。マッドマックスシリーズが好きな方にはこちらもおすすめの1本です。
すっかり当初の目的である動物の可愛らしさが他所になってしまいましたが、動物はもう文句なしに可愛いです!ただ本当に可愛いのでうっかりヴィーガンになってしまう可能性があるため、その点は気を付けて鑑賞したい作品です。
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