劇場公開日:1952年10月9日
解説・あらすじ
市役所の市民課長・渡辺は30年間無欠勤、事なかれ主義の模範的役人。ある日、渡辺は自分が胃癌で余命幾ばくもないと知る。絶望に陥った渡辺は、歓楽街をさまよい飲み慣れない酒を飲む。自分の人生とは一体何だったのか……。渡辺は人間が本当に生きるということの意味を考え始め、そして、初めて真剣に役所の申請書類に目を通す。そこで彼の目に留まったのが市民から出されていた下水溜まりの埋め立てと小公園建設に関する陳情書だった。この作品は非人間的な官僚主義を痛烈に批判するとともに、人間が生きることについての哲学をも示した名作である。
1952年製作/143分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1952年10月9日
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
4.0わたしはそんな風に・・・ひとつ・・・生きて・・・死にたい。 いや、それでなければ・・・とても・・・死ねない。
生きることと、ただ生かされることは明確に違う。
役所で波風立てず、ただどうでもいい事務仕事をこなし、それなりの役職で定年の30年を迎えることが人生の最終ゴールなのか。生活の糧を得るためなら、空虚なことを空虚だと思わず、疑問にも疑問だと声をあげず、感情は奥底に封印し、ただ死んだような目でやり過ごすことが模範的な組織人の姿なのか。
同じような宣告をされたとき 「私の人生は何だったんだ。。」と後悔する場面を想像すると背筋がゾッとする。
「面白くない仕事やけど、家族のためにも定年までなんとかしがみつくか。 それなりの給料もらえるし。 目つけられるとやっかいだから、疑義も唱えずイエスマンでさ。。。」
こう思いながら過ごす日々は、ぜんぜん楽しくなかった。でもこれが賢い大人の選択だと思い込もうとしていた。 この状態でもし死んだら、自分は成仏できるだろうか。
いつまでも体の中にしこりのように残る映画だ。それも相当に熱いしこりで。
※意外にも、渡辺は中盤であっさり退場する。そこから通夜に参列した者たちによる回想で展開する。こういう斬新な構成やカット割など令和のこの時代でも全く古臭さを感じず新鮮味さえ感じる、実に面白い。「羅生門」を観た時も思ったが、黒澤監督が「世界の黒澤」といわれていることに、ものすごく腹落ちする映画である。と同時に、世界の映画人がこういう機微や面白さをちゃんと捉える感性であることを嬉しく思う。
4.0生きている今を考える!
自分の生まれる遥か前の作品です。
黒澤明監督というと、自分の中では時代劇のイメージが圧倒的に強い。大画面でこそ見応え十分の迫力ある画面が印象に残ります。
そんな監督の現代劇。元々、このてのジャンルの映画を観る事も少ないのですが、ハリウッドでリメイクされたこともあり、ちょっと興味を持ち始めてたところでのBS放送ということで鑑賞に至りました。
邦画って、どうもセリフが聞き取りづらくて・・・字幕がついていたら、なお楽しめただろうなって事はさておき、すっかり引き込まれちゃいました。やっぱり画に引き込む魅力があるんですよね。
黒澤明監督作品って言うか、昔懐かしい見たことある俳優さん達の若々しい姿がエネルギッシュに感じられました。白黒作品なのに志村さんの顔色の悪さがヒシヒシと伝わってくるような・・・
自分の死期が近付いていることに気付き、自暴自棄になって歓楽街を豪遊するシーンも凄いです。自分のイメージする以上の昭和の風景がそこにありました。人でごった返しの夜の街。タバコの煙で霞みまくっている店内。もちろん、その時代の映画ですから、当たり前の映像なんだろうけど、インパクトを感じます。葬儀のシーンも昔はこうだったなと、妙に懐かしく思っちゃいました。
【ネタバレかな】
自分の寿命がもうすぐ尽きると知った時。
死への恐怖から自暴自棄になってしまうのも、よく解ります。
でも、その中で改めて自分の生について考える。
自分が生まれたのは何故?生存理由は?何故生きている・・・
何をしたのか?何ができるのか?何を残すのか?
人間に、もし価値があるとしたら・・・
自分は、その人が死んだ時に分かると思ってます。葬儀の席で、どれだけの人が集まり、悔み、悲しみ、話してくれるのか。多くの人に接し、多くの事を残し、多くの人の記憶に刻まれることが、生存の意義と感じます。「生きている」事が「生かされている」、人として人と関わる事が最高の価値ではないでしょうか。
自分にそれが出来ているとは思えません。価値ある人生を過ごそうとする気も無い、ただ息をしているだけの毎日です。何かを成そうとするエネルギーは、もう無いかな。
でも、なにかの機会で、何かあったときに、人の心に残る行動ができたらいいなって思ってます。
そんな事を想い起こさせてくれる一本でした。
葬儀の席で、故人の事を語り合う。時には蔑み、時には褒め称え、故人を懐かしむ。その中で、故人の偉業を思い知り、明日からの自分を奮い立たせようと決起した後・・・
何事も変わらなかった日常が描き出されるラストカットもまた、印象的でした。
4.550代ですが、初めて観た。 ストーリーはわかりやすい。死を意識し始...
3.5生きるとは、誰かの為に何かをする事だろうか
【イントロダクション】
胃癌によって余命幾許もないと悟った市役所の市民課長が、残された人生の中で「生きる」意味を求め、やがて自らの使命に奔走する姿を巨匠・黒澤明が描く。東宝創立20周年記念作品。
【ストーリー】
市役所で市民課長を務める渡辺勘治は、かつて持っていた仕事への情熱も失せ、来る日も来る日も、書類に判子を押すだけの「死んだ」日々を過ごしていた。住民による苦情や要望も、「その担当は○○部署です」とたらい回しにされる現状。
ある日、かねてから胃の調子に違和感を抱いていた渡辺は、あと一月で“30年間無遅刻・無欠勤”という皆勤記録が控えていたにも拘らず、休暇を取って病院に向かう。渡辺は、院内事情に詳しい患者から、「軽い胃潰瘍だと言われたら胃癌の証拠」と告げられる。案の定、医師から告げられた結果は、軽い胃潰瘍だった。
自分の死期を悟り、自暴自棄になった渡辺は、職場へ欠勤届も出さず、貯金から5万円を引き出して夜の街へ向かう。飲み屋で偶然知り合った小説家に事情を話すと、彼は渡辺に夜の街を案内する。しかし、一時の放蕩に虚しさを覚えた渡辺は、街を後にする。
後日、街を歩いていた渡辺は、職場の部下である小田切とよと偶然出会う。その日以降、何度か食事を重ねる中で、渡辺はとよの奔走さと活力に満ちた生き方に惹きつけられる。やがて、とよは玩具会社の工場作業員に転職した。自分が胃癌であることを伝えると、とよは工場で作っている玩具を見せて「あなたも何か作ってみたら」と勧める。渡辺は「まだ出来ることがある」と気付き、市役所に復帰する。
それから5ヶ月後、渡辺は胃癌によってこの世を去った。通夜の席にて、同僚達はまるで人が変わったかのように、住民の要望であった公園作りの為に5ヶ月間奔走し続けた渡辺について語り出した。
【感想】
志村喬のボソボソと喋る演技は、これまで長いものに巻かれ、自分の意思を封じ込め、流されて生きてきた事をよく表している。ギョロッとした目の演技も特徴的で、ともすれば不気味ですらある。
余命を悟り、半ばヤケクソに夜の街へ繰り出す渡辺。しかし、これまで真面目に生きてきた、何もしてこなかった渡辺は、どう遊び、どう金を使えばいいかが分からない。小説家に案内され、パチンコにバー、ストリップショーと、歓楽街をあちこち行き来する。この一連のシーンに漂う、華やかさの裏にある虚しさが良い。ダンスホールで渡辺が『ゴンドラの唄』を歌う瞬間の、周囲のドン引きも他所に、瞳に涙を浮かべ「いのち短し 恋せよ乙女」と口ずさむ姿が印象的。
とよとの出会いを境に、彼女の生き方に惹きつけられていく渡辺の姿は、答えを求めて縋り付くかのよう。とよの言葉を受け、何かを悟った様子で、カフェの階段を駆け降りる渡辺。別の客の誕生日パーティーと重なった為、階段を駆け降りる際に、皆が「Happy Birthday To You〜♫」と合唱しているのだが、その様子はまるで、ようやく「生きる目的」を得た渡辺の人生における“第二の誕生”の瞬間を祝福しているかのよう。
ラストで雪降る公園のブランコに座り、『ゴンドラの唄』を口ずさむ渡辺の中には、どんな感情があったのだろうか。最後の仕事をやり遂げた達成感か、自らに再び生きる気力を取り戻させてくれたとよへの感謝か、息子夫婦に対する別れの意思か…。
渡辺の表情を真正面から捉えたショットが実に美しい。
通夜の翌日、渡辺の“最期の輝き”にあれだけ胸を打たれた同僚達は、再び「何もしない」というお役所仕事に戻っている。しかし、渡辺が尽力して作り上げた公園では、沢山の子供達が遊びはしゃいでいた。彼の最期の日々が織りなしたものは、誰かの為になっていたのだ。
小説家役の伊藤雄之介の演技も素晴らしく、時に渡辺の身を案じる表情を浮かべた瞬間が印象的。
【総評】
生きるとは、何だろうか?誰かの為に、何かをする事だろうか?その為に、自分には何が出来るだろうか?
古い作品ながら、作品の持つ普遍的なテーマは、今を生きる我々にも深く突き刺さる。
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