緑はるかに
劇場公開日:1955年5月8日
解説
プロデューサー水の江滝子の第二作で、読売新聞連載の北条誠の原作から京中太郎が脚色、「ジャズ娘乾杯!」の井上梅次が監督する。撮影は柿田勇、音楽は「水戸黄門漫遊記 天晴れ浮世道中」の米山正夫の担当。出演者は子役募集で選ばれた浅丘ルリ子を中心として少年少女俳優が活躍するほか、高田稔(人斬り彦斎)、藤代鮎子、明美京子、フランキー堺(初恋カナリヤ娘)に、「生きとし生けるもの」の北原三枝など。
1955年製作/90分/日本
原題または英題:The Green Music Box
配給:日活
劇場公開日:1955年5月8日
あらすじ
ルリ子の父親は有名な科学者で、北海道の研究所へ仕事で行ったまま、一年も便りがなかった。ルリ子は父よりもらった美しいオルゴールの音を聞きながら父をしのんでいた。だがある日、父が急病になったとの知らせに、幻想を破られたルリ子は、迎えの車に乗ったが、それは父の科学研究の秘密を盗もうとするX団のスパイの計略であった。洞窟の中で再会した父と母、そしてルリ子も今は両親と共に捕われの身となった。父は決して秘密を洩らさず、そっとルリ子のオルゴールの緑の小箱の中に入れた。ある時やっとのことで、ルリ子だけが洞窟より脱出し、丁度居合わせた孤児院から飛び出した三少年、チビ真、デブ、ノッポ達に救われ、皆で協力してルリ子の父母を救け出そうと相談した。だがルリ子の持っているオルゴールの中にある秘密を知ったスパイ団は再びルリ子を捕えた。三人の少年達はルリ子を再び無事に連れ戻すことに成功したが、大格闘の際に大事なオルゴールは釣橋の上から渓流の中に落ちてしまった。それ以来、少年達とスパイ団がこのオルゴールを求めて争った。このころ母を求めて歩くマミ子も少年達に加わっていた。ある日、このオルゴールが古道具屋に発見されたが、狂喜した少年達にはそれを買い取る金がなかった。そこで一同は靴みがきを始めてお金を作ったが、その時既にオルゴールは誰かに買取られていた。そのころこの町では大がかりのサーカスが開かれていたが、これもオルゴールを探すスパイ団の仕事だった。少年少女達はサーカスに押しかけ、スパイ団の集めたオルゴールを調べていたが、やがてサーカスの内部は大混乱大乱闘に迄発展しお巡りさんも駆け付ける騒ぎとなった。スパイ団の陰謀の覆える時は来た。ルリ子は壊しい父母と共に、そしてマミ子は母に再会し、オルゴールの美しい音は鳴りひびいた。
スタッフ・キャスト
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5.0日活初のカラー映画は、ミュージカル・ファンタジーの振りをした少年少女の冒険譚!でした
ナレーションによる少女漫画や童話風の始まりから、14歳にしては幼くみえる浅丘ルリ子扮するルリ子が、緑色のオルゴールの音から御伽の国に呼ばれる冒頭だけ、偶然にも数年前に見てから、カラー画面の発色に興味を持ち、神保町シアターにて鑑賞。(Amazonプライムにも配信されてるがあそこは心情的にパス)
ストーリー自体は、正直ツッコミどころ満載で、バラエティ番組で今時の芸人どもが、笑いネタしそうな展開だが、職人・井上梅次監督の手際もあり、ゆるい出来ながら楽しめるところも多々あり。
ネタバレもあります。
親子が国際的な悪のスパイ一味(ポンコツ軍団なのが後で判明)に誘拐されて山奥のアジトに拉致監禁されるとこは、設定やセット美術などは、007やSF特撮ヒーロー物風で、当時としては割とモダンでワクワクすると思う。
意外なのは悪人が母親を釣り上げてムチでビシバシと拷問した後に両親共に死亡したり、割とハード・シリアスな雰囲気で驚く。(原作だとルリ子が拷問されるらしいが実現してたら変なマニアに神格化されそう)
逃げ出したルリ子が山中で出会う孤児3人組は、殆どズッコケ3人組状態で役名もチビ真・ノッポ・デブと雑な扱いだが、彼が加わるところから更に少年探偵団風の冒険活劇に変化して、アジトからの脱出するために、エレベーターシャフト内や吊り橋落下での危機一髪など、近年の『インディ・ジョーンズ』シリーズが再現していた場面そのままに展開して目を見張る。(吊り橋のところはインディの魔宮の伝説を彷彿とさせる)
後半は、川に流されたマクガフィンでもある世界的研究の秘密が入った緑のオルゴールを街に舞台が移って、捜索と争奪の展開になるが、ここで悪役一味の仮の姿が、サーカス団だと分かる場面も少年探偵団風。(ゲスト出演のフランキー界の場面以外はサーカス設定が希薄だが)
衝撃なのは、なんだかんだで、オルゴールも手元に戻り、悪党一味が警察に問い詰められるところで、唐突に死んだハズのルリ子の両親が普通に現れて解決なところは、そろそろ終わりなので残ったコーヒーを口に含んでいて本当に吹きそうになったが、脳天気なジュブナイルと考えると妥当か。(よく堪えた自分)
井上梅次監督は本作の後に、石原裕次郎主演の『嵐を呼ぶ男』で日活映画の最高のヒット(確か)を飛ばし後にも凄まじい数の作品を監督するが、個人的にテレビ映画シリーズの天知茂の『江戸川乱歩の美女シリーズ』を立ち上げて、長期の人気シリーズに功績は凄いと思う。
撮影については、カメラ機材の影響か全体的に躍動的な絵が無くて固定されたフレーミング多いのでそこは残念だが、日活映画初の本格的なカラー画面は、かなり前に写真などのフィルム製造から撤退してしまったコニカによる、映画用さくらカラーフィルム(短命なので希少価値がある)の発色はオリジナルプリントを拝見してないので分からないが、少し先に公開されたフジフィルムによる日本初の国産カラー映画の名作『カルメン故郷に帰る』より発色や色のりやコントラストなども正直ところ良好に見えるので、手間とコスト問題が解決されていたら、こちらが主流になったのでは?な想像もできる。
このさくらカラーはポジフィルム撮影で、カラーネガフィルムに変換して更に上映用ポジにプリントするプロセスがあり普通より1行程も多いらしい。(変換のカラーネガはデュープ専用なのかな?)
後の大女優になる当時14歳の浅丘ルリ子の初出演で主役の大役を見事こなしているが、役柄上あまり見せ場が少ないが、特別出演の形で北原三枝や有島一郎と井上梅次監督が見出した岡田真澄やフランキー堺など顔が見せるのは豪華。(しかし足の不自由な悪役(内海突破)の役名が、ビッコなのは苦笑)
序盤とラストにルリ子の空想のかたちで、同じ児童文学の『不思議の国のアリス』や『オズの魔法使い』(映画の方)を想起させるミュージカルシーンもあるが、正直ダンス描写の作り込みや描写の面で全体的に明らかに力不足感が漂うが、情報や技術レベルなど少ない時代を考えると試行錯誤の段階であると思う。
この映画ミュージカル場面を学芸会と揶揄する論評も見かけるが、最近の日本映画でもハリウッド映画のヒットしたミュージカル(ラ・ランド)などを、凡庸なレベルで取り込んで模倣してるヒットメーカー監督がいる方が嘆かわしいと思う。
本作の公開当時の興行成績は、ヒットとはいかずそれなりらしいが、大女優になる浅丘ルリ子のデビューにして主演作としてや試行錯誤のカラー化などの部分でも価値があり、それと会社を上げての初カラー映画が児童文学の映像化なのも、のちの日活青春映画や無国籍活劇などのモダンなところや、70年代に児童映画の秀作を製作する繋がりが、散見されるので興味が有ればオススメしたい。
2.0浅岡ルリ子デビュー作
新聞連載の少女の冒険物語を読んだ水の江瀧子さんが惚れ込んで映画化、原作は科学者の父の研究を奪おうとする悪漢から秘密を守ろうとする娘の波乱万丈の冒険活劇なのだが映画は子供たちが悪漢たちに苦しめられながらも頑張って逆に懲らしめると言うコメディ仕立て、おまけにお遊戯会のようなミュージカルシーンまで入れ込んでいるからお子様ランチ状態。
主役は3000人の中から選ばれた浅岡ルリ子(当時14歳)さん、ミュージカルシーンでは当時19歳の岡田真澄さんが月の王子様、白鳥を北原三枝さんが踊っていました。
水の江瀧子さんは自身も松竹歌劇団で名声を博したショーガール、本場NYでもショービジネスを学び劇団の主宰や映画、テレビでも活躍、後に新興の日活に女性初のプロデユーサーとして入社。石原裕次郎さんを発掘したことでも有名ですが岡田真澄さんや銀座のクラブでドラムを叩いていたフランキー堺さんを映画界に誘ったのも水の江さんですから新人発掘のパイオニアでした。
当時を振り返って駆け出しのプロデユーサーでは誰も俳優を回してくれないから新人を使うしかなかったと言っておられました。
子供向けかと思ったらいきなり誘拐事件、流石日活、サスペンスかと思いきや、やっぱり学芸会でした。井上監督は「オズの魔法使い」に触発されたと言っていましたがミュージカルシーンは水の江さんの好みでしょう。原作では誘拐され拷問を受けるのはルリ子でしたが子供にそんなことはさせられないと思ったのでしょう。連載途中での映画化ですから結末は原作と違って当然ですが、あり得ないようなハッピーエンドにも伴侶や子供に縁の薄かった水の江さんの想いが伺えます。
ハードボイルド、純愛、若者カルチャー、ロマンポルノと邦画史の一時代を担った日活にこんなお子様映画があったとは勉強になりました。
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